韓国の法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名して韓国に進出する際,以下のような韓国の法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 韓国には,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 ただし,韓国商法92条の2は代理商の契約終了時の補償請求権を定めており,大法院2013年2月14日判決(2011다28342)は,一定の要件を満たす販売店には同条が類推適用され得るとして,その要件を示しています(当該事案では要件を満たさないとして請求は認められませんでした)ので,注意が必要です。

 

 また,韓国には,日本の独占禁止法に相当する「独占規制および公正取引に関する法律」に関連する法律として「代理店取引の公正化に関する法律」(代理店法)という法律があります。

 

 この代理店法は,いわゆる販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)にも適用され,サプライヤーに対し「不利益提供行為の禁止」として禁止行為を定めています。

 

 この「不利益提供行為」というのは,日本の独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に近い概念と考えれば良いかと思います。

 

 例えば,日本のサプライヤーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を解除したり,契約期間の満了により契約終了を主張したりする場合に,サプライヤーの取引上の地位を不当に利用して販売店(Distributor)に不利益を提供したとされてしまうと,代理店法に違反する可能性が生じます。

 

 そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,一定の猶予期間を設けた契約の中途解約が可能であることや,更新なく期間満了により契約が終了することを明確に条文化し,契約条項にしたがって契約を終了させたことを証明できるようにしておくことが大切といえるでしょう。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由として販売代理店はサプライヤーに対し補償金等の支払いを求めることは一切できないという規定を置くことが多いですが,この規定も,サプライヤーが取引上の地位を不当に利用して一方的に設定したと評価されると,代理店法の「不利益提供行為」に該当するおそれがあることに注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 韓国では,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 ただし,上記代理店法によって,例えば,取引形態,取引品目および期間に関する事項や,契約解約の事由および解約手続に関する事項など,法定事項を定めた書面により契約書を作成する必要があります。

 

 そして,その書面を販売店(Distributor)に交付し,サプライヤーも保管しなければならないとされています。

 

 以上が,日本企業が韓国企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

インドネシアの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してインドネシアに進出する際,以下のようなインドネシアの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 インドネシアには,いわゆる販売店(代理店)保護法に相当する法律そのものは存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 ただし,インドネシア民法1266条に注意が必要です。同条は,販売店契約を解除する際には,たとえインドネシア企業の債務不履行を原因とするものであっても,インドネシア裁判所の訴訟を経て命令により解除しなければならないとしているからです。

 

 したがって,準拠法がインドネシア法となっている場合には,インドネシア民法1266条(および1267条)の適用を契約書で放棄しておくほうが無難といえるでしょう。

 

 ② 登録制度

 インドネシアでは,外国のサプライヤーから指名を受けた販売店は,販売店契約について商業省から登録証(STP)の発行を受ける必要があるとされています(商業大臣規則2021年第24号)。

 

 そして,例えば,日本のサプライヤーが現在の販売店(Distributor)との間の販売店契約を解消して新たな販売店を指名したいと考えても,原則として,旧販売店との契約終了に伴う清算(いわゆるクリーンブレイク)が完了しない限り,新たな販売店の登録はできないとされています。もっとも,現行の規則では,契約終了から3か月以内に清算がまとまらない場合には旧販売店の登録は効力を失い,新たな販売店を登録できるとされているようです。

 

 この登録規制により,実質的に旧販売店が一定程度保護されていることになりますので,販売代理店を変更する際には注意が必要です。

 

 ③ 言語

 インドネシア法人が契約当事者となる場合,原則としてインドネシア語で契約書を作成しなければならないというルールがあり(2009年法律第24号31条),外国の当事者との契約では,インドネシア語に加えて相手方の言語または英語でも作成することとされています。また,上記の商業大臣規則では,販売店契約が外国語のみで作成されている場合には,宣誓翻訳人によるインドネシア語訳が必要とされています。実務上は,インドネシア語と英語(または日本語)を併記して作成するのが無難です。

 

 この場合に,外国語(英語や日本語)の内容とインドネシア語の内容とが矛盾したとき,どちらの言語の内容が優先するかが問題になります。

 

 この点,2019年の大統領規則第63号(26条4項)では,言語間で解釈に相違がある場合には契約で合意した言語が優先するとされており,外国語を優先させる条項を置くことも可能と考えられています。ただし,インドネシア語版のない英文の契約書(金銭消費貸借契約)が言語法違反を理由に無効とされ,最高裁判所でもその判断が維持された事例(2015年)があるため,必ずインドネシア語版も作成しておくべきでしょう。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 インドネシアでは,準拠法をインドネシア法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ただし,紛争解決については,外国の裁判所の判決をインドネシア国内で執行することはできないため,外国の裁判を選択することは実効性がありません。

 

 また,インドネシアの司法制度は残念ながら成熟しているとはいい難い面があるとされているため,インドネシアの裁判を紛争解決手段として選択することもあまりおすすめできません。

 

 そのため,日本企業とインドネシアの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,第三国であるシンガポール法を準拠法とし,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決機関として選定するということが広く行われています。

 

 以上が,日本企業がインドネシア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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タイの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してタイに進出する際,以下のようなタイの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 タイには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 日本の民法・商法に相当するタイの法律には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えて良いかと思います。

 

 そのため,タイの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。

 

