ロシアの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してロシアに進出する際,以下のようなロシアの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

  ロシアは,大陸法(シビルロー)に属する国の一つで,ロシアの民法はドイツ法の影響を受けていると言われます。

 

 ロシアには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 日本の民法・商法に相当するロシアの法律には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えて良いかと思います。

 

 そのため,ロシアの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③期間満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,かかる条項も原則として有効と考えて良いでしょう。

 

 ただし,サプライヤーまたは販売店のいずれかの関連市場シェアが20%を超える場合には,ロシアの競争法によって公正な競争の障害となるような条項は無効になる可能性があるので注意が必要です。 

 

 なお,一概に言えませんが,ロシアでは模倣によるトラブルの報告がありますので,とりわけ,日本企業がロシアに進出する際には,事前に商標登録などをきちんとしておくことをおすすめします。

 

 ② 登録制度

 ロシアでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度そのものはありません。

 

 ただし,一定の商品については,ユーラシア経済連合(EAEU)の技術規則に基づく適合性の認証・宣言が必要となり,販売店が輸入者として申請者となることも多いです。

 

 したがって,認証手続きが必要な場合は,販売店の交替時に障害となるおそれがあるので注意が必要です。

 

 ③ 言語

 契約書の言語を特に制限する法律はないので,英文契約書による契約締結が可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 ロシアでは,準拠法をロシア法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ただし,紛争解決については,日本とロシアの間には判決の承認・執行に関する条約がなく,日本の裁判所の判決がロシア国内で承認・執行されるかどうかは不確実であるため,強制執行を考えると日本の裁判所以外の手段が良いかもしれません。

 

 ロシアもニューヨーク条約加盟国であるため,従来は,ロンドン国際仲裁裁判所(London Court of International Arbitration: LCIA)などの外国での仲裁を紛争解決機関として選定することも多く行われていました。

 

 しかし,2020年6月の法改正(連邦法171-FZ)により導入されたロシア商事訴訟法248.1条・248.2条は,外国の制裁の対象となった者が関係する紛争だけでなく,ロシアの個人・法人に対する制裁に起因する紛争についても,ロシアの商事裁判所の専属管轄を定めており,外国の裁判所や仲裁の合意があっても,制裁によりその合意の履行が困難であるとされる場合には,ロシアの裁判所が外国での手続の差止めを命じることを認めています(ロシア最高裁判所は,制裁の存在のみでこの要件を満たすと判断しています)。実際に,当事者自身が制裁の対象となっていない場合にも,ロシアの裁判所はこれらの規定を広く適用しているとされています。

 

 また,2022年以降,日本を含む各国がロシアに対して経済制裁を行っており,日本でも外為法に基づき一定の品目の輸出や特定の団体との取引などが禁止されています。取引対象の商品や取引相手によっては,そもそも取引自体が法令で禁止・制限されている場合があるので,ロシアとの取引を検討する際は,まず制裁措置に抵触しないかを確認する必要があります。

 

 以上が,日本企業がロシア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

メキシコの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してメキシコに進出する際,以下のようなメキシコの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 メキシコはスペイン法の影響を受けた大陸法(シビルロー)の法体系に属する国です。

 

 メキシコには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 日本の民法・商法に相当するメキシコの法律には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えて良いかと思います。

 

 そのため,メキシコの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。

 

 ② 登録制度

 メキシコでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 メキシコでは,準拠法をメキシコ法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ちなみに,メキシコはアメリカと同じく連邦制を採用しています。

 

 もっとも,商事に関する法律(商法典など)は連邦法とされているため,販売店契約の準拠法をメキシコ法とする場合,実務的には,メキシコ連邦法(および必要に応じて特定の州法)を準拠法とすることが多いと言われています。

 

 なお,メキシコはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とメキシコの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。

 

 以上が,日本企業がメキシコ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

ブラジルの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してブラジルに進出する際,以下のようなブラジルの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 ブラジルはポルトガルの影響を受けた大陸法(シビルロー)の法体系に属する国です。

 

