ベルギーの法制度|販売店契約で注意すべき4つのポイント
日本企業が販売店(Distributor)を指名してベルギーに進出する際は,以下のようなベルギーの法制度に注意したほうがよいでしょう。
ベルギーの法制度 早見表
| 販売店の保護 | 販売店保護法(1961年法・経済法典第X編)があり,予告期間・補償金・更新拒絶通知を規律 |
|---|---|
| 契約の登録 | 不要 |
| 言語の規制 | なし(英語でも締結可能) |
| 準拠法・紛争解決 | 販売店はベルギーで提訴可能(X.39条)。仲裁を選ぶことが多く,外国法準拠でも原則有効と考えられている |
こんな方に:ベルギー企業を販売店・代理店に指名しようとしている方,ベルギー企業から販売店契約のドラフトを受け取った方
① 販売店(代理店)保護法
ベルギーには,いわゆる販売店保護法として,独自に販売店を保護するために制定された法律(1961年7月27日法。現在は経済法典第X編に組み込まれています)が存在しています。この販売店保護法は,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)のほか,これに準ずる契約(当該地域におけるサプライヤーの対象商品のほぼ全部を販売店が販売している準独占的な場合など)や,販売店に重要な義務を課す契約に対して適用されます。
また,同法は期間の定めの有無を問わず適用されますが,期間の定めがない契約の解約については予告期間・補償(X.36条・X.37条),期間の定めがある契約については更新拒絶の通知(X.38条)という形で,それぞれ異なる規律が設けられています。期間の定めのない契約については,重大な契約違反がない場合にサプライヤーが販売店契約を解除するときは,解除までに合理的な猶予期間を設定しなければならないとか,補償金を支払う必要があるなどと規定されています。
実務上のポイント:期間の定めがある販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)であっても,サプライヤーが契約の更新を拒絶する場合は,期間満了の3か月前から6か月前までの間に書留郵便で通知しなければならず,これを怠ると,契約は,黙示の更新条項があればその定める期間,なければ期間の定めのない契約として更新されるとされています(経済法典X.38条)。
その他,期間の定めのある契約が2回更新された後にさらに延長された場合は,期間の定めのない契約とみなされるともされています(同条)。
② 登録制度
ベルギーでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。
③ 言語
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)について言語規制はないので,英語などの外国語でも契約を締結できます。
④ 準拠法・紛争解決
ベルギーでは,準拠法を自国の法律に限るという一般的な規制はありません。もっとも,上記の販売店保護法(X.39条)は,ベルギー国内の全部または一部を対象とする販売店契約の終了について,販売店はベルギーの裁判所に訴えを提起することができ,ベルギーの裁判所はベルギー法を適用すると定めています。そのため,日本の裁判所を管轄裁判所としていても,販売店がベルギーで訴訟を提起してくる可能性があり,この場合の扱いは必ずしも確立していないので注意が必要です。もっとも,後述するとおり,近年のベルギー破毀院(最高裁判所に相当)は,これらの規定がローマI規則9条の優越的強行規定には当たらないと判断しているため,当事者が選択した外国法が適用される余地があります。
また,紛争解決については,日本の判決の執行が認められない可能性があることなどから,仲裁を選択することが多いかと思います。この点,従来のベルギーの判例は,仲裁人がベルギー法またはこれと同等の保護を与える外国法を適用する場合に限って仲裁を認める傾向にありましたが,近年のベルギー破毀院(最高裁判所に相当)の判断によりこの傾向は変更され,現在では,日本法などの外国法を準拠法とする仲裁条項も原則として有効と考えられています。
ベルギーの販売店と契約する前に確認したいポイント
- ✓契約が販売店保護法の対象(独占的・準独占的な契約や,販売店に重要な義務を課す契約)に当たるかどうか
- ✓期間の定めのない契約を解除する場合の合理的な予告期間と補償金を想定しているか
- ✓期間満了で終了させる場合に,満了の3か月前から6か月前までに書留郵便で更新拒絶を通知できる体制になっているか
- ✓紛争解決条項(仲裁の選択や,販売店がベルギーで訴訟を提起する可能性への対応)
【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件