英文契約書の相談・質問集295 販売店契約終了後も競合品の取扱いを禁止できますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「販売店契約終了後も競合品の取扱いを禁止できますか。」というものがあります。
例えば,日本企業がサプライヤーとなって,販売店(Distributor)と独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を交わし,商品を販売展開するとします。
この場合,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)なので,サプライヤーは,通常,①最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)の条項と,②競合品の取扱禁止(Non-Competition)の規定を契約書に入れます。
サプライヤーとしては,販売店に一定の地域内での商品の独占販売権を渡すことになるので,それ相応の制約を販売店に課して,パフォーマンスを最大化したいという思惑があるためです。
商品の独占販売権を与えながら,競合他社の競合品も同一の販売店が販売してよいとなると,サプライヤーの商品販売に不当な悪影響が出る可能性があるので,競合品取扱いを禁止するのが一般的です。
この競合品の取扱禁止(Non-Competition)は,契約期間中であれば,独占禁止法や競争法(Competition Law)上も問題を生じにくいのですが,契約終了後も競合品の取扱いを禁止する内容の場合はどうでしょうか。
このような内容の規定は,一般的には独占禁止法や競争法に違反し無効となる可能性が高まります。
ただ,サプライヤーが特殊な営業ノウハウなど機密情報に該当するような情報を販売店(Distributor)に提供していて,その機密情報を守るために,契約終了後も一定期間競合品の取扱いを禁止するような場合は例外的に有効になる可能性があるかと思います。
例えば,サプライヤーの扱う商品が特殊なもので,競合他社も少なく,マーケットが小さいような場合に,サプライヤーが新規顧客の獲得方法と顧客の維持方法について特殊なノウハウを販売店(Distributor)に提供していたとします。
そして,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)終了後に,販売店(Distributor)が,他社製品を売るためにそのノウハウを利用して顧客を獲得・維持していたとなれば,サプライヤーは不当な打撃を受けてしまうといえます。
こうしたことを防ぐために競合品の取扱いを禁止するのであれば有効になる可能性があるということです。
もちろん,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に守秘義務条項が入っていると思いますが,機密情報の該当性を証明するのに一定のハードルがあったり,秘密保持義務違反をサプライヤーが立証するのが困難であったりという問題があるのです。
そのため,秘密保持義務違反の立証ではなく,「競合品を販売した」という立証が容易な事実の証明をすれば損害賠償請求等ができるように,このような規定を入れることがあります。
もちろん,販売店に対する規制が広すぎると独占禁止法や競争法の問題を生じますので,合理的な期間内に抑える必要があります。
準拠法によりますので一概にはいえませんが,一般的には半年から最大でも2年位と思われます。
このように,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)における競合品取扱禁止規定は,原則契約期間中に限定していたほうが無難ですが,一定の要件を充たせば契約終了後もなお有効と考えられることもあると理解しておきましょう。
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