 ブラジルには,買取再販型の販売店を一般的に保護する法律は存在しませんが,商業代理人(代理店)については商業代理人法(1965年法律第4.886号)があり,契約終了時の補償金(報酬総額の12分の1以上)などが定められています。また,自動車の販売店については,後述する特別法(1979年法律第6.729号)があります。

 

 ただし,ブラジルの民法典(710条~721条)には「代理及び販売(agência e distribuição)」に関する規定があり,期間の定めのない契約は,投下資本の性質・規模に見合う期間が経過した後に,90日前の予告をもって解約できるとされています(720条)。この規定は,本来は代理商が商品を保有する形態を想定したものと解されていますが,買取再販型の販売店契約にも類推適用される可能性があります。

 

 一般的な販売店契約で,中途解約条項(termination without cause)を設けても,これが無効になるとはされていません。

 

 ただし,相手方が相当の投資をしている場合には,解約の効力は投資に見合う期間が経過するまで生じないとされることがあります(民法典473条単項)。

 

 また,自動車の販売に関する販売店契約には特殊な規制が定められているので注意が必要です。

 

 例えば,自動車販売に関する販売店契約では,理由のない中途解約条項(termination without cause)を定めても無効となるとされています。

 

 ② 登録制度

 ブラジルでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ただし,ブラジル国内で裁判などに用いる場合には,ポルトガル語の翻訳(宣誓翻訳)が必要となります(民法典224条)。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 ブラジルの裁判所では,契約の準拠法は原則として契約締結地法によるとされ(民法導入法9条),当事者による準拠法の選択が必ずしも認められるとは限りません。仲裁では当事者が準拠法を自由に選択できる(仲裁法2条)ため,外国法を準拠法とする場合は仲裁と組み合わせることが望ましいでしょう。

 

 ちなみに,ブラジルはアメリカと同じく連邦制を採用しており,連邦法と州法が存在しています。

 

 ブラジルはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とブラジルの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。

 

 以上が,日本企業がブラジル企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

UAEの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してUAE(アラブ首長国連邦)に進出する際,以下のようなUAEの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 UAEには,いわゆる代理店保護法(商業代理店法。従来のFederal Law No. 18 of 1981に代わり,現在は2023年6月に施行されたFederal Law No. 3 of 2022が適用されています)が,代理店契約(Agency Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の代理店・販売店を保護するために制定されています。

 

 これを受けて,後述するとおり,UAEには販売店の登録制度があり,当局に販売店契約が登録されると,登録されていない場合に比べて販売店の保護が厚くなります。

 

 ② 登録制度

 UAEには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度があります。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。

 

 そして,もし販売店契約が当局に登録されていない場合,その契約は商業代理店法上の商業代理店とは認められず,同法による保護(契約終了時の補償など)は受けられませんが,契約自体は民事取引法・商取引法に基づく通常の契約として効力を有し得ると考えられています。

 

 もっとも,旧法の下では,UAEの裁判所が登録されていない販売店契約に対しても代理店保護法の考え方を及ぼした例もあったとされています。また,UAEの裁判所は,外国法を準拠法とし外国の裁判所を管轄裁判所とする旨の定めがあっても,自国の管轄を認めることがあるので注意が必要です。

 

 また,登録された販売店契約については,新法(2022年連邦法第3号)の下で,契約の更新拒絶や販売店に損害を与える解除の場合に,販売店から補償金の支払いを求められることがあります(11条)。ただし,期間満了による終了の場合の補償については,契約で明示的に別段の定めをすることが認められています(11条1項)。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。

 

 ただし,当局への登録の際には,アラビア語の契約書(または翻訳)の提出が求められるとされています。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 登録されていない販売店契約については,外国法を準拠法とすることも可能です。もっとも,登録された商業代理店契約には商業代理店法が適用され,これに反する合意は無効とされていますので(5条),外国法を準拠法としても同法の適用は排除できないと考えておく必要があります。

 

 UAEはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とUAEの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することも多いです。

 

