Applicable law(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Applicable lawがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「適用法」を意味します。
なお,単に適用法というと,些末な形式的な法律も含んでしまいますので,このような重要でない法律に違反したような場合も直ちに契約解除につながるような解釈ができる契約内容の場合は,注意したほうが良いかと思います。
例えば,Distributor shall strictly comply with applicable laws and regulations in the course of performance of this Agreement.(販売店は,本契約の履行中,厳格に適用法令及び規制に従わなければならない。)などと使用されます。
Governing Law(準拠法)が,例えば日本法であったとしても,強行法規(Mandatory law/statute)/強行規定(Mandatory provision)として現地法が適用されるということは当然あります。
強行法規/強行規定は,当事者の合意によっても適用を排除することはできませんし,強行法規/強行規定の内容を自分に有利=相手方に不利に変更したりすることも許されません。
例えば,日本の労働法を考えて頂ければ理解しやすいと思います。
日本企業が日本で外国人を雇って日本で働かせ,準拠法をその外国人の国籍の国の法律で合意して契約したとします。
そして,その国の労働法では,解雇は自由にいつでもできるとされていたとして,その日本企業はその外国人労働者を自由に解雇できるでしょうか。
答えはできません。もしその労働者が日本の労働法を適用する意思を表示した場合,日本の労働法による解雇規制が強制的に適用されうる(法の適用に関する通則法第12条第1項)ので,自由に解雇はできないということになるのです。
つまり,日本の労働法がここでは強行法規/強行規定としてapplicable lawになるわけです。
なお,日本企業が自社の従業員を海外に赴任させる場合にも注意が必要です。
現地に赴任する従業員との間で準拠法を日本法とする旨の合意をしていないと,法の適用に関する通則法第12条第3項により,現地の労働法が適用される余地があります。
また,従業員と日本法を準拠法とする旨の合意をしていたとしても,現地法により労働者保護の強い強行法規/強行規定が存在していた場合に,当該従業員が現地法の適用を主張した場合,その法律が適用される可能性があります(法の適用に関する通則法第12条第1項)。
そのため,Local law, Applicable lawについての知識と,これらを遵守する姿勢は,重要です。
一般的には,当事者の合意のほうが法律よりも優先されるのですが,例外的に強制的に適用される法律があることを知っておきましょう。
特に海外取引では,外国法が強制適用される可能性があるため,自社が行おうとしているビジネスに外国法が強制的に適用されないか,されるとしたらそれはどのような内容かを事前にチェックしてからビジネスを始めるべきです。