ここでは,実際にあった英文契約書の文言解釈を巡るトラブルとその解決法について解説します。
日本法人であるABC商事㈱は,フランスにあるXYZ製造㈱と大規模な取引について契約をしました。
ABC商事㈱は,単価の大きい機械類をXYZ製造㈱に輸出し,代金を段階に応じて分割して払ってもらうという内容の基本売買契約書(Basic Sales Transaction Agreement)を締結しました。
その契約書の中では,XYZ製造㈱が発注したい年間ボリュームがかかれ,これに応じてABC商事㈱が製品を卸すようにすると合意されました。
もっとも,ABC商事㈱は商社ですので,当該製品を必ずXYZ製造㈱のオーダーに応じて卸せるかどうかは確約できない状況でした。
そのため,ABC商事㈱の法務担当者は,XYZ製造㈱のオーダーに対する対応は,あくまで目標とすべきと考え,英文契約書における文言を「aimed volume」と規定しました。
日本側は,このようにすることで,あくまで英文契約書に定めた年間取引ボリュームは,「目標値」であり,達成が法的に義務付けられているものではないと考えていました。
その後,日本側は,概ねドイツ側の発注に対応できていたのですが,年度の後半になって,一部についてXYZ製造㈱のオーダーに対応できない取引が生じてしまいした。
すると,その後の支払期日になっても,XYZ製造㈱から入金がありませんでした。
ABC商事㈱がXYZ製造㈱に対して未払いについて問合わせると,XYZ製造㈱は「契約違反があるから,払えない。」と回答してきました。
ドイツ側は,「aimed volume」という表現は法的拘束力のあるものと考えていたのです。
ABC商事㈱は,代金が巨額であるため,法的に争うことも考えました。
そこで,英文契約書を見てみると,準拠法(Governing Law)も管轄裁判所(Jurisdiction)もドイツとされており,実際に争うとなると不利益が大きいと考え結局断念しました。
その後,ABC商事㈱は,代金全額の回収は諦めざるを得なくなり,和解により,大幅に減額した代金を回収するにとどまりました。
本事例の解決法
本事例において,ABC商事㈱は,最低限何をしておくべきだったでしょうか。
それは,英文契約書の用語について,「その意味内容を正確に把握しドラフトする」「相手方とその意味内容を齟齬なく明確に共有しておく」ことが必要でした。
Aimed volumeとして,これに法的拘束力を持たせず,単に目標にするとしたいのであれば,その旨を明確に記載しなければならなかったということになります。
上記の例で,もしABC商事㈱が文言解釈を法廷闘争に持ち込み,XYZ製造㈱を訴えていたら,ドイツの裁判所で,XYZ製造㈱の言い分のとおり上記文言には「拘束力がある」と判断されるかはわかりません。
しかしながら,裁判で勝てるかどうかという以前に,そもそも争いになってしまうこと事態が大きなマイナスを生むので,争いが生じること自体避けなければならないのです。
そのため,例えば,The aimed volume is not legally binding on the parties and means a forecast only.(目標の取引量は当事者を法的に拘束するものではなく予測値に過ぎない。)などと契約書に記載し,相手方とその内容についてきちんと確認すべきだったのです。
このようにした上で英文契約書にサインしていれば,上記のようなトラブルは回避できたでしょう。
特に数字的な目標に関する文言はトラブルを生じやすいです。他にもtargetなどの用語を使う際は,その数字が法的拘束力を持つものかどうかを明らかにするようにしましょう。
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