海外から英文の警告書(Warning Letter/Demand Letter)が届いたら——放置のリスクと,やってはいけない対応

この記事の結論:英文の警告書には回答期限が定められていることが多く,放置すると訴訟・仲裁や契約解除に進まれるおそれがあります。一方で,慌てて責任を認める返信をするのも危険です。まずは内容と契約書を確認し,方針を決めてから回答してください。警告書と契約書を添付してお送りいただければ,当日〜翌営業日中に無料でお見積りします。

英文の警告書にはどのような種類があるか

海外の取引先やその代理人弁護士から届く警告書には,主に次のような種類があります。

種類1Demand Letter(請求書面)未払代金や損害賠償の支払を求めるものです。
種類2Notice of Breach(契約違反の通知)契約違反を指摘し,契約で定めた期間内の是正(cure)を求めるものです。是正されない場合の契約解除の前提となることが多い書面です。
種類3Cease and Desist Letter(中止要求書)商標・特許・著作権などの侵害を主張し,製品の販売や使用の中止を求めるものです。
種類4Letter Before Claim(訴訟前通知)英国などで,訴訟を提起する前に送られる書面です。英国では,訴訟の前に当事者間で情報を交換し,紛争の解決を試みることが民事訴訟規則の実務指針(Practice Direction – Pre-Action Conduct and Protocols)で求められています。回答期限の目安は,単純な事案で14日,非常に複雑な事案でも3か月以内とされ,この手順に従わなかった当事者は,後の訴訟で訴訟費用の負担などの不利益を受けることがあります。

放置するとどうなるか

訴訟・仲裁を申し立てられる:警告書は訴訟・仲裁の前段階として送られることが多く,回答しなければ次の手続に進まれる可能性が高まります。
欠席判決のおそれ:外国で訴えられて応訴しないと,相手方の主張どおりの判決(default judgment)が出ることがあります。外国判決は,民事訴訟法118条の要件を満たせば日本でも強制執行が可能です。また,仲裁判断はニューヨーク条約により,日本を含む多くの国で執行することができます。
契約上の期限が進行する:Notice of Breachでは,契約で定めた是正期間(cure period)が経過すると,相手方が契約を解除できるようになるのが一般的です。
交渉の主導権を失う:反論しないまま時間が経つと,相手方の主張を前提に話が進み,後から反論しにくくなります。

やってはいけない対応

✕ 内容を確認せずに放置する回答期限や契約上の是正期間は,こちらが対応しなくても進行します。
✕ 慌てて責任を認める返信をする謝罪や「当社のミスでした」といった表現は,後に責任を認めた証拠として使われるおそれがあります。
✕ 感情的に反論する・相手を威圧する感情的な文面は交渉をこじらせるだけでなく,後の訴訟で不利な証拠になることもあります。
✕ 確認前に支払・製品回収・販売中止をする本当に応じる必要があるのか,範囲は適切かを確認する前に対応すると,不要な損失を招きます。
✕ 関係資料を廃棄・削除する米国の訴訟では,訴訟が合理的に予見される段階から関係資料を保全する義務があり,削除すると重い制裁を受けることがあります。契約書,メール,チャット,発注記録などは保全してください。
✕ 担当者が電話などで個別に交渉し,記録を残さないやり取りは書面で行い,社内で対応窓口を一本化してください。

届いたらまず確認すべきこと

確認1差出人と回答期限取引先本人からか,代理人弁護士からか。回答期限はいつか。
確認2請求の内容と根拠どの契約のどの条項に基づく請求か,請求額やその計算根拠は正しいか。
確認3準拠法と紛争解決条項契約の準拠法(Governing Law)と,紛争を解決する裁判所・仲裁機関の定め。
確認4自社側の事実関係と証拠納品・検収の記録,やり取りのメールなど。
確認5保険賠償責任保険や知的財産権に関する保険に加入している場合,保険会社への通知期限が定められていることがあります。

回答の方法

事実関係と契約内容を確認したうえで,全面的に反論する,一部を認めて交渉する,回答期限の延長を求めるなど,方針を決めて回答します。

和解に向けた提案をする場合,英国では「without prejudice」と明記した和解交渉のやり取りは,原則として後の訴訟で証拠として用いることができません。米国でも,連邦証拠規則408条により,和解交渉での申出や発言は,原則として請求の有効性や金額を証明するための証拠とすることができません。ただし,どの範囲で保護されるかは国や事案によって異なりますので,文面は慎重に作成する必要があります。

弁護士に依頼するメリット

請求の根拠と貴社のリスクを,準拠法と契約条項に照らして評価したうえで回答方針を立てられます。弁護士名義で回答することで,相手方に法的な検討を経た対応であることが伝わり,交渉が進みやすくなることもあります。訴訟・仲裁に進んだ場合も見据えて,現地の弁護士との連携を含めた対応が可能です。

警告書には回答期限が定められていることが多いため,届いたらできるだけ早くご相談ください。警告書と関係する契約書を添付してお送りいただければ,当日〜翌営業日中に無料でお見積りします。

※本記事は一般的な情報提供であり,個別の事案についての法的助言ではありません。対応方針は,契約内容・準拠法・事案の状況により異なります。

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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