英文契約書の相談・質問集179 Risk of damage or loss (危険負担)とは何ですか。

 

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「Risk of damage or loss (危険負担)とは何ですか。」というものがあります。

 

 

 これは,商品の売買などをする際に,売主と買主のどちらのせいでもなく,不可抗力で商品が毀損(壊れてしまう,傷がついてしまう)したり,滅失(なくなってしまう)したりした場合に,どちらが責任を負うのかという問題だと理解すればわかりやすいと思います。

 

 

 海外取引では,このRisk of damage or loss (危険負担)の問題は,インコタームズというルールで定めることが多いです。



 インコタームズは,法律や条約ではないので,強制的に適用されるわけではなく,当事者が選択した場合にはじめて適用されます。

 

 

 インコタームズには,このRisk of damage or loss (危険負担)についていろいろなパターンを用意しています。

 

 

 当事者が契約書を締結する際に,いくつか用意してあるパターンをインコタームズから選択してRisk of damage or loss (危険負担)について合意することが通常です。

 

 

 例えば,FOB条件を選択したとします。

 

 

 この場合,Incoterms 2010やIncoterms 2020では,「商品が船積みされたとき」にRisk of damage or loss (危険負担)が売主から買主に移転するとされています。

 

 

 そのため,例えば,売主がトラックで輸出港まで商品を輸送しているときに,台風でトラックが転覆し,商品が壊れてしまったというような場合は,買主にまだ危険が移っていませんので売主が責任を負うということになります。

 

 具体的には,売主は,壊れていない新しい商品を調達し,約束どおり買主に引き渡さなければならないということを意味します。

 

 

 言い換えれば,壊れてしまった商品の代金を買主からもらえない=危険は売主が負っているということです。



 反対に,例えば,商品が船積みされて,海上輸送中に台風が来て商品が水没してなくなってしまったという場合は,Risk of damage or loss (危険負担)は船積み後に買主に移転しているため,買主が責任を負います。

 

 

 その具体的意味としては,買主は,なくなってしまった商品の代金を,未払いであれば売主に払う必要がありますし,すでに払っている場合は,返金を受けられないということになります。

 

 

 こういう場合に備えて,通常は,自社が危険を負っている過程について保険に加入して,リスクヘッジをします。

 

 

 このように,危険負担というと専門的な用語のため,難しく聞こえますが,Risk of damage or loss,つまり,商品が壊れてしまったり,なくなってしまったりするリスクをどちらが負うのかという問題だと理解すると難しくないと思います。

 

 

 インコタームズの貿易条件を選択すれば,このRisk of damage or loss (危険負担)も定めたことになるので,あまり意識しないかもしれませんが,この概念は,前述のとおり,非常に重要です。

 

 

 英文契約書にRisk of damage or loss (危険負担)の移転時期を具体的に記載することもありますし,単に貿易条件を選択して英文契約書には具体的な危険の移転時期は書かないということもあります。

 

 

 なお,インコタームズは,Risk of damage or loss (危険負担)については規定していますが,商品の所有権(Property,Ownership,Title)については何ら規定していません。

 

 

 したがって,インコタームズで貿易条件を選択しても,所有権の移転時期について合意したことになりませんので,注意が必要です。

 

 

 そのため,所有権の移転時期を定める場合は,契約書に記載する必要があります。

 

 

 もっとも,海外取引の場合は,所有権の移転時期よりも,上記のRisk of damage or loss (危険負担)の移転時期のほうが重要な意味を持っています。



 所有権の移転時期を代金完済時として売主が商品の所有権を留保しておけば,代金回収を保全できると考えられているのですが,実際に買主が代金を支払わない場合,海外取引ではこの所有権留保を行使することは事実上困難なため,所有権の移転時期にこだわる意味が薄れてしまうからです。

 

 

 なお,所有権の移転時期についての詳しい解説記事はこちらでご覧頂けます。



→【英文契約書の相談・質問集180】損害賠償の予定(Liquidated Damages)はなぜ定めるのですか。

 

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