 ただし,タイの不公正契約条項法(Unfair Contract Terms Act B.E. 2540)により,標準約款などで一方的に定められた不合理な条項は,裁判所によってその効力が制限される可能性がある点には注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 タイでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 タイでは,準拠法をタイ法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ただし,紛争解決については,日本の裁判所の判決をそのままタイ国内で執行することはできないため,強制執行を考えると日本の裁判所以外の手段が良いかもしれません。

 

 また,タイの司法制度は残念ながら成熟しているとはいい難い面があると指摘されているため,タイの裁判を紛争解決手段として選択することもあまりおすすめできません。

 

 そのため,日本企業とタイの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,第三国であるシンガポール法を準拠法とし,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決機関として選定するということも多く行われています。

 

 以上が,日本企業がタイ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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ベトナムの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してベトナムに進出する際,以下のようなベトナムの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 ベトナムには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)について,いわゆる販売店保護法のような特別な法律は存在していません。

 

 ただし,代理店契約(Agency Agreement)については,ベトナムの商法の特別な規定が適用されます。

 

 この特別法では,例えば,①代理店は他のサプライヤーとの間で代理店契約を締結する権利を有する(つまりデフォルトでは非独占の代理店契約が前提となっている)とされていたり,②サプライヤーが代理店契約を解除するためには,少なくとも60日の猶予期間を設けて解除を通知する必要があるとされていたり,③サプライヤーの申し出により代理店契約が終了した場合,代理店はサプライヤーに対し,代理店として活動した期間に応じた補償金(1年につき1か月分の平均報酬相当額)を請求できるとされていたりします(商法174条1項,177条)。

 

 もっとも,これらは当事者の合意により排除できるとされていますので,サプライヤーと代理店が締結する代理店契約書でこれらを明確に排除しておけば,適用を免れることになります。

 

 また上記特別法は販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)には適用されないため,販売店契約の解約に関し,

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)

などを挿入しても,基本的には契約書に定めたとおりに認められます。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関しても効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 ② 登録制度

 ベトナムでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約や代理店契約の契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 ベトナムでは,準拠法をベトナム法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ただし,紛争解決については,日本の裁判所の判決をベトナム国内で執行することは事実上不可能であるため,強制執行を考えると日本の裁判所以外の手段が良いかもしれません。

 

 また,ベトナムの司法制度は残念ながら成熟しているとはいい難い面があると指摘されているため,ベトナムの裁判を紛争解決手段として選択することもあまりおすすめできません。

 

 そのため,日本企業とベトナムの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,ベトナム国際仲裁センター(VIAC)を仲裁機関としたり,第三国のシンガポール国際仲裁センター(SIAC)を選定するということも多く行われています。

 

 後者のように外国の仲裁を利用する場合,仲裁判断の執行についてはベトナムの裁判所による承認が必要となるとされており,裁判所が契約書の不備などを指摘して,仲裁判断の執行を認めないということがあるとも言われているので,注意が必要です。

 

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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フィリピンの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してフィリピンに進出する際,以下のようなフィリピンの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 フィリピンには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 日本の民法・商法に相当するフィリピンの法律には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えて良いかと思います。

 

 そのため,フィリピンの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間満了による契約の終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。

 

 ただし,信義に反する態様で契約を終了させた場合には,民法19条~21条(権利の濫用など)に基づき損害賠償を請求される可能性がある点には注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 フィリピンでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 フィリピンの公用語の一つが英語ですので,英文契約書で問題なく効力を有します。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 フィリピンの司法制度は使い勝手が良くないとも言われているため,フィリピンでの裁判を選択することはあまりおすすめできません。

 

 フィリピンでの仲裁は,フィリピン紛争解決センター(Philippine Dispute Resolution Center, Inc.; PDRCI)において行うとされることが多いと思われます。裁判より機能しているという話を聞いていますので,裁判よりは仲裁を選択するほうが良いかと思います。

 

 以上が,日本企業がフィリピン企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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ニューヨーク条約

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 「ニューヨーク条約」は通称で,正式にはConvention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards (New York, 1958),日本語名称は「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(昭和36年条約第10号)といいます。

 

 ニューヨーク条約の和文テキストはこちらの国際私法学会のページでご覧頂けます。

 

 この条約は,簡単に言うと,加盟国間において,仲裁判断(Arbitral Award)の執行を容易にするために定められたものです。

 

 仲裁判断というのは,裁判外紛争解決手続(ADR)の一つである仲裁(Arbitration)の裁定をいい,裁判でいうところの判決に相当するものです。

 

 この仲裁判断を根拠に,相手の財産を差し押さえたりする強制執行というものができることになります。

 

 ただ,相手が外国の企業ですと,例えば,日本で得た仲裁判断をそのまま外国で承認してもらい執行することは,ルールが違うためできません。

 

 この外国仲裁判断の承認・執行を簡単にするために,ニューヨーク条約加盟国であれば仲裁判断の承認・執行を原則として認めるということになりました。

 

 外国仲裁判断の承認・執行というのは,外国仲裁判断の効力を認めて,これに基づく強制執行を裁判所が行うことを指しています。

 

 日本もこのニューヨーク条約に加盟しています。そのため,例えば,日本商事仲裁協会(JCAA)において取得した仲裁判断に基づき,同条約加盟国内にある相手方企業の財産に対し,判決に比べて容易な手続きにより強制執行をすることができるということになります。

 

 なお,ニューヨーク条約第5条2項は,「自国の法律によれば仲裁による解決が不可能である事項に関する仲裁判断であること」,または,「承認・執行をすることが自国の公序に反すること」のいずれかに該当するときには,裁判所は職権によって,その仲裁判断の承認・執行を拒否することができるとされています。

