英文契約書の相談・質問集299 裁判する前に知っておいたほうが良いことはありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「裁判する前に知っておいたほうが良いことはありますか。」というものがあります。
ここでは,日本の裁判制度を中心に解説したいと思います。
まず,裁判をするとなった場合,裁判官を選ぶことはできません(仲裁=Arbitrationは選べます)ので,注意が必要です。
特殊な事件は専門部というのがあって,類似案件のみを専門的に扱っている裁判官がいますが,通常の事件は機械的に配転されますので,当事者が裁判官を選ぶことはできません。
そのため,自社が従事している業界や商慣習に詳しくなく,主張をなかなか理解してもらえないということがありえます。
次に,日本では,イギリスやアメリカで認められている一般的な証拠開示制度(Disclosre/Discovery)がありません。
そのため,相手が持っている自社に有利な証拠は裁判に出てこないと考えたほうが良いです。
こういう前提で訴訟をしなければなりません。これによる影響として,解決が遅れるということがありえます。
自社に不利な証拠もすべて出さなくてはいけないということになると,証拠開示前に和解する動機が強くなるのですが,証拠開示制度がないとそのような動機が弱くなるからです。
さらに,日本では,敗訴者負担制度というのがありませんので,一部の案件を除いて,原則的に弁護士費用は自腹です。
相手が悪いと思い,相手を訴えて裁判に勝ったとしても,自分がかけた弁護士費用を相手に払ってもらうことはできないのです。
また,裁判は一般的にかなり時間がかかります。早期に和解が成立しない限り,1ヶ月とか,3ヶ月とかで解決するということはほぼないので,通常のビジネス感覚でいるとスピード感を大きく見誤ると思います。
ほかにもたくさん注意点はありますが,最低限上記のことくらいは事前に十分に知った上で裁判をするかどうかを決めることが大切です。
ましてや,外国で裁判をするとなれば,その国特有の事情が必ずありますので,事前に現地の弁護士から十分にレクチャーを受けて,すべて納得の上で訴訟提起すべきということになります。
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