Toll(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Tollがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を停止する」という意味で使用されます。
例えば,Confidentiality(守秘義務)条項で,秘密情報を秘密として保持する義務が,契約終了後も3年間は存続すると契約書に定められていたとします。
この場合,当然ですが,契約終了から3年が経過すれば,守秘義務は終了することになります。
ところが,当事者が実は守秘義務期間中に守秘義務に違反して相手方の秘密情報を不正利用していたとします。
それにもかかわらず,契約終了から3年間が経過してしまえば,そこから先は守秘義務自体が消滅するので,もはや守秘義務違反に問われないのかという問題を生じます。
これを防止するために,もし当事者が守秘義務違反をしていたのであれば,その違反中は上記の3年間の経過は進行を停止すると契約書に定めることがあります。
こうすることで,守秘義務違反の状態が続いている限りは,守秘義務の消滅はないということになり,違反者が不当に守秘義務違反の責任から免れることはないということになるのです。
守秘義務に期間を設けるのは,当然,違反をせずに義務を遵守している当事者を前提に,守秘義務が永遠に存続するとすると負担が大きすぎるというのがその理由です。
そのため,守秘義務に違反している当事者が一定期間経過後に,義務違反の責任を免れるというのは上記の趣旨から外れてしまうため,上記のような規定を設けることがあるのです。
この期間の進行を「停止する」という表現をするときに,tollが使用されることがあります。
頻出する英文契約書用語ではありませんが,登場したときは上記のように重要な内容が絡んでいる可能性ああるので,注意しましょう。