英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,injunctionがあります。
これは,「差止命令」を意味し,equity(衡平法)上の救済方法です。
Equity上の権利であるため,必ず認められるものはなく,裁判所の裁量により認められることがあるというものです。
そのため,契約当事者がinjunctionの権利を定めても必ずこれを実行できるとは限りません。
英文契約書では,当事者に契約違反があった場合には,損害賠償請求(Damages)ができると規定しておき,ただし,損害賠償請求権についての定めがあるからといって,他の権利が行使できなくなるわけではないなどと定めることがよくあります。
この際に,この他の権利を列挙するのですが,そのうちの一つにこのinjunctionという用語が入っていることがまま見受けられます。
特に,守秘義務契約書(NDA)において,秘密情報が漏えいすると,情報開示者にとっては,損害賠償請求だけでは回復しえない継続的で大きな損害を受ける可能性がありますので,損害賠償請求以外にInjunctionの救済措置も取れるということを記載することが多いです。
契約当事者がアメリカ,イギリスに所在する場合の契約書によく見られます。
また,英文契約書に仲裁条項を定め,訴訟を提起することを禁止することがよくありますが,その場合でも裁判所にInjunctionの申立てることは可能であるということを定めることもあります。