英文契約書のうち,Basic Sales Transaction Agreementとは,基本売買契約書のことです。
基本売買契約も中身は要するに売買契約であるため,契約書を作る際の基本的な注意点はSales Agreement(売買契約書)で記載した内容と同様です。
そのため,ここでは基本売買契約書に特有の注意点について解説しています。
通常,このような基本売買契約書を締結する場合,個別の取引は注文書(Purchase Order/PO)と注文請書(Purchase Order Acceptance/POA)のやり取りで行うことになります。
その場合,個別の売買契約(Seperate Agreement/Individual Contract)がどのように成立するのか(例えば,買主が注文書を発行し,売主がこれに対応する注文請書を交付した時に成立するなど)について定める必要があります。
「一定期間,売主が注文書を放置していたら,承諾したとみなす」などの規定を設ける場合もあるので,注意が必要です。
また,基本売買契約書と個別契約の内容に矛盾(Inconsistency)があった場合にどちらが優先するのかについても定めておくのが賢明です。
個別契約を優先させるのであれば,In case where terms and conditions in the Individual Contract are inconsistent with those in the Basic Sales Transaction Agreement, the Individual Contract shall supersede those in the Basic Sales Agreement as to the subject Individual Contract.などと規定することになります。
上記の意味は「個別契約の条件が基本売買契約の条件と矛盾する場合,個別契約が基本売買契約の条件に優先する」となります。
ここで登場しているsupersedeという単語が「…に優先する」という意味ですので,個別契約の優位性を表しています。
もちろん,逆に基本契約の内容が個別契約に優先すると定めることもあります。
これにより,現場の担当者が発注書と受注書のやり取りで実質的に基本契約で定めた内容を変更してしまうことを防ぐことができます。
基本売買契約は,一定期間の継続的売買取引を予定するものですから,通常,契約期間(Term)が定められます。
売主に注文を受注する義務がない場合(通常ないはずです)には,契約期間が長くとも,売主にとって実質的な不利益はないかもしれません。
ただし,契約交渉中にそれなりのボリュームでの取引が継続的に予定されていたような場合,後で思わぬ紛争になることもありますから,契約期間はよく話し合って決定する必要があります。
また,契約期間の満了時に更新(Renewal)をどのようにするのかも明確にします。
自動更新(Automatic Renewal)とするなら,通常,何日前までに相手方に契約を更新しない旨の書面による通知をした場合,自動的に更に何年間更新し,以降も同様とするなどと定めます。
このような更新を定めないのであれば,更新については触れず,単に契約期間だけを契約書に記載します。
基本売買契約は長期的な契約ですので,相手方に契約違反があったり,信用状態にリスクが生じた場合には解除(Termination)ができると定めることが多いです。
解除を定める際に注意が必要なのは,基本契約を解除する際にすでに存在している個別契約の取扱いです。
基本契約を解除しても,すでに存在している個別契約は影響を受けない(The Individual Contract executed before the termination of the Basic Sales Transaction Agreement shall not be affected and continue in effect even after such termination for whatever reason.)など,個別契約の帰趨について取り決めておく必要があります。
基本契約が解除された際に個別契約も解除されてしまうと,すでに注文と受注が成立した売買が取り消されてしまい,売主と買主双方に思わぬ損害が生じる危険があります。
これを避けるために,通常は,基本契約の終了はすでに成立した個別契約に対しては影響を与えないと基本契約には定めておきます。
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