英文契約書のうち,Settlement Agreement(和解契約書)を作成するときの注意点について解説しています。
① 何を終結させるのか
和解契約をすることになるということは,当事者間で契約などを巡り何らかの紛争・対立関係が生じているものと思われます。
そのため,和解をするにあたっては,何の紛争をどのように終結させるのかを明確にする必要があります。
例えば,既に訴訟が提起されていて事件が係属中なのであれば,和解によりその訴訟を取り下げてもらうことなどが必要になります。
その場合,準拠法(Governing Law)・管轄裁判所(Jurisdiction)の規定に従ってどのように裁判所から訴訟を取り下げられるのかを調査した上,規定要件のとおりに合意内容を記載する必要があります。
特に裁判などになっていないのであれば,今後裁判などを起こすことはできず,本件和解書によって本件紛争に関する権利義務関係はすべて解決したという内容でいわゆる「清算条項」を入れることになります。
② 清算条項
当事者の和解によりすべての紛争は終結したものとし,今後当該紛争を蒸し返せないし,また,当該紛争に関係する権利義務関係はすべて清算されたという条項です。
この清算条項を入れるのが和解の目的と言っても過言ではない大切な条項です。和解によってあらゆるクレームから免責(Release)されると記載することになります。
子会社や下請業者などの関連当事者がいる場合にはこの者たちの関係においても紛争が終結したと確認する必要がある場合もあります。
③ 和解金の確定
通常は,紛争当事者の一方が相手方に金銭を支払うことで,紛争を終局的に終結させるのが和解契約です。
そのため,金銭的負担が幾らで,どのような方法により,いつまでに支払うのかを明確に取り決める必要があります。
期日までに和解金の支払いを怠れば,権利義務関係の清算はなかったことにするという条項を設けることがありますから,支払実行が重要なことはいうまでもありません。
④ 和解金支払いの意義
当事者が和解金をどのような意図・意義により支払うかについても記載するべきです。
例えば,労働者との争いなどでは,今後も類似の紛争が別の従業員との間でも起こる可能性があります。
その際に,雇用主である会社が以前ある従業員との間で,会社の不当性を認めて,和解し,和解金を支払っているということがわかれば,会社に不利な証拠として使われる可能性があります。
そのため,このような場合,「会社は当該従業員と和解するが,一切当該従業員の主張は認めておらず,あくまで主張については争っている。ただし,円満解決のために和解金を支払うにすぎない。」と明確に記載する必要があります。
⑤ 秘密保持条項
上記ポイント4にも関係しますが,和解した事実や内容が外に漏れて欲しくないという場面が多く存在します。
そのような場合には,秘密保持条項(Confidentiality Clause)を入れて,和解の存在や内容を第三者に開示してはならないと規定します。
そして,もし開示したことがわかったようなときには,和解金を取り戻せるなどと合意することが多いです。
違反した場合に既になされた情報漏洩をなかったことにすることなどはできませんので,守秘義務条項の現実的な有効性はともかくとして,和解交渉にはデリケートな内容を伴うことがよくありますから,重要な条項と言えるでしょう。
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