Sales Agreementとは,いわゆる売買契約書のことです。
これは本格的に取引を続ける前の試験的な目的などで,商品を1回限り売買するときによく用いられる英文契約書です。
逆に,継続的に売買取引が行われる前提で結ばれる契約は,Basic Transaction Agreement(基本取引契約)などと呼ばれます。
Sales Agreementを作成するときに注意すべき点は以下のとおりです。
① ウィーン売買条約の適用の有無
日本も加盟しているいわゆるウィーン売買条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods(CISG))の適用がある場合,この条約の適用を排除するのかどうかを決定します。
中国を含め,ウィーン売買条約の加盟国は増えていますので,日本企業が加盟国と売買契約を締結する場合は,ウィーン売買条約に留意しなければなりません。
ウィーン売買条約は当事者が任意に適用を決められるので,契約書で適用しないと定めれば適用されないということになります。
日本法や英米法の定めとは相当に異なる内容が定められていますので,同条約の全部または一部の適用を排除するのであれば,その点明確に定める必要があります。
例えば,日本法を準拠法にして,ウィーン売買条約はすべて適用しないとしたいのであれば,その旨を契約書に書いておく必要があります。
② 危険負担・引渡し・所有権の移転時期
外国企業と売買契約を締結するときは,商品をどこで引き渡し,どの時点で所有権(Title)が移転し,危険負担(Risk of Loss)が移転するのかについても取り決めるのが通常です。
危険負担とは,仮に両当事者の責めに帰すべき事由によらずに商品が毀損または滅失したような場合に,どちらの当事者がその損失を負担するかという問題です。
例えば,危険負担(Risk of Loss)が買主にあるという場合に商品が不可抗力により滅失してしまったときは,買主は商品の代金を,まだ支払っていなければ支払わなければなりませんし,既に支払っていればそれを返金してもらえないことを意味します。
危険を買主が負っているのでこのような結論になるのです。
こうした危険は,所有者が負うのが公平だという観点から,契約書では,危険の移転と所有権の移転は一致させて同時に移ると定めることがよくあります。
そして,海外取引の場合には,インコタームズ(Incoterms)に従って,契約書で取り決めることが多いです。
例えば,FOB(Free on Board)などとして,船上に商品が積まれた段階から,危険負担が売主から買主に移転するなどと取り決めることになります。
ちなみに,インコタームズは危険負担の移転時期については取り決めていますが,所有権の移転時期は取り決めていません。
そのため,所有権の移転時期も定める場合には,インコタームズの貿易条件を選択しただけでは足りません。
たまに,インコタームズの貿易条件を選択すれば,所有権の移転時期も定めたことになると誤解されている方がいらっしゃるのでご注意下さい。
したがって,例えば,代金の支払確保のため,代金の完済までは売主に所有権が残るという所有権留保を定めたい場合には,別途契約書にその旨(所有権の移転時期)を定める必要がありますので,ご注意下さい。
③ 代金支払方法・支払時期
海外取引ですから,代金を支払いをどのように行うかは契約書で取り決めておいた方が無難でしょう。
信用状(Letter of Credit=L/C)を使えるのであれば,売主は代金回収をより確実のものにできますが,中小・ベンチャー企業の取引であれば,そのようなケースはあまり多くはないでしょう。
その場合は,銀行振込(Telegraphic Transfer/Wire Transfer)などになるでしょうから,その旨を記載します。
また,支払時期も重要です。当然ですが,前払いとすれば,売主側の債権回収リスクを下げることができます。
海外取引で買主が期日までに代金を払わず売掛が残ってしまうと,回収は非常に難しくなります。
そのため,売主としては,できるだけ100%前払いを目指し,それが難しい場合でも,何割(せめて製造原価分)かは商品の出荷前(理想は製造着手前)に支払ってもらうようにするのが得策です。
もっとも,これらの支払条件は,当事者の力関係(バーゲニングパワー)などによって決まってくるので,買主の力が強いような場合は,代金後払いの交渉を余儀なくされることもあります。
L/Cを使わず,後払いなどで売主が売掛金の回収リスクを負担する場合,費用がかかってしまいますが貿易保険の利用なども考えられます。
④ 保証条項
商品を販売する場合,商品の品質(Quality)や利用目的(Purpose)に対する適合性(Conformity/Fitness)など,どこまで保証(Warrant)するかということが問題になります。
保証すると定める場合,どこまでが売主の保証の対象になるのか,後で疑義が生じないよう保証の範囲(Scope of Warranty)を明確に定める必要があります。
さらに,いつまで保証するのか,保証期間(Warranty Period)についても,いつからいつまでなのか明確に規定すべきです。
もし保証をしないのであれば,いわゆる「現状有姿」(as it is/as is basis)にて引き渡すということを定めることになります。
この現状有姿条項については,「英文契約書のポイント4」で詳しく解説していますので,よろしければご覧下さい。
この条項が挿入されると,通常,商品の品質などについて一切保証されず,対象商品が現在ある状態(仮に欠陥が含まれていてもその状態のまま)で買い取るということになるため,買主は注意が必要です。
⑤ 第三者からのクレームについての補償
例えば,商品に欠陥(Defect/Deficiency)があったために第三者が怪我をしたり,商品が第三者の著作権などの権利を現地で侵害(Infringe)した場合などには,第三者から買主が損害賠償請求(Damages)等のクレームを受ける可能性があります。
前者のクレームは製造物責任(Product Liability)に基づくもので,後者のクレームは知的財産権侵害(Infringement of Intellectual Property Right)に基づくものとなります。
これらのクレームについて,どちらがどのようなルールで責任を負い,費用負担するのかという点については事前に契約書で取り決めておいた方が良い場合があります。
このどちらの当事者がどれだけ責任を負うのかという問題を補償(Indemnification/Indemnity)の問題と呼ぶことがあります。
英文契約書においては,補償条項(Indemnification/Indemnity Clause)と呼ばれる条項でこれらの責任分担を定めることになります。
ちなみに,当事者の責任がゼロになる場合を免責(Disclamer)といい,責任(賠償額)を一定限度額に限定することを責任制限(Limitation of Liability)といいます。
ただし,このような取り決めは一方の当事者に極めて不利なものになる可能性があり,そのような場合,準拠法によっては当該条項が無効となる場合もあるので,規定の仕方も含めて慎重な検討が必要です。
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