Laches(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Lachesがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「懈怠」というような意味で使用されます。
英米法のEquity(衡平法)という法源には「権利の上に眠っているものは保護に値しない」というdoctrine of lachesという考え方があります。
日本語にすると「懈怠」というような意味で,要するに「権利を持っているのにそれを合理的な期間内に行使しないのであれば,もはや権利行使はできなくなる」という考え方です。
消滅時効とは異なる概念で,消滅時効にかかっていないのに,このlachesが適用されて権利行使ができないということも理論上ありえます。
このlachesの適用を排除したいがために,英文契約書には一般条項(General Provisions)としてよくNo Waiver(放棄の否定)条項が入れられています。
これは「権利を放棄すると明言して放棄しない限り,権利を一定期間行使しないでいたとしても権利放棄とはみなされない」というような意味で挿入されるものです。
このような考えがあるので,特に準拠法が英米法になっている場合は,何らかの権利を取得した場合は,それを漫然と放置するのではなく,合理的期間内に行使するかしないかをきちんと判断して意思決定をすることが大切であるといえるでしょう。
ただし,No Waiverを入れておけば常にlachesの適用を排除できるということでもないので,注意が必要です。