Reproduce(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正をする際に登場する英文契約書用語に,Reproduceがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「…を複製する」という意味で使用されます。
守秘義務契約書(Non-Disclosure Agreement: NDA)でよく登場する英文契約書用語の一つです。
当事者が取引を検討する際に,お互いが保有する秘密情報を相手に提供することがあります。
その際に,守秘義務契約書(Non-Disclosure Agreement)を締結することが多いです。
そして,守秘義務契約書では,情報提供者が,情報受領者に対し秘密情報を提供するときは,不必要に秘密情報をコピーされると,情報流出の危険が高まるので,コピーについては本当に必要な場合にのみに限定することがよくあります。
もちろん,取引の可能性を検討するために必要な範囲では,情報を適宜コピーする必要があるのですが,情報を秘密として保持するために最も重要なことは,必要以上に情報を共有させないということです。
そのため,秘密情報にアクセスできる人員を,その情報にアクセスすることが真に必要な(need to know)人員に限定するとか,情報の複製は必要な場合に限られるとするなどとして,必要以上に秘密情報が受領当事者内で共有されないように注意するわけです。
さらに,複製された情報についても,当然秘密情報として守秘義務の範囲内にすることを規定し,ビジネスの検討が終了したら,コピーを含めて秘密情報はすべて破棄するか,情報提供者に返却することを定めます。
たまに,NDAを締結したのだから自社の秘密は守られると短絡的に考えていらっしゃる方がいますが,その考えは危険です。
約束をしても破る人がいるように,企業であっても,契約を破ることはあります。
ましてや,外国の企業であれば,その素性もわからないこともありますし,本当に信用できるか怪しいということがよくあります。
そのため,契約をしたから安心と考えるのではなく,物理的に契約違反(ここでは守秘義務違反)ができないようにするのが最も妥当ということになります。
もちろん,必要以上にreproduceをしないと定めるということ自体,契約内容ですので,これ自体破られてしまえば元も子もないのですが,それでも情報共有を制限する内容にすることで,こちらの厳しい管理姿勢を相手に示すことにも繋がります。
また,そもそも必要以上に情報を開示しないという対策が入り口として最も重要であることは言うまでもありません。
まずは情報開示の範囲を必要最小限に絞り,相手が情報を共有する範囲も最小限に絞る,こうした対応が自社の秘密情報を守るのに最も基本的な姿勢になることを覚えておかれると良いかと思います。