英文契約書の相談・質問集318 準拠法・裁判管轄が外国の場合日本の弁護士に相談できないですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「準拠法・裁判管轄が外国の場合日本の弁護士に相談できないですか。」というものがあります。
確かに,準拠法が外国法になっている場合,日本の弁護士がその国の弁護士資格も持っているなどの特殊事情がない限りは,直接的にその国の法律に関するアドバイスをすることは難しいでしょう。
また,裁判管轄や仲裁地が外国になっている場合,その地での訴訟や仲裁を見据えた実践的なアドバイスをするということも難しいかもしれません。
ただ,他方で,日本の特に中小企業からすれば,最初から自社で外国の弁護士を探してきて依頼し,上記の相談をするというのはかなりハードルが高いと思います。
そもそもどうやって探せばよいのかわからないということもあるでしょうし,ネットで探そうにも専門分野がわからないので不安だということもあるでしょう。
弁護士費用も海外の弁護士に依頼したことがなければ,どれくらい見ておけばよいのかも全くわからず不安だということもあるでしょう。
そのため,日本企業としてはまずは日本の顧問弁護士などに相談したいと考えるのではないでしょうか。
日本の弁護士は,上述したとおり,日本以外の国の法律や訴訟などに関してアドバイスすることは困難だと思いますが,契約に関する紛争について一般的な知識であれば持ち合わせていますので,ある程度のアドバイスは可能だと思います。
国際取引で紛争になるポイントは限られていますので,要点をアドバイスすることは可能でしょう。
また,各種取引でどのような項目が問題になり,契約書ではその点がどのように規定されているのかを確定し,その内容に従い対応方針を立てるということは英文契約書や国際取引に通じていれば対応可能です。
どういう問題に対してどういう証拠が有効かなども国の訴訟制度により多少違えはあれど,共通する部分も多く,こうした点についても対応できると思います。
実際に訴訟や仲裁を見据えて対応しなければならないという段階になれば,準拠法や裁判管轄にしたがって海外の弁護士に依頼して対応しなければならないでしょう。
ですが,その前段階での当事者の交渉上のアドバイス,自社の立場上の有利不利の分析,紛争対応に関する一般的なアドバイスなどであれば,日本の弁護士でも十分に対応可能だと思います。
海外の弁護士を探すハードルもありますので,まずは,日本の顧問弁護士に連絡して相談し,対応方針を話し合って,必要に応じて顧問弁護士に海外の弁護士を紹介してもらい対応するという考えが正しいと思っています。
さらに言うと,準拠法や裁判管轄が海外に設定されていても,本当にそのとおりになるのかという問題も実は潜んでいることがあります。
この点からも,まずは身近な日本の弁護士に契約書を見てもらい,相談に乗ってもらうのが初動として正しいこともあるのです。
このように,準拠法や裁判管轄条項が外国になっているからと日本の弁護士に相談することを選択肢から外さず,まずはアクセスがしやすい日本の弁護士に相談し,その後の対応を検討するのが最も適切だと思います。
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