英文契約書の条項の修正例2:Jurisdiction(裁判管轄条項)

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この記事でわかること

  • exclusive(専属的)とnon-exclusive(非専属的)の管轄の違い
  • 相手国の裁判所が指定されているときの3つの修正案と,実際の修正文例(赤入れ)
  • 各修正案の「相手に受け入れられやすいか」の目安と注意点

こんなときにお読みください:取引先から届いた英文契約書のドラフトで,相手国の裁判所が「専属的な管轄裁判所」に指定されている。このまま署名してよいか迷っている。

1. よく見られる裁判管轄条項

英文契約書でよく見られるのは,特定の国の特定の裁判所に専属的な管轄を与える条項です。

The parties hereby consent to and confer exclusive jurisdiction upon Tokyo District Court over any disputes arising out of or relating to this Agreement.

和訳:当事者は,本契約に起因または関連する紛争について,東京地方裁判所が専属的な裁判管轄権を有することに同意し,これを付与する。

exclusiveとnon-exclusiveの違い

種類意味実務上の影響
exclusive
(専属的)
指定した裁判所だけが管轄を持ち,それ以外の裁判所を排除する指定先が相手国なら,こちらから訴える場合も相手国で裁判をすることになる
non-exclusive
(非専属的)
指定した裁判所に管轄を与えるが,他の裁判所を排除しない他の国の裁判所で訴える余地が残る(ただし必ず認められるわけではない)

わざわざ管轄裁判所を合意するのですから,exclusiveと定められていることが多いです。管轄条項は,準拠法(Governing Law)や紛争解決条項(Dispute Resolution)と並んで,交渉で特にやり取りが多くなる条項の一つです。

2. 相手が自国の裁判所にこだわる場合の修正案

修正案自社にとっての効果相手の受け入れやすさ(目安)注意点
① non-exclusiveに変更日本の裁判所で訴える余地が残る★★☆日本の裁判所が管轄を認めるとは限らない
② 被告地主義に変更相手から日本で訴えられる形になり,公平★★★自社が訴える側になると相手国で提訴が必要
③ 仲裁・第三国に変更中立な場で解決でき,外国での執行もしやすい★★☆仲裁費用がかかる。仲裁機関・仲裁地の選び方が重要

※受け入れやすさは一般的な傾向であり,取引条件や交渉力によって異なると考えます。以下の修正例は,もとの条項がカリフォルニア州の裁判所を専属管轄としている場合を想定しています。

① non-exclusive(非専属的)に変更する

修正例(赤:削除/青:追加)

The parties hereby consent to and confer exclusive non-exclusive jurisdiction upon the courts of the State of California over any disputes arising out of or relating to this Agreement.

【弁護士コメント】専属管轄のままでは,当社から訴える場合も米国で訴訟を起こす必要があります。非専属的に変更し,日本での提訴の余地を残すことを提案します。

ただし,日本の裁判所に訴えた場合に管轄が認められるかは,日本の民事訴訟法などに基づいて判断されます。日本の民事訴訟法は国際裁判管轄についていくつか規定を置いていますが,あらゆる場面に対応しているわけではありません。変更しても日本で必ず裁判ができるとは限らないと考えるべきでしょう。それでも,exclusiveのままよりは,他の裁判所で管轄が認められる場面は多くなると考えます。

② 被告地主義に変更する

訴える側(原告)が,相手方(被告)の所在地の裁判所で訴えなければならないとする方法です。日本の民事訴訟法でも被告の住所地で裁判をするのが基本ですし,どちらか一方に有利になりにくいため,受け入れられやすい傾向があります。

修正例(赤:削除/青:追加)

The parties hereby consent to and confer exclusive jurisdiction upon the courts of the State of California over any disputes arising out of or relating to this Agreement.
All disputes which may arise between the parties out of or in connection with this Agreement shall be settled by the district courts located within the city in which the defendant is located.

【弁護士コメント】相手方が自国の専属管轄に固執する場合の折衷案です。当社が訴えられる場面では,日本の裁判所で対応できます。

和訳:本契約に起因または関連して当事者間に生じたすべての紛争は,被告の所在地の都市内に所在する地方裁判所で解決されるものとする。

③ 仲裁や第三国に変更する

紛争解決を裁判ではなく仲裁(Arbitration)に委ねる方法です。ニューヨーク条約の加盟国であれば,仲裁判断に基づく外国での執行がしやすいといわれています。仲裁地として,国際紛争でよく選ばれる第三国を選ぶことも考えられ,日本企業でもシンガポール(SIAC)での仲裁を選ぶケースは多く見られます。

修正例(赤:削除/青:追加)

The parties hereby consent to and confer exclusive jurisdiction upon the courts of the State of California over any disputes arising out of or relating to this Agreement.
Any dispute arising out of or in connection with this Agreement shall be finally resolved by arbitration in Singapore in accordance with the Arbitration Rules of the Singapore International Arbitration Centre.

【弁護士コメント】中立な第三国での仲裁とする案です。仲裁人の数や使用言語もあわせて定めておくことをおすすめします。

また,仲裁ほど一般的ではありませんが,中立な第三国の裁判所に管轄を与える場合もあります。

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3. 自社の契約書で確認したいポイント

  • ✓管轄が「exclusive」か「non-exclusive」か
  • ✓指定された裁判所が,相手国・日本・第三国のどれか
  • ✓準拠法(Governing Law)と管轄裁判所の国が食い違っていないか
  • ✓仲裁条項がある場合,仲裁地・仲裁機関・使用言語が定められているか

4. まとめ

紛争解決の方法や管轄に関する条項は悩ましい問題が多く,どの修正案がよいかは取引の内容や力関係によって変わります。準拠法・紛争解決条項とあわせて,交渉の中で慎重に検討することが重要と考えます。

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弁護士 菊地正登(片山法律会計事務所)/相談・案件実績 2,931件

執筆 弁護士 菊地正登(第二東京弁護士会/片山法律会計事務所)

2003年弁護士登録。英国 University of Southampton のLL.M(法学修士)コースワークで英米法・国際取引法等を学び,ロンドンの法律事務所 Hill Dickinson LLP で実務経験。英文契約書・国際取引を中心に取り扱っています。プロフィール

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