General Release(英文契約書用語の弁護士による解説)
英文契約書を作成,チェック(レビュー/審査),翻訳(英訳/和訳),修正する際によく登場する英文契約書用語に,General Releaseがあります。
これは,英文契約書で使用される場合,通常,「(請求権の)放棄」という意味で使用されます。
このGeneral Releaseという用語がよく登場するのは,和解契約書(Settlement Agreement)です。
国際取引でトラブルが起こることはめずらしくありません。
納期遅延,保証違反,代金遅延などのトラブルは,国内取引に比較して海外取引のほうが頻繁に起こるといえるでしょう。
文化や商慣習が異なるので,必ずしも日本の常識が通用しないからです。
このような場合に備えて,仲裁(Arbitration)や,裁判管轄(Jurisdiction)などの紛争解決に関する規定が英文契約書には設けられています。
しかしながら,いきなり仲裁や訴訟を申し立てるということはほとんどありません。
通常は,仲裁や訴訟をする前に当事者間で話し合いが持たれます。
あくまで第三者の力を借りるのは例外であり,まずは当事者間でよく解決策を話し合い自主的に解決することがベストです。
それでも解決に至らない場合には,通常各国の資格を持った弁護士(Attorney at law)に依頼します。
弁護士は,英文契約書に書かれた準拠法(Governing Law),紛争解決方法(Dispute Resolution)と契約書の内容,トラブルの内容・経緯を考慮して,相手方の弁護士と弁護士同士で和解を目指して交渉します。
お互い法律のプロである弁護士が付いていれば,最終的には仲裁や訴訟を申し立てることも意識しながら,法的手続きを取った場合の結論やそれにかかるコストや時間を考慮し,「落とし所」を探ります。
そして,「落とし所」をお互いに模索しながら,両者がある程度譲歩(Compromise)しながら,最も妥当な解決策に向けて交渉をします。
国をまたいでの法的手続きは,お互いがコスト面や時間面で相当に疲弊しますから,通常は,この弁護士間の交渉で話がまとまることが多いです。
そして,最後は,お互いが合意した内容で和解契約書(Settlement Agreement)を作成します。
この中で,各当事者が持つ権利義務について合意され,それ以外の請求権はお互いに放棄し,和解契約書に書かれた内容以外には互いに権利義務がないことを確認するのが通常です。
この条項のことを,日本では清算条項と呼び,英語では,General Releaseと呼んでいます。
なお,和解契約書の作成においては,弁護士に相談の上で内容をよく理解したうえで締結しないと,あとでそういうつもりではなかったなどと紛争の蒸し返しが起こりやすくなるので,注意が必要です。
また,和解契約書作成時に認識されていない権利にあとから気づいたというような場合も,あとでトラブルになる可能性があるので,General Releaseをする際には,和解契約書の内容がすべてになる前提で内容を精査しなければなりません。