Audit(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Auditがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「監査する」という意味で使用されます。
英文契約書で,一方の当事者が他方の当事者の会計帳簿をチェックしたり,事務所や工場をチェックしたりしたいと考え,これらの権利について定めることがあります。
例えば,代理店契約(Agency Agreement)では,代理店(Agent)は,通常,営業を行って顧客を売主に紹介し,後は売主が顧客に販売するかを決定します。
そのため,代理店は,どのくらい自社が営業して獲得した顧客から,売主が売り上げているかを直接は知りえません。
こういう場合,代理店としては,売主から払われるコミッションの金額が正しく計算され,正当に支払われているかをチェックする必要があります。
そのため,代理店契約書(Agency Agreement)では,代理店が売主の会計帳簿類を閲覧することができるという規定が定められることがあります。
代理店が指名する公認会計士(Accountant)が監査する(Audit)ことができると定めることもあります。
その他,製造委託契約書(Manufacturing and Supply Agreement)でもAuditという用語が登場することがあります。
ある製品の製造を委託する委託者としては,工場などが委託者が要求する水準の製品を製造するのに適しているかどうか,技術力,衛生面や安全面,法令適合性など現場チェックをしたいと考えることがあります。
こうした場合に,委託者が受託者の工場を監査できる(Audit)という権利を契約書に記載することがあります。
反対に,監査を受ける側からすると,突然監査を要求されるとなると業務に支障をきたすことがありえます。
そのため,通常,契約書には,監査することができる権利を定めるとともに,一定期間猶予を設けて事前に通知する義務を監査者に課したり,さらに監査を受ける側の承諾が必要と定めたりすることがあります。
監査する側からすると相手方の承諾が必要とされてしまうと,拒否されてしまえば結局監査できないということになるので,実効性の点で問題があります。
この点をケアするために,相手方は合理的な理由なく監査を拒否できないという但書を入れることもあります。
そもそも監査権限は,どれだけ実効性があるか,監査したところでどこまで対策が取れるのかなどについて疑問がある場合もあります。
ただ,定めておかないと要求できないということになりますし,不正に対する抑止力として一定の効果があることもありますので,大切な条項の一つといえるでしょう。