 

 そのため,例えば,外国でなされた仲裁判断が,日本の公序良俗に反するような内容であれば,例外的に日本での仲裁判断の執行ができないということはありえます。

 

 国際取引で使用される英文契約書で,裁判管轄(Jurisdiction)よりも仲裁(Arbitration)の条項を多く見るのは,上述したニューヨーク条約による強制執行の容易さが理由の一つです。

 

 ニューヨーク条約の加盟国一覧はこちらからご覧頂けます。

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シンガポールの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してシンガポールに進出する際,以下のようなシンガポールの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 シンガポールは歴史的に英国法の影響を受けた,コモンローの法体系に属する国です。

 

 シンガポールには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 日本の民法・商法に相当するシンガポールの法律には,販売代理店契約に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えて良いかと思います。

 

 そのため,シンガポールの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売代理店契約の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売代理店契約では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いです。

 

 この点については,シンガポールにもUnfair Contract Terms Act(不公正契約条項法)という法律があります。同法は主に責任を免除・制限する条項を規制するもので,一方当事者の標準約款によって契約した場合などには,合理性のない条項が無効とされることがあるので,一応注意が必要です。

 

 もっとも,同法には,国際的な物品供給契約についての適用除外(26条)や,当事者の選択のみによってシンガポール法が準拠法となる場合の適用制限(27条)もあります。

 

 ② 登録制度

 シンガポールでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 シンガポールでは公用語の一つが英語ですので,英文契約書で問題なく通用します。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 シンガポールでは,準拠法をシンガポール法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ただ,紛争解決については,シンガポールは積極的に国際紛争を受け入れているという事情もあるので,シンガポール法を準拠法とし,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決機関として選定するということも日本企業との取引で広く行われています。

 

 以上が,日本企業がシンガポール企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

中国の法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名して中国に進出する際,以下のような中国の法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 中国には,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 日本の民法・商法に相当する中国の法律には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えて良いかと思います。

 

 そのため,中国の法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③期間満了による契約終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。

 

 ただし,中国では2021年1月1日に民法典が施行され,それまでの契約法は廃止されています。民法典は公平原則を定めており(6条),一方当事者が相手方の窮迫状態や判断能力の欠如などに乗じたことにより,成立時に著しく公平を欠く(顕失公平)契約については,不利益を受けた当事者は裁判所または仲裁機関にその取消しを請求することができるとされています(151条。取消権は,取消事由を知った日から1年以内(かつ行為時から5年以内)に行使する必要があります(152条))。日本企業が中国企業に対して優位な立場にあることを利用して,一方的に自社に有利な条項を定めたと評価されると,このような主張を受けるおそれがあるので,念のため注意が必要です。

 

 さらに,日本企業が自社が使用しているひな形を販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)として中国企業との間で使用する場合は注意が必要です。

 

 というのは,中国の民法典では,当事者の一方が予め作成した約款(「格式条款」と呼ばれ,「定型約款」「様式約款」などと訳されます)を使用するときは,自社の責任を免除・軽減する条項など相手方と重大な利害関係のある条項について相手方の注意を喚起し,相手方の要求に応じて説明する義務があるとされ(496条),これを怠ると,相手方はその条項が契約の内容にならないと主張できるとされているからです。

 

 さらに,約款(格式条款)の提供者が不合理に自己の責任を免除・軽減し,相手方の責任を加重し,または相手方の主要な権利を制限する条項は無効とされています(497条)。

 

 日本企業が使用しているひな形が上記の約款(格式条款)とみなされ,これらの義務に違反すると,中国企業から条項の効力を否定される可能性があります。

 

 また,もし約款の内容に曖昧な部分があり,解釈に争いが生じた場合は,起草者に不利に解釈されるというルールもあります(498条)。

 

 なお,中国進出の場合,たびたび報道で見かけるとおり,模倣問題が起こりうるため,進出前に商標登録などは済ませておくことが必要です。

 

 ② 登録制度

 中国には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)については,契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語や日本語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 中国には,準拠法を中国法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 もっとも,中国企業の立場が優位になることも多く,その場合は事実上中国法を準拠法とせざるを得ない場面もあります。

 

 また,紛争解決については,日本の裁判所の判決を中国で執行することはできない(中国の判決を日本で強制執行することもできないとされています)ため,強制執行を考えると日本の裁判所を紛争解決機関とすることは避けるべきです。

 

 なお,2023年に上海の裁判所が日本の民事再生手続開始決定を承認した例がありますが,これは倒産手続に関するものであり,一般の民商事の判決については,現在も日中間で相互に承認・執行されていないと理解されています。

 

 そのため,日本企業と中国の企業との間の販売店契約の場合,実務的には,日本商事仲裁協会(JCAA),中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC),香港国際仲裁センター(HKIAC),シンガポール国際仲裁センター(SIAC)などが紛争解決機関として選択されています。

 

 以上が,日本企業が中国企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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マレーシアの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してマレーシアに進出する際,以下のようなマレーシアの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 マレーシアはイギリスの影響を受けたコモンローの法体系に属する国の一つです。

 

 マレーシアには,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律は存在していません。

 

 そのため,販売店契約を締結した場合に,契約を終了するのに一定の猶予期間を設けなければならないなどの制約は直接的には定められていません。

 

