英文契約書の相談・質問集323 利益相反・コンフリクトとは何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「利益相反・コンフリクトとは何ですか。」というものがあります。
利益相反・コンフリクトというのは,文字どおり利益が相反することを指すのですが,具体例で考えたほうがわかりやすいかと思います。
例えば,Aさんの運転する車がBさんの運転する車と衝突し,Aさんが怪我をしたので,治療費などの損害賠償をBさんに請求したいとします。
ところが,AさんとBさんの主張が食い違い,AさんはBさんが赤信号を無視して交差点に侵入したと主張していますが,Bさんは自分側の信号は黄色だったと主張しています。
こういう場合を,AさんとBさんの利益が相反している,衝突(コンフリクト)していると言います。
ちなみに,このような関係にあるときに,X弁護士がAさんとBさんの両方の代理人をすることは,法律で認められていません。
Aさんの利益は自分の主張に基づいて賠償額を多く取ることですが,逆にBさんは自分の主張を認めてもらって賠償額を低くすることがメリットになり,利益が対立してるため,同じ弁護士が双方を代理することはできないのです。
こうした利益相反は何も上記の交通事故のような紛争だけで生じるわけではありません。
例えば,売買契約一つとっても,基本的に売主と買主の利害は対立して利益相反する関係にあります。
売買契約を例にとって具体的に説明しますと,売主は,商品の保証はできるだけ避けて,保証期間も短くしたほうが利益が上がりますが,買主はそれでは困ります。
価格についてはもっとわかりやいです。売主はできるだけ高く売ったほうが儲かりますが,買主はできるだけ安価で購入したほうが利益が上がります。
このように,売買取引一つとっても,立場によって利益になることが真逆になり,利益相反することになるのです。
日本企業が海外企業(に限りませんが)と交渉したり,取引したりするときは,このことをもっと意識するようにしましょう。
もちろん,価格などわかりやすい場面では利害が対立していることは意識するでしょうが,独占販売権,品質保証,品質保証期間,知的財産権侵害の保証,製造物責任,販売地域,競合品の取り扱い,最低購入数量,最低取引単位など,あらゆる項目で対立関係になります。
このような意識を持っていないと,つい,相手が契約書のドラフトを用意しますと言ってきたのを厚意だと理解して受け入れてしまったり,相手の説明を鵜呑みにして,明確に意識しないままにそういうものかと不利な条件を飲まされてしまったりするのです。
もちろん,商売はWin-Winの関係を目指すものではありますが,局所的には利害が対立することはよくあるので,あまりにナイーブですと,特に海外展開では食い物にされてしまいがちです。
したがって,利益相反・コンフリクトの関係については,最低限の意識を持つようにして,何が綱引きになっているのかを理解するようにしましょう。
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