 ただし,前述したとおり,UAEの裁判所が自国の裁判所に管轄を認め,代理店保護法などの自国の法律を適用するということがありうるので,注意が必要です。

 

 なお,登録された商業代理店に関する紛争は,仲裁合意がない限り,まず経済省の商業代理店委員会に付託する必要があるとされています。新法では,登録された商業代理店契約についても仲裁合意が認められ(26条),当事者が合意すればUAE国外を仲裁地とすることも可能とされています。

 

 以上が,日本企業がUAE企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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 正式にご依頼頂くまで料金はかかりません。

 

 原則として,当日,遅くとも1営業日以内(24時間以内)に折り返しご連絡させて頂いております。

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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インドの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してインドに進出する際,以下のようなインドの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 インドはイギリスの影響を受けたコモン・ロー(判例法)の法体系に属する国の一つです。

 

 インドには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。

 

 もっとも,インドの契約法では,契約期間終了後も競業避止義務を課す条項については原則として無効としているので,注意が必要です。

 

 例えば,サプライヤーが販売代理店に対し,自社製品と競合する製品の取り扱いを禁止する条項を入れた場合,契約期間中は有効でも,契約期間後の競合品の取り扱い禁止は無効になる可能性があります。

 

 ② 登録制度

 インドでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 インドでは,準拠法をインド法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ちなみに,インドは連邦制を採用しているため連邦法と州法が存在します。

 

 なお,インドはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とインドの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。

 

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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トルコの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してトルコに進出する際,以下のようなトルコの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 トルコは大陸法(シビル・ロー)の法体系に属する国の一つです。

 

 トルコには,いわゆる販売店(代理店)保護法として販売店や代理店を保護するために特別に制定された法律は存在していません。

 

 ただし,トルコの商法において,代理店や販売店を保護する「強行法規/強行規定」を置いているので注意が必要です。

 

 「強行法規」というのは,当事者がその法律と異なる合意をしたとしても,法律の内容が優先する場合の法律のことをいいます。

 

 つまり,当事者の合意でその法律の内容を変えたり,法律の適用を排除したりすることができないということです。

 

 トルコの商法の一部がこの強行法規に該当します。そのため,例えば,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)で準拠法を日本法としているような場合でも,トルコの裁判所がその法律を強行的に適用することが可能ということになります。

 

 その例が,販売店契約終了時のサプライヤーの販売店に対する補償金の支払義務です。

 

 代理店契約(Agency Agreement)や独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)を締結した場合,販売店(Distributor)が商品の販促活動を行い,商品のブランド価値などが高まります。

 

 これを「のれん代」(Goodwill)と呼んだりします。

 

 トルコの商法(122条)では,代理店契約が終了した際に,一定の要件の下,のれん代(Goodwill)の補償として一定の金額をサプライヤーが代理店に支払わなければならないとされており,この規定は,独占的販売店契約など類似の関係にも,衡平に反しない限りで適用されるとされています。

 

 そして,この補償請求権は,契約で予め放棄させることはできないとされています(122条4項)。

 

 販売店契約の終了をめぐる紛争の事例として有名なのは,2008年の韓国の著名企業LGのケースです。

 

 LGは,トルコの販売代理店としてDigicomという企業を6年間指名し,取引をしていました。

 

 その後,LGはDigicomとの販売店契約を終了して自ら直接販売する方針へと転換し,契約を解除しようとしたところ紛争になりました。

 

 Digicomは,LGに対し,不当な契約解除による損害賠償などを請求し,イスタンブールの商事裁判所がLGに対し約3億トルコリラの支払いを命じましたが,その後,破毀院(最高裁判所に相当)がこの判決を破棄したと報じられています(2013年1月)。

 

 トルコ商法(2012年7月1日施行)では,補償金の額について「過去5年間の年間平均手数料・利益額」を上限とすると定められていますが(122条),それでもかなり高額になり得ます。

 

 したがって,日本企業がトルコで販売店(Distributor)を指名してトルコに進出する際には,契約終了時の補償金を考慮に入れて進出する必要があることになります。

 

