イランの法制度
日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してイランに進出する際,以下のようなイランの法制度に注意したほうが良いでしょう。
なお,イランとの取引については,まず経済制裁に十分注意する必要があります。米国はイランに対して広範な制裁(米国外の企業にも影響し得るいわゆる二次制裁を含みます)を科しています。また,2025年9月28日(グリニッジ標準時),いわゆるスナップバック手続により国連安全保障理事会の対イラン制裁が復活し(ロシア・中国はその有効性を認めていません),日本も同年9月29日,外為法に基づく資産凍結や輸出許可制などの措置を再導入しています。取引対象の商品や取引相手によっては取引自体が禁止・制限される場合があるため,取引を検討する前に制裁規制の確認が不可欠です。以下は,これらの制裁規制を別とした一般的な法制度の説明です。
① 販売店(代理店)保護法
中東諸国には,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律があることも多いのですが,イランにはこの種の法律は存在していません。
そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の契約期間を定めつつ,終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある
①中途解約条項,
②債務不履行解除条項,
③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)
なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。
また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。
② 登録制度
イランでは,商品の種類(資本財,自動車,家電など)によっては,販売店(正規輸入者)を産業鉱業商業省に登録しなければ輸入ができない制度があります(医薬品など,別の省庁の許認可が必要な商品もあります)。
そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。
もっとも,イランの登録制度においては,販売店が当局に登録したことにより,販売店契約の終了について販売店が保護されるなどの制度はないため,登録そのものによる販売店の保護があるということではありません。
③ 言語
販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。
④ 準拠法・紛争解決
イラン民法968条により,当事者の一方がイラン人である契約については,原則として契約締結地法が適用され,当事者の合意による外国法の選択はイランの裁判所では認められないとされています。もっとも,仲裁による場合には,国際商事仲裁法27条により当事者が準拠法を選択できるとされていますので,外国法を準拠法とする場合は仲裁条項と組み合わせることが重要です。
なお,イランで日本の裁判所の判決を強制執行するのは困難と考えられます。
イランはニューヨーク条約加盟国です。
そのため,日本企業とイランの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。
ただし,イランの裁判所は,外国の判決または仲裁判断を「公の秩序」を理由に拒絶することが可能とされていますので,注意が必要です。
以上が,日本企業がイラン企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。
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