英文契約書の相談・質問集91 Best/reasonable effortsと書けば販売店の義務は十分ですか。

 英文契約書の作成,チェック(レビュー),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Best/reasonable effortsと書けば販売店の義務は十分ですか。」というものがあります。

 

 日本のメーカーが,海外で製品を販売展開する際に,海外の販売店(Distributor)を指名して,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,現地販売店に販売させることがよくあります。

 

 この際に,日本のメーカーとしては,販売店にきちんと販促活動を行ってもらい,商品が売れるように努力してもらわなければ困ります。

 

 とりわけ,独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の場合は,契約期間中ほかの販売店(Distributor)を指名できませんのでなおさらです。

 

 契約期間中,指名した販売代理店のパフォーマンスが悪くても,その契約を解除して販売代理店の指名を終了させない限り,別の販売代理店を指名できないからです。

 

 もっとも,独占販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)の場合は,最低購入数量(Minimum Purchase Quantity)が別途設定されることが大半なので,販促努力の程度が問題になるのはむしろ非独占販売店契約(Non-Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)といえるかもしれません。

 

 最低購入数量の定めがあれば,販売代理店はそのノルマの数量を達成しないと契約解除などの制裁を受けることになりますから,販売努力義務の規定より,最低購入数量のほうがわかりやすい目標になるからです。

 

 いずれせによ,上記の理由から,販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)において,販促活動,広告宣伝活動などをするよう販売店に義務付けることがよくあります。

 

 その際,どの程度販促活動させるのかという程度について全く記載がないと,ウェブサイトを作ったのだから,販促努力をしたと販売店に言われて反論できないなどということになりかねません。

 

 そのため,どの程度販促努力をしてもらうのかを,契約書に記載するのが一般的です。

 

 その際によく登場するのが,best efforts(ベスト・エフォート)やcommercially reasonable efforts(コマーシャリー・リーズナブル・エフォート)という用語です。

 

 英国コモン・ローにおけるこれらの努力義務の程度などはこちらの記事で書きましたので参考にされて下さい。

 

 ただ,必ずしも英国コモン・ローの考え方が反映されて解釈されるわけではないですし,やはり,「最大限の努力」,「商業上合理的な努力」といわれても,曖昧さが残るのは否めません。

 

 特に,取引を始めたは良いが,販売店のパフォーマンスが悪いので,販売店の債務不履行を理由に販売店契約を解除したいと日本のメーカーが考える場合に,取っ掛かりになりそうな条項がこの販売活動の努力義務違反しかないというときは,この条項は重要な意味を持ちます。

 

 その際,「商業的に合理的な努力」という文言(通常の商売人なら行うであろう販促努力義務)をもって,債務不履行だというのは,現実にはなかなか難しい場合もあります。

 

 なぜならば,全く何もしていないというケースは珍しく,販売店としても,それなりのことはしていると反論してくるとなかなかこれに抗うことが難しいからです。

 

 そうなると,それでは足りない,このくらいコストをかけて,このくらいのことはしないと,努力義務を尽くしたことにならないと主張したいところですが,根拠に乏しいと言わざるを得ないこともあります。

 

 もちろん,業界内のデータや事例を収集すれば,こうしたことを主張立証できないということではないのですが,販売店が納得するかという問題もあるので,理解を得るのが難しいということもあります。

 

 そのため,やはり,何らかの客観的な指標,数字などを記載しておく方がベターであるといえるでしょう。

 

 例えば,一定の期間中に一定の活動は必ずするように活動を具体的に列挙するとか,販促にかけるコストを金額で定めるなどが対処法としてありえます。

 

 なお,繰り返しになりますが,独占販売店契約書(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)などで,販売店が一定期間で購入しなければならないノルマである最低購入数量を定めていれば,この点はあまり大きな問題になりません。

 

 最低購入数量の未達で解除という方法を取れるからです。対して,最低購入数量がないような場合,この問題はより深刻になります。

 

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