英文契約書 Confidentiality/Non-Disclosure Agreement(NDA)(守秘義務契約)

 

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 英文・英語で作成される契約書のうち,Non-Disclosure Agreement(NDA)/Confidentiality Agreement(CA)は,守秘義務契約書のことです。

 

 

 英文・英語で作成される守秘義務契約書は,外国企業との間で,本体のビジネスに関する契約書を作成する前の交渉時に作成することがよくあります。

 

 

 その後,本体のビジネスに関する契約書が締結された際には,その契約書内に同様の条項を設けてそちらに吸収させるか,引き続きNDAの効力が継続すると定めるのが通常です。

 

 

 英文NDAを作成する際には,以下の点に注意する必要があります。

 

 

 守秘義務の対象となる機密情報の範囲・定義

 

 英文契約書において,どのような情報が守秘義務の対象となるのかについて明確する必要があります。



 情報開示者にとっては,どの情報を守秘義務の対象とするのかはNDAの根幹に関わる重要な問題ですから当然です。



 また,情報受領者にとっても,どの情報を秘密情報として管理するのかが明確でないと,情報管理に支障をきたすことになるので,秘密情報の範囲と定義は重要です。


 

 さらに,秘密情報の範囲や定義が曖昧だと,情報受領者の保有する技術情報に混入してしまい,どこまでが自社の独自の情報でどこからが相手方から提供を受けた情報なのかが不明確になり(コンタミネーション),将来の研究開発に悪影響が生じることもありえます。

 

 

 そのため,守秘義務の対象となる機密情報を明確に定義付けする必要があります。

 

 

 定義付けの方法は,@情報の範囲を契約書に記載するか,または,A情報提供者が「Confidentiality」または「Proprietary」のスタンプをつけたり,その旨明示したりしたものが機密情報になるという方法がよく用いられます。



 なお,自社が情報を守秘する側,つまり,情報受領者に回る場合には,@よりもAの方法にしたほうが無難です。


 

 @の定義が限定的で明確になされていれば問題は小さいですが,もし「提供されたあらゆる情報」とされていたり「性質上秘密として扱われるべき情報すべて」などとされていたりすると,秘密情報の範囲が曖昧で広すぎるため,上述したコンタミネーションなどの問題を引き起こす可能性が高まるからです。

 

 

 機密情報の該当性の例外

 

 定義からすると機密情報に当たるが,例外的に機密情報として扱わないという情報について定めるのが一般的です。

 

 

 例えば,すでに広く販売されている書籍に載っているノウハウであったり,公知になっている情報を例外とすることがよくあります。

 

 

 ただし,情報受領者が当該情報を漏洩したために公知となった場合を除く,という条件付けがなされるのは当然です。


 

 また,裁判所や行政庁から法令に基づき開示を命じられた情報についても例外とすると定めることも多いですが,この場合,規定の仕方によっては,裁判所の開示命令があった情報は,「広く世間に開示しても良い=およそ秘密情報ではない」と解釈されないように注意しましょう。


 

 あくまで開示命令に基づき必要最小限度での開示が許されるにすぎないことを念のため明らかにしておいたほうが良いかと思います。

 

 

 利用目的・守秘義務


 秘密情報は一定の目的に利用することを前提に開示されるものですから,利用目的を明確にします。



 そして,その目的以外に秘密情報を使用してはならないことと,秘密情報は自社の秘密情報と同一の注意をもって,または,善良な管理者の注意をもって秘密として取り扱わなければならないことを定めます。



 いわゆるneed to know(ニード・トゥ・ノウ)条項もよく定められます。



 これは,受領者の役員や従業員であっても,真にその秘密情報を知る必要がある者のみが当該秘密情報にアクセスできるという内容です。



 リバースエンジニアリング(解析)の禁止を定めることもよくあります。



 受領した情報を解析することによって新しいノウハウを取得してしまうような事態を防ぐ狙いがあります。



 また,開示者の承諾なく第三者に開示してはならない旨も明記されます。

 

 

 もっとも,第三者への開示禁止については例外も定めるのが通常です。

 

 

 当然ながら,情報受領者が,本体のビジネスに関し契約をし,たとえば,商品を販促するなどの際に,一定の情報を潜在顧客に開示する必要があります。

 

