Conflict(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,Conflictがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「矛盾する」という意味で使用されます。
類義語には,Contraryなどがあります。
例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)などを締結する場合,商品の個別の発注・受注によって個別契約(Individual Contract)が成立していきます。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)は,基本契約という性格を持つことになりますので,ここに記載された条件が,すべての個別契約に適用されることになります。
そうすると,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で定めていた内容と,発注書と受注書で約束する条件が「矛盾する」(Conflict)場合があります。
このようなときに,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に記載されている内容が優先されるのか,個別契約に記載された内容が優先されるのかについて,予め販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に記載しておくということがあります。
このような場合に,このConflictが登場します。
例えば,In the event of the provisions resulting in a conflict between the Individual Contract and this Agreement, the former will supersede the latter.(個別契約と本契約の条項が矛盾するときは,個別契約の条項内容が優先する。)などと表現されます。
上記のように個別契約の内容を優先させるのは,基本契約としての販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)があったとしても,今後の取引状況や個別の発注時の事情で,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の内容とは異なる約束をしたい場合があるということに備えて,ということになります。
販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の内容が優先されるとなっていると,この内容を変更するには,いちいち,契約書の内容の改定合意を,当事者の代表者同士がサインして行わなければならないということになってしまい,スピーディではないということになってしまいます。
逆に,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の内容を,担当者レベルで簡単に変更してもらっては困るという場合は,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の内容を個別契約に優先させるとしたほうが良いことになります。
こうしておけば,担当者が発注書と受注書で販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)と異なる条件を合意したとしても,無効ということにできるからです。
他にも,英文契約書で準拠法(Governing Law)を定めるときに,Conflict of Laws(抵触法)という概念を記載するときに,このConflictという用語が登場することがあります。
特に,基本契約と個別契約の内容が矛盾するときに取り扱いについては,事前に契約書で明確にしておいたほうが良いと思いますので,英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際には,注意したほうが良いでしょう。