今回は,海外の販売代理店や小売店に商品を販売してもらう際の一形態である「Consignment Sales Agreement(委託販売契約)」について解説いたします。
1. 委託販売契約とは
委託販売契約とは,委託者(Consignor)が受託者(Consignee)に対して商品の販売を委託し,受託者が第三者に販売した際に,その売上から手数料を差し引いた金額を委託者に送金する形式の契約です。
通常の売買契約(Sales Agreement)やディストリビューション契約との最大の違いは,商品の所有権(Title)の移転時期にあります。通常の売買では,出荷時や引渡し時に所有権が買主に移りますが,委託販売では,受託者が第三者に商品を転売するまで,所有権は委託者に留保されます。
2. 委託販売契約の主な条項
英文の委託販売契約において,特に留意すべき主要な条項は以下の通りです。
(1) Ownership of Products(商品の所有権) 前述の通り,受託者の手元に在庫がある間も,商品の所有権は委託者にあることを明記します。これにより,万が一受託者が倒産(Insolvency)した場合でも,委託者はその商品を回収する権利を主張しやすくなります。
(2) Payment and Commission(支払いと手数料) 受託者が商品を販売した際,いつまでに,どのような方法で売上金を委託者に送金するかを定めます。また,受託者の報酬となる手数料(Commission)の計算方法についても,明確な規定が必要です。
(3) Inventory Management and Risk of Loss(在庫管理と紛失リスク) 受託者は委託者の商品を預かっている立場(Bailee)にあるため,善良な管理者の注意(Duty of care)をもって在庫を保管する義務を負います。保管中に火災や盗難などで商品が滅失・毀損した場合の責任(Risk of Loss)はどちらが負うのか,保険(Insurance)の付保義務はどうなるのか,といった点が重要です。
(4) Reporting(報告義務) 受託者は定期的に(例えば毎月末),販売数量や在庫状況を委託者に報告する義務を負います。これに基づき,委託者は請求書(Invoice)を発行することになります。
3. 実務上の留意点
委託販売は,委託者にとっては「在庫を現地の市場に置きつつ,所有権を維持できる」というメリットがありますが,一方で「代金の回収リスク(受託者が売上金を着服するリスク)」や「在庫の劣化リスク」を負うことになります。
したがって,英文契約を締結する際には,受託者の信用調査を十分に行うとともに,委託者が受託者の倉庫に立ち入って在庫を確認できる「Audit(監査)」の権限を設けておくことが一般的です。
また,準拠法(Governing Law)や紛争解決(Dispute Resolution)の条項も,他の英文契約と同様,必ずチェックすべき項目となります。
以上,Consignment Sales Agreementの概要について解説いたしました。海外取引において,どのような契約形態を選択すべきかは,ビジネスモデルやリスク許容度によって異なりますので,個別案件ごとに専門家への相談をお勧めいたします。