英文契約書の相談・質問集298 例外的に後払い対応をしても良い場合はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「例外的に後払い対応をしても良い場合はありますか。」というものがあります。
日本企業が外国企業に商品を卸す場合,基本的には全額前払いをおすすめしています。
出荷前に100%代金を払ってもらい,支払いが一部でもなされなければ出荷を停止するということができるようにするためです。
また,受注生産などの場合は,注文時・生産開始前にも製造原価分くらいは払ってもらい,残りを出荷前に払ってもらうということにすることをおすすめしています。
そうしないと,サプライヤーが製造コストを負担したのに,買主が何らかの事情で製品が不要となったという理由で代金を払わないと,サプライヤーとしては出荷を停止したところで対抗措置にならないからです。
買主も事情が変わり商品が要らなくなったということであると,買主は出荷停止をされても痛くも痒くもないため,出荷停止という措置に意味がなくなってしまうのです。
また,損失回避のためにサプライヤーが製品を転売できればまだ良いですが,受注生産品だと転売も難しく,大きな損失を被る可能性があります。
そのため,受注時に製造原価分くらいは払ってもらって赤字にならないようにしなければなりません。
ただ,例外的に後払いをすることが可能になる方法が一応あります。
それは,買主に保証金・預り金を預託してもらうことです。
例えば,取引の3−6ヶ月分相当くらいの金額をあらかじめ預託してもらっておけば,もし買主の支払いが滞っても,保証金から充当できますので,後払いでも対応可能です。
支払いサイトにもよりますが,90日とか120日とかのサイトでも,6ヶ月程度に相当する取引分くらいの預託を受けておけば,後払いにしてもキャッシュフロー上耐えられるかと思います。
買主が後払いを求める理由は,商品に問題があった場合の保険的な意味合いの他に,資金繰りのことが多いです。
そのため,まとまった資金が事前に必要になる保証金の支払いに応じてもらえることは少ないとは思いますが,買主が資金繰り以外の理由で後払いを求めるケースなどでは使えることがあります。
まとまった金額の保証金を預託できる会社であれば,財務状態も良好と判断できるので,個々の取引の支払い遅延もそれほど心配しなくても良いということにもなります。
もちろん,一時金を用意できることと,キャッシュフローが良好であることはイコールではないですが,保証金を積めるということを与信判断の一つとしても問題はないでしょう。
例外的なケースではありますが,一定の預託金を条件に後払い取引を行うということはありうると思います。
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