英文契約書の相談・質問集338 デッドロックとなった場合の対処法はどう定めればよいですか。

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英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「デッドロックとなった場合の対処法はどう定めればよいですか。」というものがあります。

例えば,日本企業と現地企業が議決権比率を50:50として共同出資して,合弁会社を外国に設立して経営していたとします。

この場合に,何らかの経営上の意思決定時に,出資者である日本企業と現地企業の意見が対立すると,どちらも議決権の過半数を取得していないので,いわゆる「デッドロック(Deadlock)」状態となり,意思決定ができなくなってしまいます。

そのため,そもそも共同出資する際には,どちらかが議決権の過半数を取得している状態を作り,デッドロックを回避するのが望ましいのですが,様々な事情でどうしてもそのようにはできず,50:50の出資比率で合弁事業を行わざるを得ない場合も現実にはあります。

では,デッドロックになった場合にはどのように解決するとJoint Venture Agreement: JVA(合弁契約書)などの契約書に記載しておくべきなのでしょうか。

これには大きく分けて2つの場面があります。1つ目は,合弁事業を存続させる方向での対処法で,2つ目は,合弁事業を解消させる方向での対処法です。

① 合弁事業を存続させる対処法

まず考えられるのが,出資者のどちらかに決定権(キャスティング・ボート)を与えておくという方法です。

これをすると,事実上議決権の比率を変えてどちらかの当事者に過半数を与えたのと同じような効果が得られます。

そのため,キャスティング・ボートを与える側の当事者がなかなか承服しないという問題点があります。

他には,出資した会社(親会社)の社長や取締役同士の協議に委ねるということもありえます。

現地の合弁企業の経営者ではデッドロックになったとしても,出資者同士の経営者の協議によれば意思決定ができるということもありえるので,このような対処法も有効な場合があります。

さらには,第三者組織を選定しておき,その第三者組織の意思決定に従うと定めておくということも考えられます。

第三者機関であれば公正・中立で,合理的な意思決定がなされるだろうという期待の下にこのような定めがされることがあります。

② 合弁事業を解消する対処法

デッドロックとなった場合に,合弁事業自体を解消させる方向での対処法としては,いわゆるコール・オプション(Call Option),プット・オプション(Put Option)を定める方法があります。

出資者が相手方から一方的に株式を買い取る権利(コール・オプション)を定めたり,出資者が相手方に対して一方的に株式を売り渡す権利(プット・オプション)を定めるものです。

または,相手方に選択権を与える場合もあります。

これは,一方の出資者が相手方に対して,自己の株式を一定の価格で売り渡すという通知をし,相手方はその価格で株式を購入するか,または,その価格で売却を提案してきた出資者に対して逆に売り渡すという選択をするというものです。

通知を受けた相手方の一存で,通知をした出資者が株式を売るのか買うのかが決まるので,ロシアンルーレット方式などと呼ばれることもあります。

売却を提案する側が,買手に回ることがあるので,適正価格での売渡を提案するであろうという点に合理性があるものとしてこのような手法が採用されることがあります。

他にも,デッドロックの状態が一定期間継続した場合は,当然に合弁会社を解散させ,清算させると定めることもあります。

ただ,現実には合弁会社の解散・清算手続きは困難を極めることが多いので,このような定めを置いたからといって安易に解決したと思わないほうがよいでしょう。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり,個別の案件についての法的助言ではありません。法令・実務は変更されることがありますので,最新の情報をご確認ください。

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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