・勧誘禁止(Non-Solicitation)条項とは

 

 勧誘禁止(Non-Solicitation)条項とは,契約当事者間において,契約期間中または契約終了後一定期間,相手方の従業員や顧客・取引先などを勧誘したり引き抜いたりする行為を禁止する規定を指します。

 目的は,契約解消後の取引基盤の流出や人材流出による不利益を防止することにあります。特に委託契約,代理店契約,共同開発契約,雇用契約など,当事者間の信頼やノウハウ共有が伴う取引関係において利用されることがあります。

 勧誘禁止条項は,情報漏洩や顧客横取り等の事後トラブルを抑止する機能を有し,国際契約や英文契約でも実務的に採用されています。

 

 

・勧誘禁止条項が用いられる典型的場面

 

  1. 退職後の人材引き抜き防止
    元従業員が所属企業の同僚を新職場へ誘引することを防ぐために利用されます。
  2. 顧客・取引先の横取り防止
    契約終了後に顧客を自社に取り込まれることを避けるため,業務委託契約や紹介契約などで設定されます。
  3. 共同開発・パートナー契約における関係維持
    ノウハウを共有した関係が終了した後に,片方の当事者が相手方の社員や顧客に接触してビジネスを奪うことを防止します。

 

 

・競業避止条項との違い

 

 競業避止(Non-Compete)条項は,契約終了後に競合企業で勤務することや類似事業を行うことを制限するのに対し,勧誘禁止条項はあくまで「人材や顧客の引き抜き」を禁止するものです。そのため,競業避止条項より制限の範囲が緩やかであり,職業選択の自由への影響が少ない点から,よりバランスのよい制約手段として採用されやすい傾向にあります。

 競業避止を入れる前の安全策として,まず勧誘禁止条項を採用するという契約実務も一般的です。

 

 

・条項を設ける際のポイント

 

 勧誘禁止条項を効果的に運用するためには,以下のような点を明確に定めることが重要です。

  1. 禁止対象の明確化
    「従業員」「顧客」「紹介先」など,対象者を具体的に定めることが望ましいです。
  2. 期間の合理性
    6か月〜2年程度が実務で多く,無制限や過度な長期間は無効と判断される可能性があります。
  3. 直接・間接の勧誘を禁止する文言
    第三者を介した迂回行為を防ぐため「直接・間接を問わず」と明記します。
  4. 違反時の救済手段
    差止請求,損害賠償,違約金などを規定しておくことで抑止力が高まります。
  5. 契約書上の記載場所
    雇用契約やNDA(秘密保持契約)と併せて設けることで,理解・遵守が明確になります。 

 

 

・典型的条項例(英文・和文)

 

During the term of this Agreement and for a period of twelve (12) months following its termination or expiration, neither Party shall, without the prior written consent of the other Party, directly or indirectly solicit, entice, induce, or attempt to induce (i) any employee or contractor of the other Party to leave their employment or engagement, or (ii) any customer or business partner of the other Party to discontinue or reduce business with such Party or to transfer business to any third party.本契約期間中および契約終了後12か月間,いずれの当事者も,相手方の書面による事前承諾なく,直接または間接に,他方当事者の従業員・業務委託者を勧誘し,又は引き抜き,若しくは顧客・取引先を第三者へ誘引することによって当該当事者との取引を停止若しくは縮小させる行為を行ってはならないものとします。) 

 実務では,期間・対象者・例外規定(既存顧客・既存交渉案件など)をさらに具体化して調整することが望ましいです。

 

 

・実務上の留意点

 

 勧誘禁止条項は,過度に広範で不明確な内容である場合,公序良俗や職業選択の自由の観点から無効と判断される可能性があります。そのため,正当な目的があり,制限内容が必要かつ合理的であるかを慎重に検討する必要があります。

 特に国際契約の場合,相手国の法体系や雇用慣行により有効性の考え方が異なるため,準拠法と裁判管轄を含めた総合的検討が不可欠です。

 

 

・まとめ

 

 勧誘禁止条項は,人材流出・顧客引き抜き・事業基盤の毀損といったトラブルを未然に防ぐための条項です。競業避止ほど強い制限ではありませんが,明確かつ合理的に設計することで抑止効果が期待できます。

 

 取引終了後の関係悪化を避けるためにも,代理店契約・開発契約・業務委託契約など幅広い契約に適用を検討する余地があります。

 

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