 日本の民法・商法に相当するマレーシアの法律には,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される規定のうち,いわゆる「強行法規/強行規定」として当事者の合意に優先して適用される重要なものは,原則としてないと考えて良いかと思います。

 

 ただし,契約法(Contracts Act 1950)28条により取引を制限する合意は原則として無効とされているため,特に契約終了後の競業避止条項などは無効となる可能性があるほか,競争法(Competition Act 2010)の規制にも注意が必要です。

 

 このような例外はあるものの,マレーシアの法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③期間満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,かかる条項も原則として有効と考えて良いでしょう。

 

 ② 登録制度

 マレーシアでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語や日本語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 マレーシアでは,準拠法をマレーシア法にしなければならないという規制はないため,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 ただし,紛争解決については,日本の裁判所の判決をそのままマレーシア国内で執行することはできないため,強制執行を考えると日本の裁判所以外の手段が良いかもしれません。

 

 マレーシアもニューヨーク条約加盟国であるため,日本企業とマレーシアの企業との間の販売店契約の場合,実務的には,日本商事仲裁協会(JCAA)での仲裁や,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を紛争解決機関として選定するということも多く行われています。

 

 以上が,日本企業がマレーシア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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 マレーシア進出に関するサービス内容のお問合せ,見積依頼は下記からお気軽にどうぞ。

 

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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アメリカの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してアメリカ(U.S.A.)に進出する際,以下のようなアメリカの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 アメリカは,イギリスから独立した経緯を持つため,イギリス法の影響を受けたコモンローの法体系に属する国の一つです。

 

 もっとも,アメリカは州制度を採用しているので,連邦法と州法と2つの法体系を有し,一口にアメリカ法といっても州によってかなり法律の内容が異なります。

 

 弁護士資格も州ごとに付与されていることを見ても,各州によって法制度が異なることは理解できるでしょう。

 

 そのため,アメリカの法律を調査する際は,州レベルで調査をする必要があることに注意しなければなりません。

 

 なお,アメリカには,いわゆる販売店(代理店)保護法として販売店や代理店を一般的に保護するために制定された連邦法は存在していません。もっとも,州法レベルでは,ウィスコンシン州のFair Dealership Lawのように販売店(ディーラー)を保護する法律を設けている州もあるため,対象となる州の州法を確認する必要があります。

 

 さらに,商標の使用許諾,サプライヤーによる重要な統制・支援,一定額以上の支払い(FTCフランチャイズ規則上,営業開始前から開始後6か月以内の支払総額が735米ドル以上)という要件をすべて満たす場合には,販売店契約であっても「フランチャイズ」に該当し,連邦取引委員会(FTC)のフランチャイズ規則上の開示義務や,州法上の登録・開示義務が生じることがあるので注意が必要です(通常の卸売価格での商品の購入は,原則としてこの支払いには当たらないとされています)。

 

 また,販売店契約のうち物品の売買に関する部分には,一般に,各州が統一商事法典(Uniform Commercial Code: UCC)の第2編をもとに制定した州法が適用されます(ルイジアナ州など一部例外があります)。

 

 販売店保護法制を持つ州の場合や,業種別のディーラー保護法(自動車,酒類,農機具など),フランチャイズ関係の法律が適用される場合を除き,販売店(代理店)保護法のような強行法規/強行規定はないため,各州の法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。ただし,統一商事法典(UCC)2-309条(3)は,合意された事由の発生による場合を除き,一方当事者が契約を終了させるには相手方への合理的な通知を要するとしており,通知を不要とする合意は,その適用が非良心的(unconscionable)となる場合には無効とされます。

 

 このような制約はあるものの,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 ただし,米国にも当事者の合意に優先して適用される反トラスト法(独占禁止法)が存在します。サプライヤーが単独で取引を拒絶することは原則として適法とされていますが,販売店契約の解除や更新拒絶が他の販売店との共謀や再販売価格の拘束に基づくものであるとして,販売店がシャーマン法違反などを主張してくることが考えられます。

 

 ② 登録制度

 アメリカでは,連邦法において販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 ただし,販売店契約がフランチャイズやビジネス・オポチュニティに該当する場合には,一部の州法上,開示書面などの当局への登録が必要となることがあるので注意が必要です。

 

 ③ 言語

 言うまでもありませんが,公用語が英語ですので英文契約書の締結が可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 前述したとおり,アメリカでは州法が存在するので準拠法をアメリカ法にする場合,U.S.A.の法律というのではなく,どの州の法律を準拠法とするのか(例えばカリフォルニア州)も選択する必要があります。

 

 アメリカでの仲裁を選択することも多くあります。例えば,ニューヨーク州に本部があるアメリカ仲裁協会(American Arbitration Association:AAA)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。

 

 以上が,日本企業がアメリカ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

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ドイツの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してドイツに進出する際,以下のようなドイツの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 ドイツは,イギリスに代表されるコモン・ローの国ではなく,大陸法の体系に属する国です。

 

 ドイツには,いわゆる販売店保護法として独自に販売店を保護するために制定された法律は,存在していません。

 

 他方で,代理店契約(Agency Agreement)の代理店(Agent)を保護する規定(代理店法)は存在しています。

 

 もっとも,代理店法は,代理店契約(Agency Agreement)に対するものですので,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)については直接適用されません。

 

 ただし,ドイツでは,代理店法が一定の要件を満たした販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)にも類推適用されます。

 

 そのため,販売店契約であっても,例えば,契約解除のための通知の猶予期間を一定期間設けるように強制されています。

 

