Letter of Intent (LOI)(レター・オブ・インテント)またはMemorandum of Understanding (MOU)(メモランダム・オブ・アンダースタンディング)とは,「覚書」や「予備的合意書」と訳されることが多いものです。
これらは,一般に,契約を正式に締結する前に作成するもので,契約前の交渉の際に確認された事項や,交渉の方向性,契約締結までのスケジュールなどをこれに記載する場合があります。
LOI(エル・オー・アイ)やMOU(エム・オー・ユー)を締結して,交渉を継続し,無事にビジネス開始となれば,正式な契約(Definitive Agreement)を締結するということになります。
形式は,合意書のようにして全当事者がサインすることもあれば(こちらが通常MOUとなります。),発行する当事者が相手方の確認(Acknowledgment)のサインを求める,文字通りのLetter形式の場合(こちらが通常LOIになります。)もあります。
Letter of Intent(LOI)やMemorandum of Understanding(MOU)は,上記のような趣旨・目的で作成されるため,一般的には法的拘束力がない(Non Legally binding)とされる場合が多いといえるでしょう。
この場合,たとえLOIやMOUが合意書の形式をとって両当事者のサインが具備されていたとしても,後に紛争が生じた場合,当該LOI記載内容を根拠に相手方に対して損害賠償請求等の契約責任を追及することは原則としてできません。
ただし,契約書にLetter of IntentやMemorandum of Understandingというタイトルをつければ法的拘束力がないと判断されるということではありませんから,注意が必要です。
たとえ,Letter of IntentやMemorandum of Understandingというタイトルで書類を作成していても,内容によっては,法的拘束力がある合意として認められてしまう場合もあります。
なぜなら,LOIやMOUに拘束力があるかどうかは,形式的なタイトルで決まるのではなく,あくまで実質的な内容で決まるからです。
明確に法的拘束力が「ある」,または,「ない」と記載されていればそのとおりに判断することになりますが,明確に記載されていないのであれば,実質的な内容から,当事者が法的拘束力を定める意図でその覚書を締結したのかどうかを判断することになります。
そのため,法的拘束力の有無についてLOIやMOUにはっきりと記載していない場合は,もし当事者間がその有無について見解を異にした場合,最終的には裁判所などで決めてもらわなければならないということになってしまいます。
これを避けるには,法的拘束力については,多くの国で原則として当事者の意思に委ねる(私的自治の原則)としていますから,LOIやMOUの条項で明確に定めておくことが賢明です。
LOIやMOUの法的拘束力については,以下の3つの場合が考えられるでしょう。
全条項に法的拘束力がある。
一部の条項のみ法的拘束力がある。
全条項に法的拘束力がない。
そのため,貴社が作成しようとしているLOIやMOUが上記のいずれに当たるのかを明確にし,その意図に合わせた条項を設ける必要があります。
そうでなければ,LOIやMOU作成後に結果として正式な契約を締結しなかったような場合に,LOIやMOUに記載内容が法的拘束力を持つのか否かを巡って重大な紛争になることが予想されます。
例えば,2番目のように一部の条項(例えば,Due Diligence(デュー・デリジェンス),Confidentiality(コンフィデンシャリティ),Governing Law(ガバニング・ロー),Good Faith(グッド・フェイス)などが考えられます)のみ法的拘束力を持たせたいという場合,以下のような条項を作成します。
"With the exception of paragraphs [XX], this LOI/MOU merely constitutes a statement of the mutual intentions of the parties with respect to its contents and each party represents to the other that the terms and conditions set forth in this LOI/MOU shall not be legally binding."
こうすることで,法的拘束力を持っている条項が明確に判明し,その他の条項が法的拘束力を持っていないことも明らかになります。
ところで,日本では,当事者は,たとえ契約締結前の交渉時であっても,「契約準備段階の過失」または「契約締結上の過失」などとして,一定の要件の下,当事者が信義則上の義務を相手方に対し負うという議論が存在します。
したがって,「契約以前なのだから締結しないことも無条件に自由であるし,交渉時にどのような態度を取ろうが相手方当事者に賠償義務を負ったりすることはない」とは必ずしもいえないということになります。
この点,英米法の世界では大陸法(ヨーロッパの幾つかの国や日本がこれに該当します)と異なり,原則として,契約交渉中に当事者が上記のようなGood Faith(誠実)(グッド・フェイス)でなければならないという義務はありません。
そのため,もし当事者にGood Faithで交渉を行うことを義務付けるのであれば,LOIやMOUにその旨の条項を入れ,かつ法的拘束力を持たせる必要があるといえるでしょう。
このように,LOIやMOUといえども,その内容と効果を慎重に検討し,必要な条項を盛り込みつつ,その法的拘束力についても意図を明確にして作成する必要がありますから注意が必要です。
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