英文契約書の相談・質問集335 No-shop条項とは何ですか。
英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「No-shop条項とは何ですか。」というものがあります。
主としてM&Aの交渉において使われることが多い条項です。
No-shop条項とは,要するに,M&Aなどの取引の交渉に入っている当事者に対し,その当事者以外の第三者との交渉を一定期間禁止し,当事者間での独占交渉を定める条項を指します。
正式な契約を締結する前の予備的な合意段階で,LOIやMOUを締結することがありますが,その際にNo-shop条項を入れることがあります。
もちろん,M&A以外の取引においてNo-shop条項を入れて独占交渉権を定めることも問題ありません。
日本法の下では,一応このような独占交渉の定めは有効とされていますが,もし違反があった場合に差止請求や損害賠償請求が認められるかというとそれはケースバイケースと言わざるを得ないところがあります。
つまり,一応法的には有効の定めとなるが,違反したからといって常に法的救済が認められるかというと疑問符がつくということを理解しておくとよいでしょう。
このNon-shop条項を入れる際には以下の点に注意して条項を作成することが大切です。
まず,誰が誰と交渉をしてはならないことになるのかを明確にしましょう。禁止される当事者にグループ会社を含むのかなど,禁止される関係者の範囲を明確にすることが大切です。
また,禁止される行動の範囲も明確特定しましょう。「交渉」と言っても段階がありますので,接触や連絡そのものを禁止するのか,それ自体は禁止されず,あくまで対象となる取引の協議を禁止るのか,このあたりを明確にしましょう。
さらに,どういう取引形態の交渉が禁止されるのかも明らかにする必要があります。例えば株式譲渡の交渉を当事者間でしているとしても,M&Aの取引形態には株式譲渡のほかにもいろいろな類型がありますので,どの範囲で禁止するのかを記載するとよいでしょう。
ほかにも,禁止期間を明確にするとともに,禁止期間中でも当事者間で取引の交渉が決裂した場合にNo-shop条項が失効するなど,途中で条項が失効する事由について定める必要があるでしょう。
反対に,取引交渉が長引くことを想定して,No-shop条項の効力を延長させる事由についても定めておく必要があるでしょう。
なお,No-shop条項は大切な条項ではありますが,とりわけ外国企業とのアライアンスなどを考えて取引交渉に入り,MOUなどにNo-shop条項を入れた場合,もし違反をされてもそれを差し止めることが現実的に困難なことは否めません。
そのため,交渉段階で禁止事項を明確に協議して書面化するとともに,そもそも約束を反故にする相手かどうか,信頼に足りる企業かどうか,デュー・デリジェンスをしっかりと行うことが大切であることは言うまでもありません。
契約による縛りは重要ですし有効ではありますが,破られた場合に回復が難しいこともありますので,契約を取り付ければ問題がないという姿勢でいると思わぬところで足元をすくわれる可能性があります。
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