 また,販売店がサプライヤーの販売組織に代理店と同様に組み込まれており,かつ契約終了時に顧客情報をサプライヤーに引き渡す義務を負っているなどの要件を充たしたときは,契約終了の際に,サプライヤーが販売店に対して補償金を支払わなければならないとされています。

 

 もっとも,販売店側から契約を解除した場合(サプライヤー側の事情や販売店の高齢・病気による場合を除きます)や,販売店の責めに帰すべき重大な事由によりサプライヤーが契約を解除した場合は,補償金の支払いは発生しないとされています。

 

 そして,代理店法の類推適用により,上記の契約解除の猶予期間については,契約書で猶予期間を短くしたり,なくしたりすることはできませんし,契約終了の補償金支払いについては,支払いを免除するなどと契約書で免責することは認められていませんので,注意して下さい。

 

 なお,契約終了の際や終了後に合意により補償金の支払いを免除することはできるようですが,契約が継続している間に将来の補償金の支払いを予め免除しておくことはできないとされています。

 

 さらに,契約終了後の競業避止義務については,代理店法上,最長2年間とされ,その期間について相当の補償の支払いが必要とされています(商法典90a条)。また,EU競争法(垂直的制限一括適用免除規則)上,販売店契約における契約終了後の競業避止義務が一括適用免除の対象となるのは,原則として期間が最長1年間であることなどの厳格な要件を満たす場合に限られる点にも注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 ドイツでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)について言語規制はないので,英語などの外国語でも契約締結可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 ドイツ企業との交渉では,準拠法をドイツ法とし,紛争解決をドイツの裁判所と定めることを求められることが多い傾向にあります。

 

 ドイツでの仲裁の場合は,ドイツ仲裁協会(German Arbitration Institute: DIS)による仲裁を選択することがあります。

 

 以上が,日本企業がドイツ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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イタリアの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してイタリアに進出する際,以下のようなイタリアの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 イタリアには,いわゆる販売店保護法として独自に販売店を保護するために制定された特別法は,存在していません。

 

 そのため,販売店契約に関しては,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 ただし,信義則や権利濫用の法理,経済的従属関係の濫用を禁止する法律(1998年法律第192号9条)により,予告期間を置かない突然の解除などが制限されることがあるほか,約款による中途解約条項などについては,民法典1341条により別途書面による承認が必要となる場合があるので注意が必要です。

 

 このような例外はあるものの,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,このような取り決めに関しても原則として有効になると考えて良いでしょう。

 

 ② 登録制度

 イタリアでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に関し特に言語的な制約はなく,英文契約書の締結が可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 販売店契約に関して準拠法の制限はなく,外国法を準拠法としても原則としてそのとおりに効力が生じます。

 

 イタリアでの仲裁を選択することもあります。例えば,ミラノ仲裁院(Camera Arbitrale di Milano)やイタリア仲裁協会(Associazione Italiana per l'Arbitrato)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。

 

 以上が,日本企業がイタリア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

スペインの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してスペインに進出する際,以下のようなスペインの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 スペインには,代理店契約(Agency Agreement)については,代理店を保護するための特別な法律(Act 12/1992 on Agency Contracts of 27 May)が存在しています。

 

 ただし,上記は代理店契約のための法律であり,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に直接適用されるものではありません。

 

 スペインには,いわゆる販売店保護法として独自に販売店を保護するために制定された特別法は,存在していません。

 

 そのため,販売店契約に関しては,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 ただし,スペインの裁判所の判例では,例えば,サプライヤーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を解除した場合に,販売店(Distributor)に対し補償金の支払いを必要とすると判示するなど上記の代理店保護に関する法律を類推適用して,販売店(Distributor)を保護することがあるので注意が必要です。

 

 また,スペインの不正競争防止法(Ley 3/1991, de 10 de enero, de Competencia Desleal)16条では,経済的に依存している取引先に対し,重大な債務不履行や不可抗力の場合を除き,少なくとも6か月前の書面による予告なしに取引関係を終了させることが不正競争行為とされているので,販売店がサプライヤーに経済的に依存している場合には,この点も注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 スペインでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に関し特に言語的な制約はなく,英文契約書の締結が可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 販売店契約に関して準拠法の制限はなく,外国法を準拠法としても原則としてそのとおりに効力が生じます。

 

 スペインもニューヨーク条約に加盟しているので,国際紛争解決手段としては,国内外での仲裁手続を選択することがあります。

 

 以上が,日本企業がスペイン企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

フランスの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してフランスに進出する際,以下のようなフランスの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 フランスは,イギリスに由来するコモン・ローの国ではなく,大陸法(シビル・ロー)の法体系に属する国です。

 

 フランスには,代理店契約(Agency Agreement)については,フランス商法に特別規定がありますが,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用される特別の規定は存在しません。

 

 そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③期間満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,かかる条項も原則として有効と考えて良いでしょう。

 

 もっとも,フランスでは,確立した取引関係を十分な予告期間を置かずに突然終了させた場合,終了させた側が損害賠償責任を負うとする規定(商法典L.442-1条II)があり,販売店契約にも適用されます。そのため,契約書に中途解約条項や更新拒絶条項があっても,取引の継続期間などに照らして十分な予告期間を置かなかったときは,この規定に基づく損害賠償を請求されるおそれがあります(なお,同条では,18か月の予告期間を置いていれば予告期間の不足を理由とする責任は問われないとされています)。

 

