英文契約書の相談・質問集344 契約書の位置づけは英米と日本では違いますか。

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「契約書の位置づけは英米と日本では違いますか。」というものがあります。

 どういうテーマかわかりにくいかもしれませんが,要するに,契約書を結ぶ意味付けが英米と日本とでは違っているということが,ここで言いたいことになります。

 英米においては,契約書は「最終合意」を形にしたもので,それ以外には合意事項はなく,もし問題が起きたら,契約書に書いてある内容に従って対処できるように「完璧」を目指す傾向にあります。

 これは,英米法にはParol Evidence Rule(口頭証拠排除原則/法則)という考え方があって,契約書のような文書で最終的な合意をした場合,それ以前の契約書以外の合意を排除するというような考えがあることが背景の一つとなって導かれています。

 また,英文契約書には,必ずと言ってよいほど,Entire Agreement(完全合意)条項があり,契約書が最終合意を表したものであることが確認されているのも,その表れです。

 これに対し,日本では,契約書は一応の取引に関する合意を表したもので,必ずしも最終合意を示したものではないと考えられている傾向にあります。

 和文契約書には「本契約に定めのない事項については,信義誠実の原則に従って話し合って解決する」というような誠実交渉条項が散見されるのがその証拠です。

 これは,契約書の合意は完全なものではなく,一応の合意に過ぎず,問題があった場合には,誠実に協議して解決するのであって,契約書ですべてが処理されるものではないということを案に示しています。

 このように,契約書の位置づけについて,一般的に言うと,英米の考え方と日本の考え方は違っているのです。

 英米法に基づいて作成される英文契約書が長文の傾向にあり,和文契約書が短文の傾向にあるのも,こうした違いがあるためと言えます。

 英米圏では,契約書にあらゆる事項を盛り込み,最終合意を形作ろうとするのに対し,日本では,合意できた最低限の事項を記載するにとどめ,有事の際は話し合って解決しようとしているため,このような分量の違いが出るのです。

 こうした考え方の違いにより,ときに日本企業の経営者や担当者は,英米系企業の交渉姿勢に対し,「細かい」「そこまで決める必要があるのか」などという感想を抱くことも少なくありません。

 ただ,こと海外取引においては,考え方も言語も文化も商慣習も異なる企業同士の取引であるため,有事の際の誠実な話し合いなどは期待できないと考えておいたほうが無難でしょう。

 そのため,国際標準の契約書としては,完全な合意を形成したものを作成することを目指したほうが良いかと思います。

 有事の際には,その契約書を見ればマニュアルのように対処法が書かれ,どちらがどのような内容の責任をどの程度負うのかが明確にわかるというのが理想と言えます。

 以上のように,日本と海外とでは契約書に対する理解が違っていることが多いので,契約交渉の際には,この違いあることを意識した上で交渉に臨むと,違和感を払拭できることもあると思います。

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