海外企業との取引交渉が進み,相手方から英文契約書が届いた。内容は英語でだいたい読めるし,大きな問題はなさそうだ——そう判断してそのまま署名してしまうケースが,日本企業の間でいまも頻繁に起きています。しかし,その契約書は相手の弁護士が作ったものである可能性が高く,その場合,契約書は最初から相手に有利な内容で設計されています。本ページでは,相手方弁護士作成の英文契約書に潜むリスクと,署名前に取るべき行動を解説します。

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1.その契約書は,誰のために作られたか

弁護士は依頼人の利益を守るために仕事をします。相手方の弁護士が作成した契約書は,相手方の利益が最大化されるよう設計されています。これは当然のことですが,日本企業が見落としやすい点です。

「内容に不公平な箇所があれば気づくはず」と思うかもしれませんが,英文契約書の有利・不利は,個別の条文の字義だけでは判断できません。条項同士の組み合わせ,準拠法のもとでの解釈,省かれている条項の意味——これらを総合的に分析して初めて,その契約書が自社にとってどの程度リスクがあるかがわかります。

2.相手方弁護士作成の契約書に多い「仕掛け」

1

準拠法・裁判管轄が相手国に設定されている

最も典型的な仕掛けです。準拠法がアメリカやイギリスの法律に設定され,紛争時の管轄も相手国の裁判所とされていると,日本企業が実際に権利を行使しようとしたとき,言語・費用・地理的ハンデが生じます。相手方弁護士は意図的にこの設計をします。

2

Indemnification(補償・損害填補)条項が無限定になっている

相手の損害を無制限に補償する義務を一方的に負わせる条項です。「indemnify and hold harmless」という文言は英文契約書では非常に広い意味を持ちます。上限額の設定や補償範囲の限定がなければ,予測できない巨額の損害賠償責任を負うリスクがあります。

3

Warranty(保証)を一方が免除されている

「AS IS」「WITHOUT WARRANTY OF ANY KIND」などの文言により,相手方(売主・サービス提供者)の品質保証責任が全面的に免除されていることがあります。問題が生じても相手には責任を問えない状態です。

4

Limitation of Liability(責任制限)が相手だけに有利

相手方の損害賠償責任は契約金額の10〜20%に制限される一方,自社側の責任には上限が設けられていないというパターンです。一見「責任制限条項あり」と見えても,読むと自社には適用されない内容になっている場合があります。

5

解除・終了条項が相手に有利な設計

相手方は30日前の通知だけで自由に解約できるが,自社側からの解約には正当事由と長い予告期間が必要——という非対称な解除条項も典型例です。長期間にわたる取引の中で,自社の選択肢が大きく制約されます。

3.「問題があれば修正を求めればいい」が通じない理由

「不利な条項は気づいたら交渉すればよい」と考える方もいます。しかし,実務上は次の問題があります。

相手方弁護士から返ってくる回答は法的に巧みな言葉で書かれている

一見すると譲歩しているように見える修正案でも,法的な意味では実質的に変わっていない,あるいはさらに不利になっているケースがあります。これを見抜くには法的な訓練が必要です。

問題に気づくのが遅れると交渉力が落ちる

「署名の期日が迫っている」「相手から急かされている」という状況で問題点を指摘すると,修正を受け入れてもらいにくくなります。余裕をもって専門家に確認することが交渉力の源泉です。

「英語が読める」ことと「英米法で有利かどうか判断できる」ことは別

英語を流暢に読めても,コモンロー(英米法)のもとでその条項がどう解釈されるかを判断するには,英米法の知識と実務経験が必要です。

交渉が始まる前の今が,最も対応しやすいタイミングです。
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4.署名前にすべき3つのこと

① 英文契約書のレビューを弁護士に依頼する

相手方弁護士が作成した契約書には,自社に不利な条項が意図的に組み込まれています。専門家による全文レビューを受け,問題箇所とリスクの程度を把握した上で交渉に臨んでください。

② 修正案(Redline)を弁護士に作成してもらう

問題条項を特定するだけでなく,自社に有利な修正案を作成し,相手方との交渉に使える状態にします。感情ではなく法的根拠に基づいた修正提案は,相手方弁護士にも受け入れられやすくなります。

③ 交渉を弁護士に代行してもらう

弁護士同士の交渉では,相手方弁護士も一定のプロフェッショナルな対応をします。当事者同士の交渉に比べて,より合理的・迅速に着地点を見つけられることが多いです。

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当事務所では,相手方弁護士作成の英文契約書のレビュー・修正案作成・交渉代行を行っています。ロンドンの法律事務所での実務経験を持つ弁護士が,英米法の観点から詳細に分析します。まずはお気軽にお問合せください。

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