【英文契約書の相談・質問集(特別編3)】ロシア企業との取引を停止したいのですがどうすればよいですか。

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「ロシア企業との取引を停止したいのですがどうすればよいですか。」というものがあります。

 2022年3月現在,ロシアのウクライナ侵攻により西側諸国がロシアとの取引を次々と停止しています。企業もこれに追随し,ロシア企業との取引を停止する動きが目立っています。

 こうした中,日本企業がロシア企業との既存の取引を終了させたいと考えている場合,どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

 当然ですが,取引を終了することが可能かどうか,可能だとしてその手順を知るには契約書を見ましょう。

 もし,契約書に相手方に通知をすればいつでも解約ができるという中途解約(Termination Without Cause)条項があれば,それに従って解約をするのが一般的でしょう。

 また,契約の満期が近づいているのであれば,その満期で契約を終了させる(自動更新条項があるなら,更新しない旨の通知をする)のがよいでしょう。

 もし,上記のような中途解約条項もなく,契約期間の満了日もだいぶ先であるというような場合は,注意が必要です。

 準拠法などにもよりますが,一般論としては,ロシア企業側に債務不履行がない限り,契約の解除はできないでしょう。

 また,ロシア企業の債務不履行が戦争を理由に滞っているという場合は,ロシア企業から不可抗力(Force Majeure)免責を主張される可能性もあります。

 つまり,戦争が原因で債務が履行できないのであるから,戦争状態が終わり,債務の履行が可能になるまでは,債務不履行責任を負わないという理屈です。

 不可抗力の処理については契約書に書いてあることが一般的ですから,契約書を精査しましょう。

 契約書に不可抗力事由が継続する場合は,その期間債務不履行責任を免れると書かれていれば,上記の主張には根拠があるということになります。

 もっとも,中には,不可抗力の事由が一定期間継続した場合,契約を解除できると定められていることがあります。

 このようなときは,例え戦争が不可抗力に該当するとしても,契約書に定めた一定期間が経過したので解除するという対応が可能になるかもしれません。

 なお,一般的に金銭債務の履行には不可抗力免責は適用されないと考えられています。

 日本でも,民法は,419条3項において,金銭債務の不履行について債務者は「不可抗力をもって抗弁とすることができない」と定めています。

 したがって,ロシア企業が代金を支払う側で,代金の支払いについて戦争などの不可抗力を理由に遅延させている場合は,債務不履行として解除ができることがあるでしょう。

 この点はこちらの金銭債務についての不可抗力免責に関する記事も参考にしてください。

 まとめると,一般的には,①中途解約条項があればそれに従った解約を試みる,②契約期間満了が近い場合は期間満了による終了を主張する,③不可抗力事由の継続による解除条項があればそれを利用する,④ロシア企業に不可抗力事由以外の事由による債務不履行があればそれを理由に解除するということになるでしょう。

 あくまで,ロシアの侵攻について反対であるという政治信条を持っていたとしても,私企業が契約に反してロシア企業との取引を一方的に破棄すると,日本企業のほうが債務不履行責任を問われることがありますので,その点は注意してください。

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