Competent(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Competentがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,「権限ある」という意味で使用されることが多いです。
英文契約書でよく見かけるフレーズは,competent jurisdicitionやcompetent courtというものだと思います。
これは,「正当な権限ある裁判管轄,裁判所」というような意味です。
英文契約書では,通常,契約当事者間で紛争が生じた場合に,どのようにその紛争を解決するかについて記載します。
具体的には,ある都市の裁判所で裁判をするとか,ある都市のある仲裁機関において仲裁をするなどと記載します。
裁判を選択する場合,一般的には,専属的(Exclusive)合意管轄裁判所といって,要するに当事者が合意したところの裁判所でしか,裁判はできないと定めます。
例えば,日本の東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所と契約書に定めた場合は,東京地裁でしか裁判ができないということになるわけです。
もし,契約当事者が別の裁判所に訴訟を提起したら,その裁判所は,自分の裁判所には管轄権がないとして,その訴えを却下するという対応をとるということになります。
ところが,こうなると困る場合があります。
例えば,当事者の一方が相手方から取得した秘密情報を不正に利用して,日本以外の外国でサービス提供しているというような場合です。
このような場合を想定して,秘密保持契約書(NDA/Non-Disclosure Agreement)などでは,もし当事者が秘密情報を不正に使用した場合,その救済(Remedy)として,損害賠償(Damages)だけではなく,裁判所に対する差止請求(Injunctive Relief)も認められると記載されていることが多いです。
日本以外の外国,例えば,イギリスで,当事者の一方が秘密保持契約書に違反して,相手方の秘密情報を不正に使用してサービスを提供しているとなった場合,専属的合意管轄裁判所である東京地裁に情報の使用についての差止請求をしても,実効性がないでしょう。
こういうときに,現地のイギリスの裁判所に訴えて,差止命令を出してもらうという必要が出てきます。
ところが,専属的合意管轄裁判所として東京地裁が定められているため,イギリスの裁判所に管轄権がないのではないかという問題が生じます。
これを払拭するために,差止請求(Injunctive Relief)などの救済を求める場合には,専属的合意管轄裁判所の定めにかかわらず,competent jurisdiction(上記の例ではイギリスの裁判所)に対して,申立ができるという内容が英文契約書に書かれていることがあります。
この場合に,このcompetentという英文契約書用語が使われることがあります。
それほど頻繁に使用されたり,重要であるという用語ではないですが,意味は知っておいたほうが良いかと思います。