 また,販売店が他のサプライヤーから同種の商品を購入しない旨の排他的購入義務(競業避止義務)を定める場合,その有効期間は最長10年間に制限されており(商法典L.330-1条),また,EU競争法上も契約期間中の競業避止義務は原則として最長5年間とされているので注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 フランスでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約書の言語を特に制限する法律はないので,英語や日本語などの外国語のみでも契約書を作成することが可能です。

 

 ただし,商品の名称,広告・表示,使用説明書,保証の範囲・条件の説明などについてはフランス語を使用しなければならないとされている(いわゆるトゥーボン法)ので注意が必要です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 フランスでは原則として自国の法律を準拠法としなければならないという制約はないので,外国法を準拠法とすることも可能です。

 

 フランス企業との間での紛争解決は,訴訟を選択されることもありますし,仲裁を選択されることもあります。

 

 第三国での仲裁を選択するような場合は,ロンドンでのICC仲裁規則による仲裁を選択することもあります。

 

 以上が,日本企業がフランス企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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イギリスの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してイギリス(イングランド)に進出する際,以下のようなイギリスの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 イギリスは,基本的に英国コモン・ローの法体系に属する国です(ただし,スコットランドは大陸法の影響も受けた混合法体系です)。

 

 もっとも,イギリスは,イングランド,北アイルランド,スコットランド,ウェールズからなっています。

 

 そして,法律は,イングランドとウェールズ法,北アイルランド法,スコットランド法で3つに分かれていて,弁護士資格もこれらで別になっています。

 

 そのため,イギリスの法律を調査する際は,上記の3つを区別して調査をする必要があることに注意しなければなりません。

 

 以下では,イングランドとウェールズ法を前提に解説します。

 

 イギリスには,いわゆる販売店保護法として独自に販売店を保護するために制定された法律は,存在していません。

 

 他方で,代理店(Agent)を保護する法律として,EC理事会指令(Council Directive 86/653/EEC)を受けて,Commercial Agents (Council Directive) Regulations 1993(代理店法)が制定されています(Brexit後も国内法として存続しています)。

 

 そのため,代理店契約において,サプライヤーからの中途解約の告知期間が短すぎるなどの場合には,代理店法による規制を受けることが考えられます。

 

 もっとも,代理店法は,代理店契約(Agency Agreement)に対するものですので,純粋な(genuine)販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)については適用されません。

 

 そのため,販売店契約に関しては,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある①中途解約条項,②債務不履行解除条項,③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 ただし,Unfair Contract Terms Act 1977(不公正契約条項法)という法律があり,同法3条では,一方当事者の書面による標準取引条件(ひな形)に基づいて契約が締結された場合,責任を免除・制限する条項や,契約内容と実質的に異なる履行をし又は履行をしないことを認める条項は,合理性がなければ無効になるとされており,一方的な解約条項もこれに該当するとされる可能性があります。

 

 そのため,日本企業がサプライヤーとしてイギリスの販売代理店に対し,自社のひな形をそのまま受け入れさせたような場合に,日本側の一方的な契約の解消条項が内容によっては合理性がないとされて無効になることがあり得るので,注意が必要です。

 

 もっとも,当事者の営業所が異なる国にあり,物品が国境を越えて引き渡されるような国際的な物品供給契約については,同法の上記規制は適用されないとされています(同法26条)。そのため,日本企業とイギリスの販売店との間の販売店契約では,通常は同法による規制を受けないと考えられますが,契約の内容や取引の形態によっては適用があり得るため,念のため注意しておくとよいでしょう。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は一切認められない旨を契約書に記載することも多いですが,このような取り決めに関しても原則として有効になると考えて良いでしょう。

 

 ② 登録制度

 イギリスでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 言うまでもありませんが,公用語が英語ですので英文契約書の締結が可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 前述したとおり,イギリスでは,イングランドとウェールズ法,北アイルランド法,スコットランド法が存在するので準拠法をイギリス法にする場合,UKの法律というのではなく,どの国の法律を準拠法とするのか(例えばイングランドとウェールズ法)を選択する必要があります。

 

 イギリスでの仲裁を選択することも多くあります。例えば,ロンドン国際仲裁裁判所(London Court of International Arbitration: LCIA)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。

 

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オランダの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してオランダに進出する際,以下のようなオランダの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 オランダには,代理店契約(Agency Agreement)について,民法典第7編(7:428条以下)に代理店を保護するための特別な規定が存在しています。

 

 ただし,上記は代理店契約のための法律であり,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に適用されるものではありません。

 

 オランダには,いわゆる販売店保護法として独自に販売店を保護するために制定された特別法は,存在していません。

 

 そのため,販売店契約に関しては,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 ただし,オランダの裁判所の判例では,販売店契約の契約解除権の行使について制限を課したり,契約解除通知や自動更新条項がある場合の更新拒絶通知の猶予期間について一定期間設けるように判示したり,契約終了について補償金を支払うように命じたりしたものがありますので,注意が必要です。

 

 ② 登録制度

 オランダでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)に関し特に言語的な制約はなく,英文契約書の締結が可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 販売店契約に関して準拠法の制限はなく,外国法を準拠法としても原則としてそのとおりに効力が生じます。

 

 オランダでの仲裁を選択することもあります。例えば,オランダ仲裁協会(Netherlands Arbitration Institute)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。

 

 以上が,日本企業がオランダ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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カナダの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してカナダに進出する際,以下のようなカナダの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 カナダは,イギリス法の影響を受けたコモンローの法体系に属する国の一つです。

