英文契約書の相談・質問集70 知的財産権侵害の保証内容はどういうものありますか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「知的財産権侵害の保証内容はどういうものありますか。」というものがあります。
例えば,日本のメーカーが海外の販売店(Distributor)を使って自社製品を販売展開する場合に,そもそも,自社製品が海外で第三者の知的財産権を侵害しないということを保証するべきかという問題はあります。
この問題については,「売主は他社の知的財産権を侵害しないことを保証すべきですか」という記事で解説しています。
ここでは,もし,日本のメーカーが,自社製品が販売店の販売地域において第三者の知的財産権を侵害しないことを保証した場合に,具体的な保証内容はどういうものがありうるかということについて解説します。
つまり,実際に製品が第三者の知的財産権を侵害するというクレームが出され,現実に侵害が認められた際に,日本のメーカーがどのように対応すると英文契約書に書くものなのかという問題です。
もちろん,保証違反した場合の対策内容は色々と考えられますが,一般的に多いのは,下記のような対処法だと思います。
1.他社の知的財産権を侵害している部分について,侵害がないように製品を補修・修正して侵害を除去する。
2.他社の知的財産権を侵害している部分について,その知的財産権を保有しているライセンサーからライセンスを受けて知的財産権侵害を除去する。
3.返品を受付け,製品を回収し,代金を払い戻す。(払い戻す金額についても記載があるのが普通です。)
これらをメーカー(販売店ではない)が状況により選択できるとしている場合が多く見られます。
ちなみに,3番目の対応を選択された場合は,知的財産権侵害が除去されていないことになりますので,販売店は以降商品を売却できないことになります。
同時に,上記の方法により販売店を救済するということのみメーカーは認め,それ以外の対応はしない,それ以外は免責と定めることもよくあります。
冒頭の例は,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を例として挙げましたが,当然ですが,第三者の知的財産権を侵害していたというときに困るのは,ライセンス契約(License Agreement)でも同様です。
この場合に,ライセンシーは,自分がラインセスされていた権利が他社の知的財産権を侵害していて,かつ,ライセンサーが侵害を除去できないため,返金を選択した場面を考えてみます。
そうすると,ライセンシーは返金を受けたとしても,ライセンスを失ってしまいますのでライセンシーが本来想定していたビジネスはできなくなってしまうという事態が考えられます。
この場合,ライセンシーとしては,本来想定していたビジネスによる利益や代替となる権利のライセンスを受ける費用を損害としてライセンサーに請求したいと考えるでしょう。
ところが,ライセンシーはこの請求はできず,ライセンサーはこのような損害賠償請求から免責されるという内容の規定もよく定められるということです。
特に,海外・国際取引では,メーカーやライセンサーの立場からすると,外国にどのような知的財産権が存在するのかを調査するには難しいですし,法制度や司法制度も異なるので,知的財産権の侵害がないことを保証するリスクが高くなります。
このあたりの事情を理解して,メーカーと販売店,ライセンサーとライセンシーの利害のバランスをとり,調整することが大切となってきます。
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