英文契約書によくある更新拒絶条項を巡るトラブルとその解決法

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 日本の㈱XYZ製造は,ドイツの㈱ABC販売に対して,スポーツ用品をドイツ国内で独占販売させていました。

 

 ところが,契約開始から3年目となった年度,㈱ABC販売の業績は芳しくなく,販促活動も精力的に行っている様子がありませんでした

 

 まだ契約期間は6か月ほど残っています。㈱XYZ製造としては,このまま,㈱ABC販売に独占権を付与していても,ドイツ国内で売り上げを期待通りに上げるのは難しいと考えました。

 

 そこで,契約途中での解約か,次の契約期間満了時に更新拒絶をすることを検討し,締結していた英文契約書を見ました。

 

 英文契約書には,何の理由もなく契約期間中でも中途解約ができるという条項(termination without cause)はなかったものの,㈱ABC販売の契約不履行があれば解除できる(termination with cause)との条項はありました。

 

 また,㈱ABC販売には販促活動について商業的に合理的努力(commercially reasonable efforts)をしなければならないという義務が課されていました。

 

 この努力義務違反を契約違反であると主張して契約を解除できないかと考え,㈱XYZ製造で調査・検討したところ,㈱ABC販売が必ずしも商業的な合理的努力をしていないとまでは言えないのではないかという判断が大勢でした。

 

 そのため,契約違反を理由とした解除ではなく,より穏便に,期間満了時に更新しない旨を通知して終了させることにしました。

 

 契約書には3か月前までに更新をしない旨を相手方に通知せよと書いてあったため,余裕をもって㈱XYZは更新拒絶通知を出しました。

 

 「これで良かった」と安心していたところ,㈱ABC販売の代表からすごい剣幕で電話が架かってきました。

 

 「いったいどういうことだ。我々は自分たちのコストで初期のマーケティングに大変苦労して,ようやく売れ出したところなのに,どういうつもりだ。このままでは済まないぞ。」と怒鳴りつけられてしまいました。

 

 ㈱XYZとしては,英文契約書に記載している通りに,更新拒絶通知を出しましたし,特に更新拒絶をした場合の罰則なども契約書には書かれていません

 

 しかし,㈱ABCは,「契約書に書いていなくても補償金を支払わなければならない。補償金を受け取らずに契約終了は承服できない。」などと主張し,㈱XYZ製造の主張に聞く耳を持ちません。

 

 結局,交渉の結果,㈱XYZ製造は,これまで売上利益額から1年分の平均額を算出して,その6か月分を㈱ABC販売に支払い,その代わり,契約終了後すぐに別の販売店を指名できるし,新たな販売店の販売行為を妨害しないとの条件で,和解したということです。

 

 特に法律に従ったというわけではないのですが,あまりの剣幕で㈱ABC販売の代表から頻繁にせっつかれたため,今後のドイツでのスムーズな商品展開を優先し,苦渋の決断をしたとのことです。

 

 ㈱XYZ製造は,その後,同業者からなどの情報で,一部の国では,販売店や代理店が法律上保護されており,仮に契約書に更新拒絶について何らのペナルティがあるなどと書かれていなくとも,一定の場合に,メーカーなどが補償責任を課されることがあることを知ったのでした。

 

本事例の解決法

 この問題は,悩ましい問題です。海外で販売店や代理店を指名する場合は,契約解消のことまで予め考え,その対策も取ってから開始するべきでしょう。

 

 国によっては販売代理店保護法のような法律や判例が存在しており,このような法律などによって販売代理店が契約の終了時に手厚い保護を与えられているケースがあります。

 

 そして,このような法律は「強行法規/強行規定」と呼ばれ,当事者の合意により適用を排除できないとされていることが多いのです。

 

 強行法規/強行規定についてはこちらの記事で解説しているのでご覧下さい。

 

 本件では,現地法の調査を事前に行い,契約の解消にあたりどのような現地の規制があるのか把握し,その場合の予算なども組んだ上で取引を開始するのがベストであったと言えるでしょう。

 

 しかし,現実には,取引の規模やどこの国で取引をするかなどの事情によってそこまではできない,そこまでするような取引ではないということも多いと思います。

 

 その場合は,準拠法または現地法の規制内容はさて置き,少なくとも英文契約書には,当事者が合意した内容を明確に記載しておく必要があるでしょう。

 

 そうすることにより,少なくとも,契約当事者は英文契約書に書かれた内容で経営判断をしたということになりますから,その後,英文契約書に書かれた内容と異なる要求をしてくる可能性は低くなるでしょう。

 

 具体的には,本件では「いかなる理由であれ契約が終了した場合には,契約の終了を理由として,逸失利益などの補填をするための補償金その他の名目の金銭の支払いは一切なされないものとする」などと契約書に明記しておくべきだったということになります。

 

 上記の英文例は,"If this Agreement is terminated for any reason whatsoever, no compensation or other money by name shall be paid to compensate for goodwill or lost profits, etc., as a result of the termination of this Agreement."などとなります。

 

 このように明記しても現地の販売代理店保護法などでこのような規定は無効となる可能性がありますが,少なくとも販売店が納得してサインしたのであれば,大きなトラブルになる可能性は減らせると思われます。

 

 あくまで,次善の策ではありますが,最低限の対策として行っておく必要があったと言えるでしょう。

 

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