英文契約書の相談・質問集291 競合品の取扱禁止は違法ではないですか。

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英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「競合品の取扱禁止は違法ではないですか。」というものがあります。

例えば,日本企業が販売店(Distributor)となり,海外のサプライヤーから商品を仕入れて日本で販売展開するという販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を考えてみます。

この場合に,海外のサプライヤーが,日本企業に対し,サプライヤーが卸す商品と競合する商品を販売してはならないという競合品の取扱禁止(Non-Competition)条項を契約書に入れようとしているとします。
 

これは違法にならないのかというのが今回のテーマです。

日本の法律としては独占禁止法(Anti-Monopoly Act)が問題になります。類似の法律としては,ヨーロッパには競争法(Competition Law)があり,アメリカにはAnti-Trust Lawがあります。

では,日本の独占禁止法により,競合品取扱禁止規定は違法になるのでしょうか。

回答としては,場合によって違法になるということになります。順番に見ていきましょう。

① まずは,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)なのか非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)なのかを見て下さい。

もし,非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)なのであれば,販売店(Distributor)は,日本市場を独占できるわけではなく,同一商品にほかの販売店も競合他社として登場します。

それなのに,海外のサプライヤーの商品以外の商品を扱えないとなれば,不当に競争が阻害されます。

そのため,非独占的販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の場合には,販売店(Distributor)の競合品の取扱いを禁止する合理性は乏しく,サプライヤーが下記④の有力な事業者に当たり,市場閉鎖効果が生じる場合には,独占禁止法上問題を生じます。

これに対し,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)なのであれば,販売店(Distributor)は市場独占という利益を得ていますので,競合品禁止も一定の合理性があると考えられ,独占禁止法上,有効になりえます。

② 次に,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)だとしても,競合品の取扱禁止が,契約期間中にとどまっており,契約期間後は対象外としているかについて確認します。

契約期間中の競合品取扱禁止であれば,販売店(Distributor)には,契約期間中,独占販売権が与えられており,期間中日本市場を独占できますので,その間,他社の競合品を販売できないというのも合理性があります。

これに対し,すでに契約が終了しているにもかかわらず,他社の競合品を扱えないというのは,規制に合理性がありません。

契約の終了によりその販売店がもはや市場を独占している状態ではないにもかかわらず,競合品の取扱いについて制限されては原則自由であるべき市場競争が害されるからです。

そのため,契約期間後も競合品を販売できないという規制になっている場合には,秘密情報(販売ノウハウを含みます)の流用防止など正当な理由があり,必要な範囲内で制限する場合を除き,原則として独占禁止法上問題を生じます。

③ さらに,競合品取扱禁止規定が,販売店(Distributor)がすでに取り扱っている製品についても禁止しているかどうかを見ます。

もし競合品取扱禁止規定が,販売店(Distributor)がすでに販売している商品も今後販売を禁止するという内容になっているのであれば,規制が強く,サプライヤーが下記④の有力な事業者に当たり,市場閉鎖効果が生じる場合には,独占禁止法上問題を生じます。

その販売店がある商品について独占販売権を取得する前からすでに取り扱っていて,販売チャネルもある製品なのですから,新たに規制するのは規制として強すぎるわけです。

反対に,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)締結後新たに競合品を扱えないという程度の規制なのであれば,独占禁止法上問題ないということになりえます。

④ 最後に,制限を課すサプライヤーが,関連市場における市場占有率20パーセント超などの有力な事業者に該当するかどうかをチェックします。あわせて,販売店(Distributor)が競合メーカーにとって重要な流通チャネルであるかどうかも,市場閉鎖効果の有無を判断する要素になります。

サプライヤーがこれに該当するようであれば,独占禁止法上問題を生じる可能性があります。

このようなシェアの高いサプライヤーが,重要な流通チャネルである販売店(Distributor)に競合品取扱禁止を課すと,競合品を扱う他のメーカーがこの販売店(Distributor)と取引ができなくなり,結果として,市場に競合品が出回りにくくなり,市場における自由競争を不当に阻害するおそれがあるからです。

以上の4つのポイントについて検討してみて下さい。

非常にざっくりとした説明ではありますが,もし,上記のいずれかに問題があるようなのであれば,サプライヤーが規定する競合品取扱禁止条項が法律に違反し違法になる可能性がありますから,その場合はまずは交渉をして条項の内容を変更するようにしてみて下さい。

→next【英文契約書の相談・質問集292】限定列挙と例示列挙の違いと見分け方は何ですか。

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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