If any(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,If anyがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「もしあれば」という意味で使用されます。
規定されている内容が,あるかないかわからない,場合による,当事者によるなどという場合に,このif anyを使用します。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で,相手方の国の法律によって,販売店の登録制度があったりなかったりするというようなときに,もしあるのであれば,登録する必要があるなどとする場合に,if anyが使用されることがあります。
存在するかどうかが事前にわかっていれば,契約書に,存在するなら義務として記載するし,存在しないのであれば,記載しないということで良いわけです。
ただ,フォーマット・ひな形の形で契約書を持っている場合,相手の都合に合わせていちいち変更するのは手間です。
そのため,存在するかどうかでその条項が適用されるかどうかが変化する場合には,予め,if anyのような用語を入れておいて,都度変更する必要がないようにしておくということがあります。
他にも,if necessaryやas the case may beなども同じような用法で英文契約書では使われることがあります。
これらはそれぞれ「必要があれば」「場合により,具体的な場合に応じて」という意味です。
If necessary,as the case may beについては,それぞれこちらのリンク先の記事でご覧頂けます。
英文契約書のひな形を作成する場合は,このような「省エネ」を考えておくことも重要です。
変更する手間を省くということもそうなのですが,それ以上に重要なのは,ミスを防ぐということです。
存在しないのに義務として契約書に記載された場合,相手方から無用な質問を受けたり,記載すべきだったのに,誤って記載のないフォーマットを使用してしまったりすることを防ぐのに役立ちます。
この省エネ化と,ミスの防止という観点から,英文契約書で他に使われる手法としては,intentionally ommited(意図的に省略)という用語を使った手法が挙げられます。
これは,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),修正する際に,一定の条項を削除することがあると思います。
この条項を削除するという行為をすると,条項番号を一つずつずらして,番号を振り直す必要が出てきてしまいます。
これだけなら,大した手間ではないのですが,契約書では,ある条項が別の条項の番号を引用しているということあります。
例えば,「本契約第3条,6条,8条,12条は本契約終了後もなお効力を有する。」などという場合です。
この場合,条項番号がずれたことによって,もう一度書き直さないといけないということになります。
ここで,ミスが起きがちです。条項を最終的に対照する際にミスしてしまったり,そもそも引用されているところを見逃していて,修正されなかったりということが起こります。
実際に,私も契約書をレビューしていると,これは,以前修正したときに修正し忘れてずれたのだなとわかることがよくあります。
こうしたことを防ぐために,条項を削除して,横に,intentionally ommitedと書いておくのです。
そうすると,何らかのミスで,条項が消されたということではなく,あくまで意図的にその条項は今回は適用がないということで削除されたということと,その条項を引用している他の条項に番号が残っていても,それは,意図的に削除されたものであることが明白なので,無視すれば良いということになります。
このように,省エネ化,ミス防止という手法は,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),修正する際には,重宝します。
その手法の一つとして,このif anyという用語が使えるということは覚えておくと良いかと思います。