英文契約書の相談・質問集203 準拠法が日本法なら不可抗力(Force Majeure)条項は不要ですよね。

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「準拠法が日本法なら不可抗力(Force Majeure)条項は不要ですよね。」というものがあります。

 

 日本法では,債務不履行責任を負うには,債務不履行をした当事者に帰責事由(その当事者の「責めに帰すべき事由」,つまり「過失」のようなもの)が必要とされています。

 

 そのため,例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で,売主が,台風という自然災害=売主のコントロールできない事情により,商品の納品を遅延したとしても,売主に帰責事由が認められないため,売主は責任を負わなくて良いということになります。

 

 この当事者のコントロールできない事情のことを,英文契約書では,Force Majeure(不可抗力)と呼んでいます。

 

 前述したとおり,日本の法律では,帰責事由がなければ当事者は債務不履行責任を負わないとされていますので,Force Majeure(不可抗力)によって債務不履行した場合は,法律によって責任を負わないとされているわけです。

 

 つまり,日本の法律では,過失責任の原則がとられているわけです。

 

 では,英文契約書で,準拠法(Governing Law)(その契約をめぐって問題が生じたときにどこの国の法律を適用するのかという問題)を日本法と定めた場合は,そもそも法律で過失責任なので,Force Majeure(不可抗力)の場合は免責されるという当たり前のことは書かなくても良いのでしょうか。

 

 結論としては,日本法が準拠法(Governing Law)となっていても,Force Majeure(不可抗力)は入れたほうが良いです。
 

 日本以外の国を見ると,過失責任の国ばかりではありません。

 

 例えば,英米法では,無過失責任が原則になっているので,たとえForce Majeure(不可抗力)によって当事者が債務不履行をしても,責任を生じます。

 

 そのため,国によって,Force Majeure(不可抗力)による債務不履行の場合に責任が生じるかどうかの考えが異なるのです。

 

 こうした異なる国に所属する企業と契約を結ぶのが海外取引ですから,英文契約書にForce Majeure(不可抗力)の取扱いについて記載がないと,これについて相手方と考えに違いを生じてしまうことがあります。

 

 そして,契約条件の理解に当事者間で差異があると,後でトラブルになる可能性が高まります。

 

 そのため,たとえ,日本法を準拠法(Governing Law)としていても,Force Majeure(不可抗力)の場合を免責としたいのであれば,相手も同じように理解できるように契約書に明記するほうが良いことになります。

 

 また,Force Majeure(不可抗力)といっても,何がForce Majeure(不可抗力)に該当して当事者が免責されるのかについては,日本法によっても明確な決まりがあるわけではありません。

 

 そのため,この点も当事者が明確に理解できるように,Force Majeure(不可抗力)に当たる事由を列挙し,きちんとForce Majeure(不可抗力)とは何であるかを定義しておく必要があります。

 

 このように,たとえ,契約書で,過失責任主義が採用されている日本法を準拠法(Governing Law)としていたとしても,相手もきちんと理解できるようにするため,また,何がForce Majeure(不可抗力)に該当するのかを明確にするため,Force Majeure(不可抗力)条項は契約書に入れておいたほうが良いと思います。

 

 法律で定められていることはあえて契約書に書かなくとも良いというのは,同じ法律や商習慣を共有している同一の国に属する企業同士であればまだしも,海外企業との取引では危険な考えです。

 

 また,法律で結論が自社に有利になるからそれで良いという考えも危険です。相手がその法律を理解していなければ,法律とは異なる主張をされて紛争に巻き込まれるリスクがあるからです。

 

 相手は自社と異なる法律体系に属しており,自社と異なる常識で経営されていますから,「書かなくても当然なのでわかるだろう」という考えは捨て,理解しておくべきことはすべて契約書で共有するという姿勢が正しいことになります。

 

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