 

 もっとも,カナダは,連邦法と,州制度による州法を採用しているので,一口にカナダ法といっても州によってかなり法律の内容が異なります。

 

 そして,ケベック州は,大陸法系に属する州とされており,他の英米法系の州と比べて特殊な法律が存在しています。

 

 例えば,フランス語憲章などが挙げられます。こちらの記事でフランス語憲章について解説しています。

 

 そのため,カナダの法律を調査する際は,州レベルで調査をする必要があることに注意しなければなりません。

 

 なお,カナダには,いわゆる販売店(代理店)保護法として販売店や代理店を一般的に保護するために制定された法律は存在していません。もっとも,オンタリオ州,アルバータ州,ブリティッシュ・コロンビア州,マニトバ州,ニュー・ブランズウィック州,プリンス・エドワード・アイランド州およびサスカチュワン州(2026年6月30日施行)の7州にはフランチャイズ法があり,販売店が加盟金などの対価を支払う場合など,契約の内容によってはこれらの州法が適用され,開示義務などの規制を受けることがあるので注意が必要です。

 

 このような例外を除けば,販売(代理)店保護法のような強行法規/強行規定はないため,各州の法律とは異なる内容でも,契約書で明確に定めておけば原則として契約書の内容のとおり効果が認められると考えて良いでしょう。

 

 したがって,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 ② 登録制度

 カナダでは,連邦法において販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 英語はカナダの公用語の一つですので,英文契約書の締結が可能です。ただし,ケベック州では,フランス語憲章(2022年の改正(Bill 96)後の55条)により,2023年6月1日以降,一方当事者が条件を定めた定型的な契約(附合契約)については,まずフランス語版を相手方に示した上でなければ,当事者が明示的に他の言語を選択することはできないとされています。ケベック州外の当事者との契約などには例外がありますが,ケベック州の販売店と契約する場合は念のため注意が必要です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 前述したとおり,カナダでは州法が存在するので準拠法をカナダ法にする場合,カナダ法というのではなく,どの州の法律を準拠法とするのかも選択する必要があります。

 

 カナダでの仲裁を選択することもあります。例えば,カナダの商事仲裁センター (Canadian Commercial Arbitration Centre: CCAC)において仲裁を行うなどと取り決められることがあります。

 

 以上が,日本企業がカナダ企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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ベルギーの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してベルギーに進出する際,以下のようなベルギーの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 ベルギーには,いわゆる販売店保護法として独自に販売店を保護するために制定された法律(1961年7月27日法。現在は経済法典第X編に組み込まれています)が存在しています。

 

 この販売店保護法は,独占的販売店契約(Exclusive Distribution/Distributorship Agreement)のほか,これに準ずる契約(当該地域におけるサプライヤーの対象商品のほぼ全部を販売店が販売している準独占的な場合など)や,販売店に重要な義務を課す契約に対して適用されます。

 

 また,同法は期間の定めの有無を問わず適用されますが,期間の定めがない契約の解約については予告期間・補償(X.36条・X.37条),期間の定めがある契約については更新拒絶の通知(X.38条)という形で,それぞれ異なる規律が設けられています。

 

 期間の定めのない契約については,重大な契約違反がない場合にサプライヤーが販売店契約を解除するときは,解除までに合理的な猶予期間を設定しなければならないとか,補償金を支払う必要があるなどと規定されています。

 

 また,期間の定めがある販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)であっても,サプライヤーが契約の更新を拒絶する場合は,期間満了の3か月前から6か月前までの間に書留郵便で通知しなければならず,これを怠ると,契約は,黙示の更新条項があればその定める期間,なければ期間の定めのない契約として更新されるとされています(経済法典X.38条)。

 その他,期間の定めのある契約が2回更新された後にさらに延長された場合は,期間の定めのない契約とみなされるともされています(同条)。

 

 ② 登録制度

 ベルギーでは,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度はありません。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しないといえます。

 

 ③ 言語

 販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)について言語規制はないので,英語などの外国語でも契約締結可能です。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 ベルギーでは,準拠法を自国の法律に限るという一般的な規制はありません。もっとも,上記の販売店保護法(X.39条)は,ベルギー国内の全部または一部を対象とする販売店契約の終了について,販売店はベルギーの裁判所に訴えを提起することができ,ベルギーの裁判所はベルギー法を適用すると定めています。そのため,日本の裁判所を管轄裁判所としていても,販売店がベルギーで訴訟を提起してくる可能性があり,この場合の扱いは必ずしも確立していないので注意が必要です。もっとも,後述する2023年4月7日の破毀院判決は,これらの規定がローマI規則9条の優越的強行規定には当たらないと判断しているため,当事者が選択した外国法が適用される余地があります。

 

 また,紛争解決については,日本の判決の執行が認められない可能性があることなどから,仲裁を選択することが多いかと思います。この点,従来のベルギーの判例は,仲裁人がベルギー法またはこれと同等の保護を与える外国法を適用する場合に限って仲裁を認める傾向にありましたが,2023年4月7日のベルギー破毀院判決によりこの判例は変更され,現在では,日本法などの外国法を準拠法とする仲裁条項も原則として有効と考えられています。

 