 ② 登録制度

 トルコでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 トルコ企業同士の契約ではトルコ語を用いなければならないとする法律(1926年法律第805号)がありますが,外国の当事者との契約に同法が適用されるかについては見解・判例が分かれているものの,近年の破毀院の判例では,外国の当事者が関与する外国語の契約や仲裁合意を有効とするものが多くなっています。そのため,外国企業が当事者になる販売店契約については,英語などの外国語のみで契約書を作成することも可能と考えられます。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 トルコでは,準拠法をトルコ法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ただし,前述したのれん代(Goodwill)の補償規定に注意して下さい。

 

 なお,トルコはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とトルコの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。

 

 以上が,日本企業がトルコ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してイランに進出する際,以下のようなイランの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 なお,イランとの取引については,まず経済制裁に十分注意する必要があります。米国はイランに対して広範な制裁(米国外の企業にも影響し得るいわゆる二次制裁を含みます)を科しています。また,2025年9月28日(グリニッジ標準時),いわゆるスナップバック手続により国連安全保障理事会の対イラン制裁が復活し(ロシア・中国はその有効性を認めていません),日本も同年9月29日,外為法に基づく資産凍結や輸出許可制などの措置を再導入しています。取引対象の商品や取引相手によっては取引自体が禁止・制限される場合があるため,取引を検討する前に制裁規制の確認が不可欠です。以下は,これらの制裁規制を別とした一般的な法制度の説明です。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 中東諸国には,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律があることも多いのですが,イランにはこの種の法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の契約期間を定めつつ,終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。

 

 ② 登録制度

 イランでは,商品の種類(資本財,自動車,家電など)によっては,販売店(正規輸入者)を産業鉱業商業省に登録しなければ輸入ができない制度があります(医薬品など,別の省庁の許認可が必要な商品もあります)。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。

 

 もっとも,イランの登録制度においては,販売店が当局に登録したことにより,販売店契約の終了について販売店が保護されるなどの制度はないため,登録そのものによる販売店の保護があるということではありません。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 イラン民法968条により,当事者の一方がイラン人である契約については,原則として契約締結地法が適用され,当事者の合意による外国法の選択はイランの裁判所では認められないとされています。もっとも,仲裁による場合には,国際商事仲裁法27条により当事者が準拠法を選択できるとされていますので,外国法を準拠法とする場合は仲裁条項と組み合わせることが重要です。

 

 なお,イランで日本の裁判所の判決を強制執行するのは困難と考えられます。

 

 イランはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とイランの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。

 

 ただし,イランの裁判所は,外国の判決または仲裁判断を「公の秩序」を理由に拒絶することが可能とされていますので,注意が必要です。

 

 以上が,日本企業がイラン企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

エジプトの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してエジプトに進出する際,以下のようなエジプトの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 エジプトには,いわゆる代理店保護法が代理店契約(Agency Agreement)の代理店を保護するために制定されています。

 

 この代理店保護法が適用されると,一定の要件の下,サプライヤーは代理店に対し契約の終了時に補償金の支払いをしなければならなくなります。

 

 例えば,事前予告のない解約,期間の定めのある代理店契約の期間満了前解約,契約の更新拒絶(代理店の債務不履行の場合を除く)などの場合においてサプライヤーは代理店に対し補償金を支払わなければならないとされています。

 

 一般に,この代理店保護法は,商品をサプライヤーから仕入れて利益を上乗せして転売する販売店(Distributor)に対しては適用がないとされています。

 

 もっとも,エジプトの裁判所が類推適用のようにして販売店契約に対しても代理店保護法の考えを及ぼすことがないという保証もないので,現地弁護士に最新の情報を確認するなどの注意が必要でしょう。

 

 ② 登録制度

 エジプトには,代理店契約を当局に登録しなければならないという制度があります。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧代理店との契約を解消して新代理店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。

 

 登録をしない代理店に対しては,刑事罰なども定められています。

 

 エジプトの実務では登録をせずに現地で代理店活動をするということはあまり現実的ではないようですので,注意が必要です。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。