 

 こうしたことは例外に当たるべきです。したがって,通常,英文・英語で契約書を作成する際に,当該ビジネスの目的遂行のために必要な情報開示は一定の範囲で許されると定めます。

 

 

 また,会計士・弁護士などの専門家に相談するために開示することも例外に当たると定めることもよくありますし,関連会社への開示も可能とすることもあります。

 

 

 情報の返却・破棄

 

 英文契約書において,本体のビジネスに関する契約が締結に至らなかった,または,本体のビジネスが終了したような場合に,機密情報をどのように取り扱うのかについて定める必要があります。

 

 

 通常は,情報開示者の選択により,情報受領者が,当該情報が記録された有体物やデータの一切を返却するか,破棄するなどと定めます。

 

 

 機密情報の破棄については,情報提供者がどのように破棄の事実を確認するのか(廃棄を証する証明書を提出させるなど)についても検討し,場合によって英文契約書に定めます。

 

 

 完全合意条項に注意

 

 Entire Agreement(完全合意)とは,本体の契約書を締結する際に,それ以前に合意したものは一切失効し,本件契約書だけが効力を有すると定める条項のことをいいます。

 

 

 Entire Agreement(完全合意)の解説については,こちらの記事をご覧下さい。

 

 

 この条項を本体の英文契約書に挿入すると,NDAも本体の契約書の締結前に作成された合意文書ですので,Entire Agreement(完全合意)条項の効果によりNDAの効力まで失効してしまうおそれがあります。



 そのため,NDAはなお効力を有するとするか,または,NDAのポイントを改めて本体の英文契約書で合意しておく必要があります。

 

 

 守秘義務に違反した場合の措置

 

 情報提供者にとって,仮に情報受領者が守秘義務に違反し,価値ある情報が漏洩した場合,ケースによっては損害が多額になったり,金銭的には回復不可能なダメージを受けたりする可能性があります。 

 

 

 この場合に,どのような措置を取ることができるのかについては,英文契約書の締結以前に検討する必要があるでしょう。

 

 

 たとえば,本体の契約を解除し,損害賠償を請求すると定めてみても,日本法などでは,損害は実際の損害額とされていますから,損害額を立証する責任が情報提供者にあります。

 

 

 当該機密情報の漏洩によって一体いくらの損害が生じたのかを立証するのは困難な場合があり,この場合,損害賠償を請求できると規定してみても,あまり意味がありません。

 

 

 そのため,英文契約書において,損害額の算定方法を記載したり,予め損害賠償の予定(liquidated damages)として,定額を記載したりしておくということも行われます。

 

 

 他方で,情報受領者からすれば,自己の情報漏洩によって,たとえば営業損害などが無限に広がる可能性があり,これをすべて賠償するというのは酷な場合があります。

 

 

 そのため,営業上の逸失利益にかかる損害などの間接損害(indirect loss)については免責されるなどと,情報受領者側の立場では定めることもあります。



 ただ,この損害賠償責任の限定については,守秘義務契約違反では責任限定の効果を受けられず,間接損害を含め発生した損害全額を違反者が賠償するとされることが一般的ではあります。



 そうでないと,守秘義務を厳格に守らせるため,違反をした場合に大きな制裁を課すことで狙っている抑止効果が薄れてしまうからです。



 例えば,損害賠償の予定条項があるようなケースでは,損害賠償の予定額が「安すぎる」と,その金額を払えば,事実上,情報開示者の秘密情報を自らの利益のために使えるという不当な結論になりかねないということです。



 また,損害賠償では,秘密漏えいによる損害の回復は困難であるため,情報使用の差し止め請求を裁判所に請求できる旨の条項を入れることもよくあります。

 

 

 これは,英語ではInjunctive Reliefと表現されていますが,英国法の下では,コモンローではなくEquity(衡平法)上の救済方法に分類されています。



 秘密保持期間


 秘密保持義務を課される期間は,実務上は3年から10年程度と定められていることが多いですが,どれくらいが妥当なのかは,情報の内容や性質によるので一概にはいえません。



 長く秘密情報としての価値を持つものなのであれば,開示者はなるべく長期に設定したいでしょうが,受領者としては,あまり長期間であると守秘し続けるのが現実的ではないということもあります。

 

 

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