インドの法制度|販売店契約で注意すべき4つのポイント
日本企業が販売店(Distributor)を指名してインドに進出する際は,以下のようなインドの法制度に注意したほうがよいでしょう。
インドの法制度 早見表
| 法体系 | コモン・ロー(判例法) |
|---|---|
| 販売店の保護 | 販売店保護法はなく,解約条項や補償金の不支給は基本的に契約どおり(契約終了後の競業避止は原則無効) |
| 契約の登録 | 不要 |
| 言語の規制 | なし(英語のみでも作成可能) |
| 準拠法・紛争解決 | 外国法も選択可能・仲裁を選択することが多い(ニューヨーク条約加盟国) |
こんな方に:インド企業を販売店・代理店に指名しようとしている方,インド企業から販売店契約のドラフトを受け取った方
① 販売店(代理店)保護法
インドは,イギリスの影響を受けたコモン・ロー(判例法)の法体系に属する国の一つです。インドには,販売店や代理店を保護するために独自に制定された法律(いわゆる販売店(代理店)保護法)は存在していません。そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する(1)中途解約条項,(2)債務不履行解除条項,(3)契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えてよいかと思います。
また,販売店契約では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関しても,これを禁止するような法律の内容はないと考えてよいでしょう。
実務上のポイント:もっとも,インドの契約法では,契約期間終了後も競業避止義務を課す条項は原則として無効とされているので,注意が必要です。例えば,サプライヤーが販売店に対し,自社製品と競合する製品の取り扱いを禁止する条項を入れた場合,契約期間中は有効でも,契約期間後の競合品の取り扱い禁止は無効になる可能性があります。
② 登録制度
インドでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるといった事情も存在しないといえます。
③ 言語
販売店契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。
④ 準拠法・紛争解決
インドでは,準拠法をインド法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。ちなみに,インドは連邦制を採用しているため,連邦法と州法が存在します。
なお,インドはニューヨーク条約加盟国です。そのため,日本企業とインド企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。
インドの販売店と契約する前に確認したいポイント
- ✓中途解約・債務不履行解除・期間満了による終了の条項が契約書に明確に定められているか
- ✓契約終了時の補償金などの請求を認めない旨の定めがあるか
- ✓競業避止義務が契約期間中に限った内容になっているか(契約終了後の制限は原則無効とされる点)
- ✓紛争解決を裁判ではなく仲裁とするか(強制執行の便宜)
【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件