英文契約書の相談・質問集356 海外合弁会社との間で商標許諾契約は必要ですか。

 英文契約書の作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正の依頼を受ける際によく受ける相談・質問に,「海外合弁会社との間で商標許諾契約は必要ですか。」というものがあります。

 例えば,日本企業がある国に海外展開する際に,現地国に現地の企業と共同で出資して合弁会社を設立し,その合弁会社に日本企業の商品の販売展開を任せるというビジネスモデルの際に,日本企業と現地合弁会社との間に商標の使用許諾契約書を交わす必要があるかという問題です。

 もちろん,商標の使用許諾契約以外にも契約書の必要性は論点になるのですが,今回は商標の使用許諾契約に絞って考えてみたいと思います。

 日本企業としては,現地のパートナー企業とともに合弁契約(Joint Venture Agreement)を締結していて,現地の合弁会社は自社グループの関連会社なので,特に商標の使用許諾に関する契約書までは不要と考えていたとします。

 ただ,合弁企業は外国にあるので,現地のパートナー企業の経営者が基本的に現地の合弁会社の経営も担っているとします。

 こうした場合に本当に商標許諾に関する契約書を締結しなくて大丈夫でしょうか。

 このような場合,現地合弁会社の経営者の考えと,日本企業側の考えが必ずしも一致しているケースばかりではないので,日本企業が考えている商品のラインナップを超えて,現地合弁会社が商標を使用したいと考えるようになるケースがあります。

 この場合,日本企業が現地の合弁会社に対し,どの範囲で商標の使用許諾をしたのかが問題になりますが,契約書がないので判然としません。

 日本企業としては,自社商品の販売展開に関して,現地の合弁会社に使用許諾料の支払いを受けることなく商標を使用させることは,商品の売買差益からライセンス料を回収していると考えているので,特に問題ありません。

 ただ,日本企業が販売している商品以外のサービスや合弁会社が独自に開発した商品などに商標を使用するとなれば話が違ってきます。

 こうした際に,現地の合弁会社の商業登記簿謄本に該当する資料を見ると,「ちゃっかり」事業目的が広範囲に記載されていることがあります。

 こうなると,日本企業が意図しないうちに,合弁会社の事業目的として掲げられている範囲であれば,無償での商標の使用を許諾したと解釈される可能性が出てきます。

 商標の使用許諾契約書がない以上,どの範囲で商標使用が許諾されているのかは,他の証拠から推測することになりますが,上記の商業登記簿謄本上の事業目的は現地合弁会社に有利な証拠として使われるおそれがあるのです。

 ビジネスの初期段階ではこのような問題が顕在化することはまれですが,事業がうまくいって,商品が売れだすと,現地合弁会社の経営方針と日本企業の経営方針がずれだし,上記の問題が現れることもあります。

 したがって,出資している会社だし合弁契約書もあるからと安心するのではなく,商標使用許諾契約書もきちんと取り交わして,使用範囲を明確にして,ある範囲での使用についてはライセンス料を徴収するように設計しておきましょう。

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