英文契約書の相談・質問集289 海外取引では判例は大切ですか。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外取引では判例は大切ですか。」というものがあります。
 

 もちろん,大切です。判例は,具体的な過去の紛争に対して下した裁判所の判断ですので,類似のケースがあれば,裁判所が類似の判断をしてくれる可能性が高く,それが当事者に有利であれば,強力なバックアップになります。
 

 ちなみに,判例は英語ではPrecedent(プレシデント)といいます。
 

 ただ,国際取引において判例に頼るのは非常に危険です。
 

 まず,そもそもその判例はどこの国の裁判所の判断でしょうか。例えば,日本の裁判所の判例なのであれば,契約書で準拠法が外国法,紛争解決も外国の裁判所となっているとその判例は役に立ちません。
 

 また,仮に,準拠法が日本法で,紛争解決も日本の裁判所で行うとなっていても,判例はあくまでその事例での判断です。
 

 そして,言うまでもありませんが,紛争の事案というのは1件1件事情が異なっています。
 

 例えば,契約書で最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)(ノルマ)の定めがあり,それを達成できなかった場合にペナルティとして,契約解除は書かれているけど,損害賠償請求までできるのかは書かれていないという場合を考えてみます。
 

 仮に,過去の判例では,損害賠償請求も認められ,例えば,5年契約で5000万円のノルマなのに2年目に3500万円しか到達していないとなった場合,差額の1500万円から製造原価を引いた額の損害賠償請求と,3年目の1年間の逸失利益(1年間は次の販売店が見つからないだろうという判断)の損害賠償請求が認められていたとします。
 

 しかしながら,これが今回のケースにも当てはまるかはわかりません。
 

 取引の実態も違うでしょうし,取引に至る経緯や,交渉時に今回の当事者間でどのようなやり取りがあったかも違うでしょう。
 

 契約書にEntire Agreement(完全合意)条項があるかないかで,契約書外の事情がどこまで考慮されるのかが異なってくることもあるでしょう。
 

 裁判所は,契約時の当事者の合理的な意思解釈によって,どこまでの救済措置を認めていたのかを判断しますが,判断の基礎になる事情が全く同じということはありえません。
 

 そのため,今回のケースにも以前の判例と同じような判断が適用されるかは,現実には未知数なところがあるわけです。
 

 以上から,判例に頼るのは危険だということがわかると思います。
 

 さらにいうと,特に国際取引に関する紛争では時間やコスト面から,裁判で紛争解決するケースはまれです。
 

 ほとんどが当事者同士の交渉による解決を目指すことになります。ところが,取引先は日本の判例など知らないでしょう。
 

 そうすると,ノルマ未達の場合に,サプライヤーの日本企業が日本の判例を持ち出して説得しようとしても,取引先は異国の裁判所の判断に歩み寄ろうとの理解を示さないのが普通でしょう。
 

 それでも日本の判例を根拠に戦いたいとなれば,最終的には訴訟を提起する他ないという結論になることもあると思いますが,訴訟は多大なコストと時間を要しますので,多くの中小企業にはハードルが高すぎて非現実的な選択肢になってしまいます。
 

 ですから,訴訟を前提に判例を拠り所にするのはあまり現実的な方策とは言えないのです。
 

 それよりも,契約書に明確にペナルティとして損害賠償請求が可能で,その範囲もこの範囲だと書かれているほうが,それを見せれば明らかなのですから,交渉における説得の武器として強いわけです。
 

 このように,判例(Precedent)(プレシデント)が重要なのは当たり前ですが,それに頼るのではなく,特に国際取引ではきちんと書き漏らしがないようにすべての事態を書き込んで,トラブルになったときに契約書の内容をもって相手を説得できるようにしておくことがより重要です。

 

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