英文契約書の相談・質問集329 不安の抗弁権とは何ですか?

 

 

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「不安の抗弁権とは何ですか?」というものがあります。

 

 「不安の抗弁権」というのは,簡単に言うと,まだ履行期は来ていないが,相手方が履行期に義務を履行しないことが明らかな場合に,自分の義務の履行を拒否することができる権利のことを言います。

 

 

 日本では法律では認められていませんが,裁判でこのような概念を取り入れていると考えられるものが存在しています。

 

 

 英米法の概念では,anticipatory repudiatery breach of contractというものが類似したものと言えます。

 

 

 Anticipatory repudiatery breach of contractは,契約当事者の一方が,契約の履行期前に契約上の義務を履行しないと宣言した場合,または履行しないことが明確な場合,その相手方は当該契約上の義務から解放されるというものです。



 例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を締結し,サプライヤーと販売代理店が後払いで取引をしていたとします。



 そうすると,サプライヤーは先に商品を納品しなければなりません。こうした条件で,販売代理店がある商品を20ロット×5回オーダーし,サプライヤーは受注していたとします。



 オーダーは20ロットずつ5回に分けてされ,受注されているところがポイントです。



 この後,サプライヤーが,各オーダーの納期に従い20ロットずつの納品を順番に行うことになります。つまり,個別契約が5つ成立しているということです。



 そして,2回分の40ロットが納品分についてはきちんと代金が完済されましたが,3回目の納品後,販売代理店の支払いが遅れたとします。



 サプライヤーが催促しても,言い訳を言うばかりでなかなか代金が支払われません。



 そうこうするうちに4回目の納品期日が迫ってきます。このような場合にもサプライヤーは約束どおりに商品を納品しなければならないのかというのが,この不安の抗弁権の問題です。

 

 

 すでに3回目の納品分の代金が滞納されているにもかかわらず,4回目以降の納品をすれば,さらにサプライヤーの債権が焦げ付いて,損害が拡大する可能性が高いです。

 

 

 このような場合にまであくまで個別契約で約束したのだからと言って,4回目も5回目も先に納品しなければならないとするとサプライヤーに酷すぎるのではないかというのが問題意識です。

 

 

 なお,販売代理店は3回目の代金を払っていないので,サプライヤーとしては,この契約を販売代理店の債務不履行で解除することはできるでしょう。

 

 

 ところが,4回目と5回目の取引については,まだ納品前ですので,販売代理店の債務不履行は厳密にはありません。

 

 

 そのため,サプライヤーは販売代理店の債務不履行を理由に解除することはできないわけです。

 

 

 こうした場合にサプライヤーを救済する余地があるのが,不安の抗弁権ということになります。

 

 

 不安の抗弁権のような主張をサプライヤーがして納品を拒絶できるかは,契約書に記載がなければ,準拠法や判例がこのような救済措置を定めているかによるということになってしまうため,不安定です。

 

 

 そのため,契約書で予め手当しておくのが妥当です。例えば,「相手方の信用不安が客観的に認められる場合には,個別契約や基本契約の全部または一部を解除できる」としておくことが考えられます。

 

 

 こうしておけば,3回目の代金支払いが滞った段階で信用不安が認められるので,サプライヤーはそれ以降の個別契約を解除して,納品を拒絶することが可能となるでしょう。

 

 

 もっとも,現実には,このように契約書に信用不安の場合の解除権が明記されていない場合でも,相手が支払いを遅延しているのに,さらに商品を納品することは経営判断として避けるべきということもあります。

 

 

 こうした場合は,現地の弁護士とも協議しながら,不安の抗弁権のような主張が通らない可能性があるという法的危険性は理解し受け入れつつ,さらなる納品を拒絶していくということになるでしょう。

 

 

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