 

 代理店契約(Agency Agreement)については,日本で認証を受けた上で,エジプト領事館において現地使用のための認証を受けて,かつ,アラビア語に翻訳される必要があるとされています。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 エジプトでは,販売店契約に関し準拠法をエジプト法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 エジプトはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とエジプトの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。

 

 ただし,エジプトの裁判所は,外国の判決または仲裁判断を「公の秩序」を理由に拒絶することが可能とされていますので,注意が必要です。

 

 特に前述した補償金支払いについて免責するような内容は,エジプトの裁判所は強制力を認めないと思われます。

 

 以上が,日本企業がエジプト企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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オマーンの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してオマーンに進出する際,以下のようなオマーンの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 オマーンには,いわゆる代理店保護法としてCommercial Agency Law(Royal Decree No. 26/77)があります。

 

 この代理店保護法が,代理店契約(Agency Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の代理店・販売店を保護しています。

 

 これにより,後述するとおり,オマーンには販売店契約の登録制度があり,当局に販売店契約が登録されると,登録されていない場合に比べて販売店の保護が厚くなります。

 

 なお,従来は,登録された販売店契約においてサプライヤーが正当な理由なく契約を終了させたり更新を拒絶したりすると,販売代理店に対し補償金を支払わなければならないとされていましたが,2014年の法改正(勅令34/2014)によりこの規定(10条)は削除されました。また,サプライヤーが登録代理店を通さずに直接販売することを禁じていた規定(7条)も削除されています。もっとも,裁判所が商慣習等に応じて適切な補償を決定できるとする規定(18条)は残っているため,補償金請求のリスクが完全になくなったわけではない点に注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 オマーンには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度があります。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。

 

 もっとも,外国のサプライヤーと現地の販売代理店が販売店契約を締結する場合に,準拠法を外国法(例えば日本法)とし,仲裁を外国の地(例えば日本での仲裁)としておくことで,オマーン法上の保護の適用を相当程度回避できる可能性があるとされています(ただし,仲裁判断の執行の段階で公序による制約を受けることはあり得ます)。

 

 ただし,上記と異なり,もし販売店契約書で紛争解決を仲裁ではなく外国での裁判(例えば日本での裁判)としている場合,オマーンの裁判所はオマーンでの管轄を認め,オマーン法の適用をする可能性があるとされています。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 オマーンでは,販売店契約に関し準拠法をオマーン法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 オマーンはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とオマーンの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することも多いです。

 

 前述したとおり,オマーンの裁判所が自国の裁判所に管轄を認め,代理店保護法などの自国の法律を適用することを回避できる可能性があるという意味でも,仲裁を選択したほうが良いということになるでしょう。

 

 以上が,日本企業がオマーン企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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クウェートの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してクウェートに進出する際,以下のようなクウェートの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 クウェートには,いわゆる代理店保護法として,商業代理店に関する2016年法律第13号(Law No. 13 of 2016)があります(従来のLaw No. 36 of 1964に代わるものです)。この法律では,従来と異なり,外国のサプライヤーが同国内で複数の代理店・販売店を指名することが認められるなど,代理店の独占的な地位は弱められています。

 

 この代理店保護法が,代理店契約(Agency Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の代理店・販売店を保護しています。

 

 また,商法(Law No. 68 of 1980 Promulgating the Commerce Law)も,代理店や販売店の保護規定を置いています。

 

 これらを受けて,後述するとおり,クウェートには販売店契約の登録制度があり,当局に販売店契約が登録されると,登録されていない場合に比べて販売店の保護が厚くなります。

 

 ② 登録制度

 クウェートには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度があります。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。

 

 そして,登録されていない代理店・販売店契約は,上記の代理店法上の代理店としては扱われず,同法に基づく請求は認められないとされています。もっとも,クウェートの商法(1980年法律第68号271条以下)には代理店の補償に関する規定があり,特定の地域において独占的に商品の販売促進・流通を行う販売店の契約は代理店契約とみなされます(286条)。

 

