フィリピンの法制度|販売店契約で注意すべき4つのポイント
日本企業が販売店(Distributor)を指名してフィリピンに進出する際は,以下のようなフィリピンの法制度に注意したほうがよいでしょう。
フィリピンの法制度 早見表
| 販売店の保護 | 販売店保護法はなく,原則として契約書の定めどおり(民法19〜21条に注意) |
|---|---|
| 契約の登録 | 不要 |
| 言語の規制 | なし(英語が公用語の一つで,英文契約書で問題ない) |
| 準拠法・紛争解決 | フィリピンでの裁判より,PDRCIでの仲裁が望ましいと考えられる |
こんな方に:フィリピン企業を販売店・代理店に指名しようとしている方,フィリピン企業から販売店契約のドラフトを受け取った方
① 販売店(代理店)保護法
フィリピンには,いわゆる販売店(代理店)保護法として,販売店や代理店を保護するために独自に制定された法律は存在していません。
日本の民法・商法に相当するフィリピンの法律には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えてよいかと思います。そのため,フィリピンの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば,原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えてよいでしょう。
したがって,販売店契約の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある,①中途解約条項,②債務不履行解除条項,③契約期間満了による契約の終了条項(更新拒絶条項)なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えてよいかと思います。
また,販売店契約では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関しても,これを禁止するような法律の内容はないと考えてよいでしょう。
実務上のポイント:ただし,信義に反する態様で契約を終了させた場合には,民法19条~21条(権利の濫用など)に基づき損害賠償を請求される可能性がある点には注意が必要です。
② 登録制度
フィリピンでは,販売店契約を当局に登録しなければならないという制度はありません。そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
フィリピンの公用語の一つが英語ですので,英文契約書で問題なく効力を有します。
④ 準拠法・紛争解決
フィリピンの司法制度は使い勝手がよくないとも言われているため,フィリピンでの裁判を選択することはあまりおすすめできません。
フィリピンでの仲裁は,フィリピン紛争解決センター(Philippine Dispute Resolution Center, Inc.; PDRCI)において行うとされることが多いと思われます。裁判より機能しているという話を聞いていますので,裁判よりは仲裁を選択するほうがよいかと思います。
フィリピンの販売店と契約する前に確認したいポイント
- ✓中途解約・債務不履行解除・更新拒絶の各条項が契約書に明確に定められているか
- ✓契約終了時の補償金請求を認めない旨の定め
- ✓契約を終了させる際の手続・態様が信義に反するものにならないか(民法19〜21条)
- ✓紛争解決をフィリピンの裁判所ではなく仲裁(PDRCIなど)とするか
【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件