この記事でわかること
こんなときにお読みください:販売店契約などで,自社だけが相手方を補償する内容の条項になっている。どこまで修正を求めてよいか迷っている。
1. よく見られる補償条項
Indemnificationは,一般的に,「当事者は,本契約の義務の履行に基づき,または本契約に関連して,相手方当事者が第三者からクレーム等を受け,損害もしくは費用(合理的な弁護士費用を含む)を被ったときは,これらについて相手方当事者を補償する」というような内容で登場します。
The Distributor shall indemnify and hold harmless the Supplier and its affiliates, the respective directors, officers, and employees, to the full extent lawful, from and against all claims, demands, damages, losses, liabilities and expenses including, without limitation, reasonable attorneys' fees and expenses which the Supplier may suffer or incur as a result or as a consequence of, arising out of or in connection with, breach of this Agreement by the Distributor.
和訳:販売店は,販売店による本契約の違反に起因または関連して,サプライヤーが被りまたは負担するすべての請求,要求,損害,損失,責任および費用(合理的な弁護士費用を含みますがこれに限りません)について,法律上許される最大限の範囲で,サプライヤーならびにその関連会社および各役員・従業員を補償し,損害を与えないものとする。
この条項では,販売店(Distributor)だけがサプライヤー(Supplier)を補償するとされていて,逆の場合は書かれていません。一方的で,販売店側が不利益を被るおそれがあります。
2. 修正案の比較
| 修正案 | 自社にとっての効果 | 相手の受け入れやすさ(目安) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 双方が補償する形に変更 | 自社も補償を受けられる | ★☆☆ | 立場の強い相手には拒まれやすい |
| ② 相手の故意・重過失の場合を除く | 相手に原因がある損害まで負担しない | ★★★ | 軽い過失の場合は除外されない |
| ③ 相手の過失割合に応じて減らす | より公平な負担になる | ★★☆ | 過失割合をめぐって争いになりうる |
| ④ 自社に帰責事由がある場合に限る | 落ち度のない損害は補償しない | ★☆☆ | 英米法の考え方と異なるため抵抗されやすい |
※受け入れやすさは一般的な傾向であり,取引条件や交渉力によって異なると考えます。
① 双方が補償する形に変更する
最も単純なのは,当事者双方が相手方を補償する公平な内容に変えることです。
ただし,サプライヤー側の立場(Bargaining Position)が強い場合は,受け入れてもらえないこともよくあります。その場合は②〜④のように,補償する場面を絞る方法を検討します。
② 相手の故意・重過失の場合を除く
販売店の契約違反によってサプライヤーが損害を被った場合でも,その損害がサプライヤーの重過失や故意によって生じたときは,販売店は補償しないとする修正です。
③ 相手の過失割合に応じて補償を減らす
サプライヤー側にも過失があった場合は,その割合に応じて販売店の補償の範囲を狭めるという修正です。よりフェアな内容に近づくため,サプライヤー側も受け入れやすいかもしれません。
④ 自社に帰責事由がある場合に限る
英米法(コモンロー)では,契約違反の責任は原則として過失を要件としない厳格責任(Strict Liability)と考えられており,日本の民法とは考え方が異なります。そのため,英米法を背景にした英文契約書の補償条項は,過失を前提とせずに書かれていることが多いのです。
3. 自社の契約書で確認したいポイント
4. まとめ
どうすれば公平になるか,どのような内容に修正すれば自社のリスクを減らし,より合理的な内容にできるかという視点でレビューすることが大切です。ここで挙げたほかにも,注意すべき点や修正方法はあります。
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