 そのため,独占的販売店の場合には,登録の有無にかかわらず,例えば,販売代理店の債務不履行によらずにサプライヤーが契約を解除したり(281条),販売代理店が十分に活動していたにもかかわらず期間満了時に契約の更新を拒絶したりした場合(282条)には,販売代理店がサプライヤーに対して補償金の支払いを求めてくる可能性があります。

 

 また,クウェートの裁判所は,外国の裁判所を管轄裁判所とする旨の定めがあっても自国の管轄を認める傾向にあるとされているので注意が必要です(外国での仲裁の合意は比較的尊重されやすいとされています)。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成すること自体は可能ですが,当局への登録の際には,公証・認証を受けた契約書とアラビア語訳の提出が求められる点に注意が必要です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 クウェートでは,販売店契約に関し準拠法をクウェート法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 クウェートはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とクウェートの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することも多いです。

 

 ただし,前述したとおり,クウェートの裁判所が自国の裁判所に管轄を認め,代理店保護法などの自国の法律を適用するということがありうるので,注意が必要です。

 

 以上が,日本企業がクウェート企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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スイスの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してスイスに進出する際,以下のようなスイスの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 スイスでは,代理店契約(Agency Agreement)の代理店(Agent)については,Swiss Code of Obligationsにより保護されています。

 

 ただし,上記は代理店契約のための法律であり,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に直接適用されるものではありません。

 

 もっとも,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の販売店(Distributor)についても,最高裁(Swiss Supreme Court)判決により一定の保護が与えられています。

 

 例えば,サプライヤーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を終了させるときに,一定の要件を充たすと,サプライヤーは販売店に対し補償金の支払いが義務付けられます。

 

 具体的には,連邦最高裁判決(BGE 134 III 497)によれば,販売店がサプライヤーの販売組織に深く組み込まれて代理店に類似した地位にあり,契約終了時に顧客基盤をサプライヤーに引き渡す義務を負い(または事実上引き渡し),サプライヤーが契約終了後もその顧客から相当の利益を得る場合には,スイス債務法418u条が類推適用されるとされています。最低購入数量/金額(Minimum Purchase Quantity/Amount)や最低在庫量の設定,一方的な価格・販売条件の変更などは,この組込みの程度を示す事情として考慮されます。

 

 要するに,サプライヤーが販売店を実質的に強くコントロールしているほど,補償金の支払いをしなければならない可能性が高まると整理できると思います。

 

 また,補償金の額は,過去5年間の平均による1年分の純利益相当額を上限として決定されます(債務法418u条2項)。この請求権を契約で予め排除することはできないとされています。

 

 ② 登録制度

 スイスでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に関し特に言語的な制約はなく,英文契約書の締結が可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 販売店契約に関して準拠法の制限はなく,外国法を準拠法としても原則としてそのとおりに効力が生じます。

 

 スイスもニューヨーク条約に加盟しているので,国際紛争解決手段としては,国内外での仲裁手続を選択することがあります。

 

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ニュージーランドの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してニュージーランドに進出する際,以下のようなニュージーランドの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 ニュージーランドは,イギリスに由来するコモン・ロー(判例法)の法体系に属する国の一つです。

 

 ニュージーランドには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される特別の規定は存在しません。

 

 そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③期間満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,かかる条項も原則として有効と考えて良いでしょう。

 

 ただし,標準約款による事業者間の契約で,取引関係の価値が12か月あたり25万NZドル(GST込み)以下と見込まれるもの(small trade contract)には,2022年8月16日から公正取引法(Fair Trading Act 1986)の不公正契約条項規制が適用され得る点に注意が必要です。

 

 ② 登録制度

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 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語のみ,あるいは日本語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 ニュージーランドでは原則として自国の法律を準拠法としなければならないという制約はないので,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ニュージーランド企業との間での紛争解決は,訴訟を選択されることもありますし,仲裁を選択されることもあります。

 

 特別な事情がない限り,日本での仲裁を合意した条項も有効と考えて良いかと思います。

 

 以上が,日本企業がニュージーランド企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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