英文契約書の相談・質問集294 英文契約書のドラフトのやり取りでの注意点は何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「英文契約書のドラフトのやり取りでの注意点は何ですか。」というものがあります。
当事者のどちらかが契約書のドラフトを作り,それを相手に渡して,相手が内容を検討し修正をします。
これをお互いに何度か繰り返して,最終的に内容をフィックスさせてサインに至るというのが一般的な契約書締結の流れです。
では,このやり取りで注意すべき点は何でしょうか。
まず,ドラフトを修正するときはどこをどのように修正したのかがすぐに分かるようにマーキングしたり,修正履歴を施したりしましょう。
また,なぜその修正をしたのかが一読して明らかではない場合は,コメントに修正の理由も書くと良いでしょう。
これをお互いにすれば,検討の時間を短縮できますので,お互いにとってメリットがあります。
こうした修正箇所を明らかにするということをしないと,どこを修正したのか毎回全体を読まなければいけませんし,修正の理由も書いてないといちいち質問したりしなければならず,時間がかかってデメリットが大きいです。
弁護士を使っていれば,タイムチャージもかさみますし,時間だけではなく費用もかかってしまいます。
そのため,無駄な時間と費用を節約するために,お互いに契約書の内容を検討しやすい工夫をしましょう。
たまに,修正した箇所を明らかにしてこない企業や,修正後の契約書を印刷して送ってくる企業がありますが,このような企業には,修正履歴をつけることと,内容が確定するまでデータでやり取りすることを要求しましょう。
もし不合理な理由でこれらの要求を拒絶するようであれば,信用に値しない取引先かもしれませんので注意しましょう。
実際,私のお客様の中にも,重要な金額の部分を修正しているのに履歴を付けず,他の些末な修正箇所には修正履歴を付けて契約書を送付してきて被害に遭いそうになった事例があります。
このようなこともありますので,問題がありそうな取引先の場合,相手の修正履歴を過信せず,自社でも独自に修正箇所を確認することをおすすめしています。
このようなやり取りをして最後に内容が固まったら,印刷してサインするという段階になりますが,ここでも注意が必要です。
印刷する直前に,合意した内容とは異なる内容に修正した上で印刷をし,サインをして送ってくるという企業もたまにあります。
売買代金やロイヤリティの金額や契約期間など重要な数字を印刷直前に変更して送ってくるのです。
こうなるとほとんど詐欺ですが,英文契約書にはEntire Agreement(完全合意)条項が入っているので,最後にサインしたものだけが効力を有するとされてしまいます。
そのため,メールのやり取りで印刷の直前で合意したファイルの内容が本来の合意内容だと主張しても負けてしまう可能性があります。
こうしたことをされる危険があることは理解しておきましょう。
このような不正行為を避けるためには,自社のほうで先に印刷して相手方に送付するほうが良いかと思います。
その際には,ページの差し替えを防止するために各ページにイニシャルサインをすることも忘れないで下さい。
もしこのようなことを自社がすれば,業界内で悪い評判が立つなど,中長期で問題を生じる可能性が高いので,自社がこうした行為をするというのは当然ですが避けましょう。
海外企業にはこのような不正行為をしてくる企業も中にはあるということだけは理解して取引に臨んで下さい。
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