英文契約書の相談・質問集324 日本の判決を外国で執行できるかはどう決まりますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「日本の判決を外国で執行できるかはどう決まりますか。」というものがあります。
例えば,英文契約書に準拠法(Governing Law)を日本法とし,裁判管轄(Jurisdiction)を東京地裁とすると記載していたとします。
そして,取引先の外国企業が売掛金を払わないトラブルに巻き込まれ,取引先を東京地裁で訴えたとします。
無事に勝訴して,日本企業は勝訴判決を得ました。ところが,取引先は裁判で負けたにもかかわらずまだ支払いをしません。
そこで,日本企業は外国にある取引先の資産に対し強制執行をかけようと考えました。
日本の勝訴判決を外国で強制執行することはできるのでしょうか。
これは,仲裁判断の場合のニューヨーク条約のような統一的な国際条約は存在しておらず,基本的に各国の民事訴訟法の規定によって判断されることになっています。
そして,一般的には,「相互保証主義」と呼ばれる基準を採用している国が多く,外国判決の承認・執行の請求があったときに,その国においても自国で出された判決の承認・執行が可能な法制度となっているかどうかで判断することになります。
つまり,上述の例では,取引先の国の判決が日本でも承認・執行できると日本において判断されている場合には,お互い様ということで,取引先の国でも日本の判決を執行できるということになるのです。
そのため,取引先の国で日本の判決が執行できるのかは,個別に過去の日本での扱いやその外国での扱いを調べないと判断できないということになるのです。
例えば,この相互保証主義の観点から,中国では,日本の判決を中国で執行することはできないとされており,中国企業との間での紛争解決は仲裁が選択される傾向になると言われています。
このように,仲裁判断と異なり裁判所の判決は,判決の承認・執行についてハードルが高いという問題がありますので,契約書の締結段階で紛争解決方法を決める際にはこのことを考慮する必要があるでしょう。
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