 以上が,日本企業がベルギー企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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イスラエルの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してイスラエルに進出する際,以下のようなイスラエルの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 中東諸国には,いわゆる販売店(代理店)保護法として独自に販売店や代理店を保護するために制定された法律があることも多いのですが,イスラエルには,商品を自ら買い取って転売する販売店(Distributor)を保護するこの種の法律は存在していません。なお,サプライヤーのために顧客を開拓する代理店(Commercial Agent)については,2012年の代理店契約法があり,契約期間に応じた最低予告期間(2週間~6か月)や終了時の補償(最長12か月分の平均月間利益)が定められていますので,代理店を指名する場合は注意が必要です。

 

 そのため,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の契約期間を定めつつ,終了に関してサプライヤーがよく挿入する傾向にある

①中途解約条項,

②債務不履行解除条項,

③契約期間の満了による終了条項(更新拒絶条項)

なども,基本的には契約書に定めたとおりに効果が得られると考えて良いかと思います。

 

 また,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)では,契約終了を理由に,販売店(Distributor)がサプライヤーに対して補償金などの支払いを要求してくることがあります。そこで,この類の請求は認められない旨を契約書に記載することも多いですが,この点に関してもこれを禁止するような法律の内容はないと考えて良いでしょう。

 

 ただし,販売店契約に期間の定めを置かない場合には注意が必要です。

 

 イスラエルの判例により,期間の定めのない販売店契約の場合には,契約を終了させるためには合理的期間の猶予を定めて通知しなければならないとされているからです。

 

 イスラエルの裁判所は様々な要素を考慮して合理的な猶予期間を定めますが,例えば,販売店が契約終了後に次の収益源を確保できるか,これまでの販売店契約の期間で販売店が投下した資本がどの程度回収できているのかなどを考慮します。

 

 具体的な期間としては,一概に言えませんが,3ヶ月程度から1年位とされることが多いようです。

 

 もし,サプライヤーが十分な猶予期間を設けずに販売店契約を終了させた場合,賠償金の支払いが命じられることがあります。

 

 ② 紛争解決 

 イスラエルはニューヨーク条約加盟国なので,日本企業とイスラエルの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することが多いです。

 

 以上が,日本企業がイスラエル企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

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サウジアラビアの法制度

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 日本企業が販売代理店(Distributor)を指名してサウジアラビアに進出する際,以下のようなサウジアラビアの法制度に注意したほうが良いでしょう。

 

 ① 販売店(代理店)保護法

 サウジアラビアには,いわゆる代理店保護法(1962年の商業代理店法(勅令M/11)およびその施行規則)があり,代理店契約(Agency Agreement)や販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の代理店・販売店を保護しています。なお,2022年に商務省が新たな商業代理店法の草案を公表しており,期間の定めのない契約を解約する場合の予告期間(契約期間1年につき1か月)や補償,専門の紛争解決委員会の設置などが検討されていますが,2026年9月時点で施行は確認されていませんので,最新の動向に注意が必要です。

 

 そのため,日本企業がサウジアラビア企業を販売代理店として指名してサウジアラビア進出をする場合,事前にこの代理店保護法の内容を押さえて,どのようなリスクがあるかを把握しておく必要があります。

 

 例えば,サプライヤーが販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)の更新を拒絶して,契約を終了させる場合,一定の要件を充たすと,サプライヤーが販売代理店に対して補償金(直接の損害でかつ証明されたもの)の支払いをしなければならないことがあります。

 

 ② 登録制度

 サウジアラビアには,販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)を当局に登録しなければならないという制度があります。

 

 そのため,当局への登録が原因で,旧販売店との契約を解消して新販売店との契約に移行するのが困難になるなどの事情も存在しえます。

 

 もっとも,この登録制度に違反しても販売店契約(Distribution/Distributorship Agreement)自体が無効になるわけではありません。

 

 また,登録をせずに販売店として活動した場合でも,外国のサプライヤーに対しては罰則は特に適用されません。

 

 こうした事情から,販売店(Distributor)が事実上登録をせずに活動をするということも現地では行われているようです。

 

 ③ 言語

 販売店契約書(Distribution/Distributorship Agreement)の言語を特に制限する法律はないので,英文で契約書を作成することが可能です。

 

 ただし,前述した販売店契約の登録については,アラビア語の契約書(または翻訳)をもって登録をしなければならないとされています。

 

 ④ 準拠法・紛争解決

 サウジアラビアでは,契約上は外国法を準拠法とすることも可能ですが,サウジアラビアの裁判所で紛争を解決する場合には,当事者が外国法を選択していても,裁判所はサウジアラビア法(シャリーア)を適用するとされていますので注意が必要です。

 

 サウジアラビアはニューヨーク条約加盟国です。

 

 そのため,日本企業とサウジアラビアの企業との間の販売店契約の場合,紛争解決については,強制執行の便宜を考え,裁判ではなく仲裁(Arbitration)を選択することも多いです。

 

 なお,前述した登録制度の関係では,販売店契約の準拠法を日本法とし,裁判管轄や仲裁を日本としたものは,当局が登録に積極的でないといわれています。

 

 以上が,日本企業がサウジアラビア企業を販売店として指名し同国に進出を考える際に最低限知っておいたほうがよい法制度の概要です。

【ご注意】本記事は,執筆・更新時点において一般的なレベルで調査した結果を参考情報として記載したものにすぎず,個別の案件についての法的助言ではありません。各国の法令・判例・実務は改正等により変更されることがあり,本記事の内容の正確性・完全性・最新性を保証するものではありません。実際にお取引を検討される際は,必ず現地の法律に精通した弁護士に最新の情報をご確認ください。
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執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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