英文契約書の相談・質問集321 現地生産のための合弁企業設立の注意点はありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「現地生産のための合弁企業設立の注意点はありますか。」というものがあります。
例えば,日本企業が海外に販売店(Distributor)を指名して販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,海外で商品を販売展開していたとします。
この状態で一定期間が経過すると,より利益を大きく確保するために,サプライヤーである日本企業が,現地生産を開始するということがありえます。
その際,これまで現地の販売チャネルを開拓してきた販売店(Distributor)の協力を得るために,現地製造会社をサプライヤーと販売店との合弁企業とすることがありえます。
ただ,一般的にこれについては慎重になったほうが良いかと思います。
合弁企業の運営がうまくいっているうちは良いのですが,こちらもある程度期間が経過すると,何らかの都合により合弁解消の場面がやってきます。
そして,その際の選択肢としては,一般に,①合弁会社を清算してしまう,②合弁会社の株式を第三者に売却する,③サプライヤーか販売店のいずれかが合弁会社の相手方の株式を買い取るというものが挙げられます。
圧倒的に取られることが多いのは,③で,かつ,サプライヤーのほうが,販売店が持つ合弁会社の株式を買い取るという選択肢です。
なぜならば,もともとサプライヤーの商品に関する事業ですし,販売店が合弁会社を100%保有する同期は通常ないからです。
この場合,サプライヤーが買い取る合弁会社の株式の価格は,設立当時よりも高騰していることがあります。
そして,その原因は,ノウハウを注入したり,技術提供をしたり,人員をかけたりと,主としてサプライヤーが投資してきた価値にあります。
さらに,あまり事例としては多くないと思いますが,何らかの理由でサプライヤーのほうが合弁会社に対する出資比率が低いような場合,いわゆる「コントロールプレミアム」(支配権を持っていなかった側が支配権を取得するために支払う付加価値のようなもの)も上乗せされる可能性があります。
このような事態となると,サプライヤーとしては販売店の持っている販促ノウハウや販売チャネルについて協力を仰ぐ目的で合弁会社を設立したにもかかわらず,結果としてかなりの金銭的負担をさせられるということになりかねません。
そのため,現地生産を行う段階で,販売店との合弁企業を設立するという選択は安易に取らないほうが身のためかもしれません。
もちろん,現地法人を設立しようにも外資規制があって,サプライヤーの100%独資での設立ができない場合もあるので,一概に合弁会社を避けるべきということではないのですが,出口戦略を十分検討してから行わないと当初の計画よりもコストが高くつくということがありえるので注意が必要です。
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