英文契約書の相談・質問集317 準拠法と裁判管轄(仲裁廷)の定めがないとどうなりますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「準拠法と裁判管轄(仲裁廷)の定めがないとどうなりますか。」というものがあります。
準拠法(Governing Law)と裁判管轄(Jurisdiction)または仲裁廷(Arbitration)の規定は,英文契約書ではほとんどの場合に規定されています。
契約関係をめぐって紛争になったときに,どこの国の法律を適用するのか,どこの裁判所や仲裁機関で裁判・仲裁をするのかを予め決めておかないと,各国の民事訴訟法に相当する法律で管轄地が決まり,国際私法という法律で準拠法が決まるというような状態になり非常に不安定だからです。
また,仲裁については仲裁を行う旨の合意が必要ですので,仲裁をすることの合意がそもそもなされていなければいきなり仲裁を申し立てることはできません。
ところが,たまに英文契約書に準拠法や裁判管轄の定めがないものがあります。
おそらく,交渉はしたのでしょうが,どちらも自国の法律や裁判所を主張し,交渉が難航し合意できずに結局記載できなかったのでしょう。
では,契約書に準拠法や裁判管轄・仲裁廷の規定がない場合は,どのような事態になるのでしょうか。
前述したとおり,仲裁は当事者の合意がなければできませんので,法的な紛争解決手段を取る必要がある場合,その当事者は訴訟を検討することになります。
通常は,自国の裁判所に訴えることが多いでしょう。一般的には自国の裁判所に訴えるほうが簡単ですし,コストも安く済み,自社に有利と考えられるからです。
この場合,一般に,その裁判所は日本の民事訴訟法に相当する法律を使って,その訴訟を受け付けられるかを判断します。
もし管轄が違うという場合は,訴え自体退けられることにはなるですが,訴訟を受け入れるかどうかは100%白黒はっきりしているわけでもないので,相手の国で裁判が行われてしまうことは十分に考えられます。
また,仮に本来は相手の国で訴訟が受け付けられるべきではないような場合でも,無視していると欠席判決などが出されてしまい,強制執行をされる状態が作られてしまう可能性もあります。
したがって,相手の国の裁判に対し,入り口から対応を余儀なくされることになります。
このように,やはり取り決めがない場合は不安定ですので,何がどうなるかわからないという状態で対応することになり,かえって対応に時間がかかり弁護士費用がかさむということも考えられます。
それよりは,相手の国の準拠法・裁判になったとしても,予め契約書で合意しておけば,事前に現地の弁護士に紛争時のリスク分析などを依頼しておけば,いざ紛争になったときにも慌てず,弁護士に適切に依頼をして対応ができるとも考えられます。
このように,準拠法と裁判管轄について合意できないからといって安易に放置し,何も対策を取らないでいると,いざというときに問題を生じる可能性があります。
以上から,もし合意できず,契約書に準拠法・裁判管轄の条項を入れられなかった場合は,相手国の裁判所に訴訟提起される可能性が高いので,そうなったときにどう対応すべきかを事前にシミュレートしておいたほうが無難といえるでしょう。
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